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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編2
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恋バナからのSOS!!

『それは、続編で語らせてくれ』


 夢の中で誰かに言われ、私は察した。


 日曜日、私の朝はスーパーヒーロータイムから始まる。今日は午後から新聞部の女子会だ。今朝は寝坊をしてしまい、レンジャーとバッタの物語を見逃してしまった私は、プリティーでキュアな五人の少女にハァハァした後、ブラックのブルーマウンテンで気持ちを落ち着かせた。私は普段、コーヒーにはミルクを注ぐが、ブルーマウンテンの薫り豊かでクセがなく、スッと飲める洗練された味わいは、何も加えずに味わうのがベストである。


 ◇◇◇


 13時55分、麗と見知、水菜は札幌駅で落ち合った。


「すみませーん! 遅くなりましたぁ!」


 水菜は息を切らしながら先に到着していた麗と見知のもとへ駆け寄った。


「いやいや、まだ集合時間5分前だから構わないよ」


「うん。不入斗さんが早く来てくれて良かった」


 麗は警戒するように見知をチラ見して言った。


「麗姫、それはどういう意味だい?」


「いえ、大意はありません」


 麗と見知は函館線の沿線に住んでいるが、麗は何かイヤな予感がしたので、手稲駅から見知が使う発寒駅を通過する快速に乗ったため、札幌駅周辺に住む水菜も含め、別々に集合した。到着は、麗、見知、水菜の順。集合場所付近に住んでいると何故か到着が遅くなるのが人間心理である。


 話し合いの結果、女子会はいつものファミレスで開催とした。議題は特になく、ただグダグダと語り合うのだ。


 ファミレスに着くと三人はとりあえずドリンクバーを注文し、置き引き防止のため見知は麗と水菜を先にドリンクを汲みに行かせ、交代で席を立った。


 麗はホットハーブティーを白いティーカップに、見知はアイスミルクティー、水菜はメロンソーダをグラスに注いだ。


「北海道でも駅の名前、略すんですね! 札幌駅は『サツエキ』って言いますけど、茅ヶ崎駅は『チエキ』って言うんですよぉ」


 三人が落ち着いたところで、水菜は札幌駅と自らが育った神奈川県の茅ヶ崎駅について一言語った。


「日本人は略すの好きだよね~。ちなみにJRの駅にはそれぞれ『電報略語』というのがあって、公式な略称があるのだよ。例えば札幌駅なら『サツ』、茅ヶ崎駅なら『チサ』と呼ぶのだよ」


「さすが見知せんぱい! 物知りですね!」


「いやいや~、それほどでも~」


 見知は国民的五歳児のようにそっぽを向いて後頭部をポリポリしながらニヤニヤした。


「鉄道といえば麗姫、貴女きじょ何故なにゆえ発寒を通過する快速に乗ったのだい?」


 麗の脳内に一瞬で言い訳が閃いた


「たまたま快速が来ました」


 麗は努めて冷静に、淡々と答えた。


「ふむふむ、私が乗った列車は手稲駅で快速を先に通す列車だったのだけどね。通過列車の中に麗姫を見付けた時、私は飛び乗ろうかと思ったよ」


「うっ…」


 なんなのこの人めんどくさいなぁと思った麗だが、口には出さなかった。


 見知の言う通り、麗が手稲駅のホームに降り立った時、快速と普通の2本が停車していて、麗は敢えて快速に乗ったのだった。


「仕方ない。今度二人っきりで『カシオペアスイート』にでも乗って、アツい夜を超えて東京ビッグサイトにでも行こうではないか」


 『カシオペアスイート』は、東京の上野うえのと札幌を一晩かけて結ぶ寝台特急『カシオペア』の二人用の高級な部屋である。最後部車両の端部にあるため、一般的な家庭のベランダより大きな窓いっぱいに広がる夜空や朝日を堪能できる。二人っきりで。


「私、B寝台か飛行機か新幹線で行きたいです。みんなで」


 麗が提案したのは、いずれも公衆の目に触れる設備のため、如何わしいことはやりにくい。


「あぁ! 私も勇せんぱいとスイートな夜を過ごしたいです!」


 水菜は祈りのポーズで手を組みながら目をキラキラ輝かせている。


「そういえば勇くんとの仲はどうなんだい?」


 見知が水菜に話を振った時、麗は不入斗さん、話を逸らしてくれてありがとう! と思ったのは内緒。


「それなんですけど、勇せんぱいはツンデレさんなのでなかなか素直に私の胸に飛び込んでくれないんです!」


 言って、水菜はエヘンとFカップを張った。麗と見知は羨ましいと思う反面、肩凝りの心配もした。


「でも、たまに弱みを見せてくれたりもするんです。それはきっと、親友のねっぷせんぱいにはとっくにぶっちゃけてるんだと思うんですけど、私にとっては大きな前進です。だから、そんな時は勇せんぱいと気持ちを共有したり、甘えて欲しいって思うんです。母性本能ってヤツですかね? 普段クールな勇せんぱいが可愛く見えたりもしちゃって」


 あぁ、いいなぁ、私も神威くんとそういう関係になりたいなぁ。6月初旬現在、麗は出会ってから二月ふたつきほどしか経過していない水菜と勇の関係を羨んでいた。


「そういえば、見知せんぱいと新史せんぱいはどうなんですか?」


「おやおや? 水菜殿には私とあのヤリ〇ンが恋仲に見えるのかい?」


「はい! 私には見知せんぱいとヤ〇チンせんぱいは恋人同士に見えます!」


「ムフフ、ヤリ〇ンについては続編で語らせておくれ」


「続編? 事情はよくわかんないですが、ヤ〇チンせんぱいは続編ですね?」


「そうさ、ヤリ〇ンは続編さ」


 あわわわわ! 公共の場で、しかも飲食店でそんなこと言っちゃダメ! それにヤリチ…、じゃなくて木古内きこないさんに失礼だよ! それにたぶん、一途な木古内さんはサクランボだよ! きっとそうだよ! きっと! …あれ? 本当にそうかな? う~ん、どうなんだろう? なんだか自信無くなってきた…。と、とにかく、知内さんは彼の気持ちに気付いているの!? 麗は二人の会話を聞きながらひとり狼狽している。どうしたら良いかわからなくなった麗は、カップの中のハーブティーを一気に飲み干した。見知と水菜のグラスを見ると、もう氷さえも無くなっていた。





『『『ピピピピピピピピピピピッ!!』』』





「「「えっ!?」」」


 和やかなようなそうでもないような恋バナ中に突如鳴り出したアラームに、三人は驚いた。他の客や従業員数十人も驚いて三人の方をザッと向いた。けたたましく鳴動しているのは、見知と麗が組み立てたストーカー対策用の端末三台。万希葉からの無線発報だ。


 見知は素早く端末を取り出して無線の発報位置を確認しながらサッと席を立って歩き出し、別に所持しているスマートフォンで警察に通報した。


 麗は目で二人に早く店を出るよう促し、電子マネーで手早く決済を済ませて発報位置を確認しながら、手を横にブラブラさせる女の子走りではなく、陸上の短距離選手の如く全力疾走で後を追った。

 

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 物語は急展開! 果たして万希葉は無事なのか!?

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