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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編2
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一件落着

 神威編と同じく、お下品な表現にご注意ください。

 神威くんの交渉が神経を逆撫でし、上幌さんの首筋に注射針を更に近付けた黒装束。首筋に針を刺したら、例え中味が毒液じゃなくても大量出血の恐れがある。


「おいおい犯人さんよぉ、万希葉殺しちまったら、もうあの綺麗な歌声聴けねぇんだぜ? 好きなら知ってるよな? 万希葉がステージで輝く姿をよぉ」


 この時、神威くんは勿論、黒装束と上幌さんを除く全員はある動きに気付き、神威くんは黒装束の気を引いて時間を稼ぐためか、再び対話モードに入った。


「声などどうでもいい。ただ俺は万希葉ちゃんを自分の、 自分だけのモノにしたいんだ」


 うぅ、気持ち悪い。俺様タイプって、私嫌い。目の前に居る神様タイプは適当に受け流せば良いけれど、黒装束の場合は受け流すとこうしてキレちゃう。


 ドンッ!


「うおおっ!? あああっ…」


「キャッ!?」


 ドサッ!


 黒装束は衝撃で上幌さんと注射器を手放し、泥まみれの地面に勢い良く倒れた。


「万希葉! こっちだ!」


「う、うん!」


 神威くんは解放された上幌さんを呼び寄せ、私は近くに落下した注射器をパキリと踏み割った。


「ねっぷ、恐かった、恐かったあああ!!」


 上幌さんは神威くんの胸元に駆け寄って泣き崩れた。神威くんは上幌さんを抱き寄せ、頭を撫でる。


 こんな時に嫉妬してしまう私って、なんなのだろう…。


「おぅ。ションベン漏らさないでよく頑張ったな」


「ちょっ、なんでそういう下品なこと言うの…?」


 上幌さんは普段のように強い口調ではなく、上目遣いで微笑み混じりだった。


 ドンドンドンドンッ!


「オラオラオラオラァァァ!!」


 岩見沢さんは留目を刺すように激しく、執拗に股間を踏みつけている。あぁ、凄く痛そう。黒装束は両手で岩見沢さんの脚を押さえようとするも、力が入らなくて届かないようだ。


 約1分間120発踏みつけた岩見沢さんは、ハァ、ハァと息を切らしながら黒装束を見下ろしている。


「クソッ、クソッ、クソオオオオオオ!! ここまでプライドを傷付けられたら最早俺も生きている価値などない!! こう、こう、こうなったら、こうなったら! 全員ブッ殺して俺も死んでやるーッ!!」


 黒装束は甲高い声と共にコートのポケットからサバイバルナイフを取り出し、おろおろと立ち上がった。


 あまりにも狂気に満ちた状況に、流石の岩見沢さんでも後ずさる。


 う~ん、全員殺すと言っても、ナイフが刃こぼれするだろうなぁ…。それとも予備があるのかな?


 そもそも、こんな状況でそんなことを考えている私も相当異常なんだろうなぁ~。


「そうだな、先ずはまだ眠っているモテ男からだ」


 言って、黒装束は木古内さんに矛先を向けた。


「新史!! 起きろ!! 起きるんだ!!」


 黙って状況を分析していた知内さんが初めて声を上げた 。


「うああああああっ!!」


 黒装束は容赦なくナイフを振り上げる。


「新史!!」


 知内さんが黒装束を取り押さえようと駆け出したその時 、奇跡は起きた。


 カサカサカサカサガサガサガサガサ!!


「んんんんんん!?」


 何処からか出て来た一万匹と二千匹くらいの黒い虫さんたちが、黒装束の全身を瞬く間に覆い隠す。無駄に二重の黒装束だ。


 あぁ、神威くんが居ると、こういうことが起きるんだ…。


「うおおおおおおっ!! ごきぶりんと愉快な仲間たち!!」


 神威くんが感嘆すると、リーダーであるごきぶりんちゃんと思われるチャバネゴキブリは触角をピンピンと元気に上下させた。


 一万を超える仲間たちは黒装束を覆うのみでなく、鼻や口など、あらゆる穴に糞を敷き詰めてゆく。


 やがて、呼吸困難になった黒装束はバタリと倒れ、その後すぐ不入斗いりやまずさんが連れて来た警察官に連行された。


 不入斗さんと警察官は無事に戦を終え撤収するごきぶりんちゃんの仲間たちに驚いていた。


 ◇◇◇


 場所を移動して警察署の前。私たちは4時間くらいかかった事情聴取からようやく解放された。聴取を担当した刑事がごきぶりんちゃんたちの活躍をなかなか信じなかったので大変だった。


 そうそう、黒装束の正体だけれど、同じ学年の違うクラスに在籍する知らない人だった。犯行動機は単純に上幌さんを独占したかったためだそうだ。なんて自己中な人だろう。


「いやぁ、みんな無事で良かったぜ! ごきぶりんさまさ まだな!」


「あははー、今度お礼しなきゃね、マッキー!」


「う、うん。そうね…」


 上幌さんはごきぶりんちゃんたちの活躍に複雑な心境のようだ。初対面の時、殺さないの? って言ってたもんね…。


「あ、あの、みんな、本当にありがとう…」


 上幌さんは不意に立ち止まってから言って、深々とお辞儀をした。


「おう! 親友のアタシが一番に駆け付けたかったぜ!」


「あははー、私とねっぷくんが一番だもんね~」


「おう! 困ってる時はお互いさま! 行くぜみんな! ストーカーじゃなくてスカートめくりとパイタッチで明るく楽しくスキンシップできる健全な社会を目指して! 気合いだ! 勇気だ! 改革だあああっ!」


 ………。


 暫し沈黙の時が流れた。セクハラを助長するような社会にしてはいけません。


 後日、ようやく平和が訪れたと思いきや、私には更なる試練が待っているのでした。


 

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 麗編も新展開が待っています!

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