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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編2
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捜査開始!

「万希葉、今日の部活が終わったら、俺が尾行するから待ってろ」


 放課後の教室、神威くんは上幌さんに尾行を宣言した。


「ストーカー、ねっぷだったの?」


 上幌さんは、神威くんをジト目で見る。日頃の言動や行いがあまり良くない神威くんは、周囲からジト目で見られることが多い。


「ちげぇよ!」


 神威くんはストーカー疑惑を強く否定すると、上幌さんの耳元で囁いた。


「俺は今までストーカーなんかしないで堂々とスカートめくったりパイタッチしてきただろ」


 これはきっと、私に聞かれたくないのだろう。聞くつもりはなかったけれど、聞こえてしまった。私も神威くんの悪戯はよく見ていたので、わざわざコソコソする必要はない。


「それはそれでどうかと思うけどね」


 上幌さんは耳打ちせず、そのままの体勢で言った。


「なに言ってんだよ。男はそういう生き物なんだ。あと、今日は麗ちゃんと一緒に尾行する。新聞部のジャーナリズムだかなんだかで万希葉を尾行して犯人を特定することになったんだ」


「麗ぁ、わざわざありがとね」


 上幌さんは私の方を見て、どこか憂いを含んだ笑顔で言った。


「あ、いえ、私なんかで力になれれば」


 感謝されると、なんだか嬉しくて、胸の辺りがホッと温かくなる。


「おいおいおいっ! 俺とは随分扱いがちげぇな!」


「ねっぷもありがとね。感謝してる」


「お、おう。そうだろそうだろ?」


 今日はツンデレじゃない上幌さんに、神威くんは調子を狂わされたようで、口調にいつものような勢いがない。


 部活が終わった夕方、上幌さんを尾行する前に不入斗いりやまずさんも戻った新聞部一同と上幌さん、岩見沢さん、留寿都さんとでストーカー対策用無線機の試験を行った。試験は無事に終了した。


 不入斗さんは上幌さんがストーカー被害に遭っていると知って、ストーカー捕まえてロープで縛って顔面をガスバーナーで焙ってやります! と言っていた。あわわわわ、そうなる前に私と神威くんでストーカーを止めさせられればなぁ…。


 無線機の機能についてだけれど、スマートフォンのような構造で、下部のボタンを押すと緊急事態発生の無線が発報され、半径20キロメートル以内に居る同じものを持った人が電波を受信し、ピピピピピッ! と、けたたましい着信音とバイブレーションが鳴動し、画面に発信場所が表示される。マナーモードや電源のオンオフ機能もあるれれど、上幌さんの安全確保のため基本的には電源を切らないようにする。


 無線発報と同時に、登録された被害者の位置情報がメールで送信されるため、被害者、この場合は上幌さんの代わりに誰かが警察に通報可能となる。他に、万一無線機を携帯していない場合を考慮し、携帯電話にも送受信が可能だ。


 これからみんなで手分けして上幌さんのストーカー探索とボディーガードを行う。


 私と神威くんは上幌さんを尾行、知内さんと木古内きこないさんは周囲に怪しい人物が居ないかパトロール。


 岩見沢さんと留寿都さんは上幌さんと伴に行動するけれど、たまに敢えて上幌さんから少し距離を置いて、怪しい人が居ないかチェックする。


 長万部おしゃまんべくんと不入斗さんは処刑台と拷問部屋を造るためにホームセンターで材料を集めると言っていた。なんだか不入斗さんの発想が長万部くんに近くなっているような気がするのは気のせいだろうか。


 学校を出たら、神威くんと一緒に上幌さんの尾行を開始。


 私たちと上幌さんたちとの距離は約10メートル。いまのところ、上幌さんは岩見沢さん、留寿都さんと一緒に大通りを札幌駅方面へ歩いている。しばらく歩くと、ら~めん共和国やビックカメラがあるビルに入った。どうやらビックカメラに用事があるようだ。音楽プレイヤーかケータイでも買うのだろうか。


 ここまでの間、神威くんと一緒に周囲をよく見回しながら進んだけれど、怪しい人が多過ぎて犯人を特定出来なかった。


 同じ学校の生徒の中には、迷彩柄の服に着替えて道路に爆竹を投げている男子生徒が居たり、黒い衣装を着て魔法陣を描き、呪文と思われる良く解らない言葉を唱えている女子生徒も居た。そして私と一緒に居るのは、自らを神と名乗る、トランクス姿で奇声を上げながら外を走り回り、お家の中でゴキブリを飼育している男の子。


 私は何故この人を好きになってしまったのだろうかと、時々自らのセンスを疑いたくなる。


 けれどそれより、私は物陰に隠れて上幌さんを尾行する際、神威くんの背中に密着していたので、ガッチリした腕と背中にドキリとしてしまった。


 あっ、ここで岩見沢さんと留寿都さんが上幌さんから離れ、単独行動となりました。ストーカーが接近するかもしれません!


 上幌さんは店内を目的があるように進む。私たちは10メートル程度の距離を保ったまま後を追う。上幌さんが向かった先は音楽プレイヤーか、ケータイか、はたまたWiiかPS3か!?


 あれ!?


「冷蔵庫かよっ!」


 私と同じくあまりの意外性を感じたのか、神威くんは思わず声を出してしまった。けれど店内のBGMや喧騒が掻き消してくれたようで、上幌さんに神威くんのツッコミは届かなかったようだ。


「ふふっ、私も同じこと考えてた」


 私も思わず右手を口に当ててクスクス笑ってしまった。


「だろ!? アイツ主婦かよ!? オーブントースターとか調理器具ならなんとなく解るけど冷蔵庫とはな!」


「お家の冷蔵庫、調子悪いのかな?」


「いや、アレだな! 『まきば』だけに牧草がいっぱい入る、野菜室が広いヤツに買い替えようとしてるんだな!」


 神威くんと私って、意外と趣味が合うのかな。


「ふふふっ、ヨーグルトとかもね!」


 って、いけない! 舞い上がってつい余計なことを言ってしまった。


「ちょっと、二人とも?」


 あ、しまった。会話に夢中になっていると、目の前に上幌さんの姿が。しかも、お怒りの黒いオーラを放っている。


「あれ? いつからそこに?」


 神威くんは身の危険を感じたのか、冷や汗をかきながら苦笑している。


「だろ!? アイツ主婦かよ!? オーブントースターとか調理器具ならなんとなく解るけど冷蔵庫とはな! ってバカみたいにおっきい声出したから、それから来たのよ!」


 あわわわわ、上幌さんはとても憤慨している。


「そうか」


 神威くんは敢えて平静を装っているけれど、これから上幌さんに何をされるのかは容易に予測出来る。


「なに好き勝手言ってくれてんのよ!?」


 ドスッ!


「イテッ!」


 パコン!


「イタイッ!」


 上幌さんの名前を駄洒落にして遊んでしまった私たちは、二人仲良く頭をド突かれた。私には手加減してくれたようで、脳細胞への被害は最小限で済みそうだ。


 結局、今日のところはストーカーの手掛かりは掴めなかったけれど、神威くんとの距離は少し縮まった気がする。


 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 ビックカメラは地域によってテーマソングが異なるんですよね。私は東が西武で西東武の唄しか歌えません!

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