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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編2
63/69

どうしてこう、温かいのだろう

「ぅほーいっ!! ぅほほほほーいっ!!」

「うーっ!! はーっ!! うーっ!! ぎひゃあああ!!」

「おりゃおりゃおりゃー!!」

 ササッ!! シュシュッ!!

 びゅびゅっ!! びゅーっ!!


「はい、お疲れ様でした」


 午後4時の新聞部室、私はみんなに稽古終了の号令をかけた。


 木古内さんは終始無言で正拳突き、長万部くんも正拳突きだけど、両手に注射器を持ち、紫色の内容液を噴射していた。なんだろう? ケミカルXかアポトキシンかな?


 後で聞いた話だと、注射器の中味は紫キャベツの煮汁だそうだ。


 不入斗さんは奇声を上げながら突きと蹴りの練習をしていた。うーっ! にゃー! なら可愛いけど気合いが足りない気がするから、ぎひゃあああ!! でいいか。


「いやぁ、さすが麗ちゃん! 神たる俺をも凌駕する技を習得してるとは驚きだったぜ」


 爽やかな笑顔を向ける神威くん。


 あぁ、そんなに眩しい笑顔を向けられたら困っちゃう…。


 でも、強いって言われるのもなんだかなぁ…。


「そ、そんな…」


 そもそも私、強くなんかないし…。


「ねっぷせんぱい、無神経です!」


「だね。麗姫は乙女なのだよ? 強いみたいなことを言われてもあまり嬉しくは思わないだろう」


 う~ん、確かにあまり嬉しくないけれど、それ以上にストーカーに武術が通用しなかったことが自信喪失に繋がり、ジレンマになっている。


「うおおお!! そうだったのか!! 済まない麗ちゃん !! この通りだ!!」


 神威くんは私の前に跪き、両手の平を擦り合わせて拝むポーズを取った。


「えっ!? そんな、大丈夫、なんでもないから、ただ、 返答に困っただけで…」


「うおおおっ!! 俺は麗ちゃんを困らせたのか!! 申し訳ありませんでしたー!!」


 そ、そんな、涙ながらに謝らなくても…。


「う、うん、大丈夫だよ」


 上辺でものを言う人が多い世の中で、明るく素直な性格は神威くんの魅力の一つである。


 ◇◇◇


 学校を出て、駅前で新聞部のみんなが散り散りとなり、私と知内さんは札幌駅から函館線の電車に乗り込んだ。近頃は学園都市線の電化に伴い、札幌圏の路線に新しい電車が導入された。


 素人の私から見れば、吊革が従来の白くて丸いタイプから、首都圏の山手やまのて線や湘南新宿ラインなどで採用されているグレーで三角形のタイプになったくらいしか判別できない。図書室の雑誌を読めば何か解るかもしれないけれど、そこまでしなくても次第に判別出来るようになるだろう。


「おやおや、座席が緑色だから、この電車は新型だね」


「紫色でも新型はありますよ?」


「紫色のヤツは吊革が丸いのが古いタイプで、三角なのが新型だけど、緑色の座席は漏れなく新型なのさ」


「詳しいですね」


「見た目は小学生でもジャーナリストのタマゴだからね」


 知内さんのコンプレックスはいわゆる幼児体型。女性のメカニズムは正常だそうだけれど、下着が中学生向けのもので十分なのだとか。


「そんな、小学生だなんて…」


 このタイミングで電車は走り出し、二ヶ国語の案内放送が流れ始めた。日本語は男性で、英語は女性なのだけれど、男性の声はテレビで聞いた覚えがあるような…。


「いやいや事実を歪曲しなくても構わないさ。それより麗姫、ねっぷにはアタックできているのかい?」


 うぅ…。


 私は思わず俯いてしまった。


「あれま。麗姫も承知とは思うけど、ライバルが居るからね。ツンツンしている彼女が最近デレ始めているから、ある意味スピード勝負になるかもしれないよ」


「うん、それはわかってるけど…」


「気持ちに整理がつかないかい?」


「なんていうか、時々、どうしてこの人を好きになったのだろうとか、そもそも今でも好きなのだろうかとか、疑心暗鬼になったりして…」


「ははは、あの変態ねっぷだからね…」


 うん、苦笑されるような人を好きになってしまったんだよね…。


「麗姫、仮にねっぷとの恋が叶わなかったとしたら、私とイイコトしようじゃないか…」


 知内さん、完全にオヤジモードだ。電車の中で手をワシャワシャしないでよ…。もちろん人目に付かない場所でもダメだけど…。


「遠慮しておきます…」


 というより、木古内さんとはどうするの?


「ははは、ただ、私は麗姫の幸せを願っているから。力になれることがあれば遠慮なく言っておくれ?」


「ありがとう、ございます…」


「うふふ」


 本当にどうしてこう、札幌に引っ越してからは私の周りの人は温かいのだろう。


 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 おさらいですが、麗は中学卒業後、旭川から札幌へ引っ越して来ました。


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