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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編2
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咲かぬなら、咲かせてみせよう百合の『華』!?

「麗あああああああああ!! よく帰ったなあああああああああ!! 向こうで何もされなかったか!? 無事だったか!?」


 新千歳しんちとせ空港から電車に乗り、途中の札幌さっぽろ駅で下車したみんなと別れ、私はそのまま手稲ていね駅まで乗り続けた。


 改札口を出ると、このようにお父さんが大声で出迎えてくれた。19時頃の通勤客で賑わう駅でなんとも恥ずかしい。


「ただい、ま…」


 恥ずかしいからといって無視するのは可哀相なので、一応返事はする。


「麗が居ない5日間は5世紀にも感じたぞ!! 今夜は麗を抱きまくらにさせてくれー!!」


「いや、それは…」


 愛してくれているのは有り難いけれど、公衆の面前でそういう事を言わないで欲しい。いや、家でも言わないで欲しい。


 夜、寝ようとリビングから自室へ向かおうと立ち上がった私は『麗あああ!! 一緒に寝るぞおおお!!』と呼び止められたが、お母さんがどついてくれたので助かった。お母さん、ありがとう。


 ◇◇◇


麗姫うららひめー!! 待っていたよ!! キミの居ない北海道は華を失った大地だったよー!!」


「こ、こんにちは…」


 翌日の土曜日、私が住む手稲のすぐそば、発寒はっさむにある知内さんのお家に来ていた。上幌さんのストーカー対策として、携帯電話の機能と無線の機能を持ち併せた特製のポータブル機器を製作するためだ。


 知内さんは玄関で出迎えてくれると同時に、小さな身体で私にどっしり抱き着いた。


 洗面所で手洗いとうがいをしてから部屋へ案内された後、私と知内さんは黒の四角いテーブルで向かい合って機器を組み立て始めた。


「麗姫、苦戦しているねぇ」


「はい…」


「これは小型の機械だから良いけれど、ガンダムのような巨大ロボを組み立てるとなると、インパクトレンチとかトルクレンチとか、足にの内部はレジンの靴底が摩耗するのを想定してストローク調整機構を組み立てて搭載させたりとか、もっと大変だよ。それに、関節部分にはグリースを塗るからベタベタするし」


 正直、何を言っているのだかよく解らないけれど、普通のペンチとかスパナでは人によって締め付け強度が違い、組み立ててもちょっとした動作でロボットがすぐに崩壊するから、ネジを適度な強さで締め付けられる機械を使ったり、足には靴底が擦り減った時に長さを調整する機構が必要だという事だろうか。


 とても大変そうなので、巨大ロボは新聞部では造らないようにしよう。そもそも不要だ。


「はぁ、そうなんですか…」


 うぅ、結線とかハンダ付けとかめんどくさい…。私、機械類苦手…。こういうの神威くんなら喜んでやりそうだけれど、彼は近所に住む長万部くんと上幌さんとで対策を立てているそうだ。私もそちらへ行きたい。


 でも、上幌さんをストーカーから守るために、がんばろう!


 ちなみに、岩見沢さんは催涙スプレーやライフル、サバイバルナイフやスタンガンといった武器の調達をしているそうだ。


 不入斗いりやまずさんは明日まで神奈川県に居るのだけれど、ストーカーの件は知らない。


 副部長の木古内きこないさんは、知内さんの指示で注射器を買いに行かされているようだけれど、何をする気なのだろう。


 催涙スプレーは兎も角、他のものは法的に大丈夫なのだろうか。なんだかとても危険なニオイがする。


 部屋を見回すと、壁を埋め尽くすあらゆるジャンルの漫画、アニメやライトノベル、アニメショップでCDを買うと貰える特典ポスター。これらがモザイクアートとなって、ヨーロッパが中心の世界地図になっている。日本はかなり東に位置している。


 しかし一際目立つのは、他のポスターとは隔絶されて天井に貼ってある、長い黒髪の女の子と、ショートヘアで縁の太い眼鏡を掛けた背の低い女の子が百合の花が咲き乱れる白い背景の中、ハダカで抱き合って舌を絡め合っているさまを描いた自作と思われる等身大くらいの大判イラスト。乙女チックなタッチで、『マリア様がみてる』のような雰囲気といえばご理解いただける方もいらっしゃるだろうか。


 なぜこれだけ天井に貼ってあるの? 神聖な建物の天井に描かれたラッパみたいなものを吹いているハダカの天使みたいな扱いだよね。


 って、これってもしかして!?


「あの、このイラストのモデルって…」


 背中や肩の辺りに悪寒を感じつつ、恐る恐る訊ねた。


「フッフッフッ、よくぞ訊いてくれた」


 知内さんはニヤリとイヤラシイ笑みを浮かべている。


「あ、やっぱり答えなくていいです…」


 訊くんじゃなかった。解り切ってた事なのに…。


「これはね、激しく愛し合う麗姫と私の自作イラストなのだよ!! なんだったら今から実践してみようではないかー!!」


 なんなら、と言ったところで知内さんはテーブルからこちらへ回り込み、ハァハァしながら私の肩を掴んで押し倒し、服を脱がし始めた。


「ひゃっ!? や、やめてくださいっ!」


 なになになんなのこの急展開!?


 興奮する知内さんに手足で藻掻きながら抵抗するけれど、殆ど効果はないようだ。


「良いではないか、良いではないかあああー!! 麗姫が旅行している間、私はずっと一人で悶えるしかなかったのだよおおお!! ハァ、ハァ…」


 ひゃあああっ!! このままじゃ本当にどうにかされちゃう!!


「いやっ、やめて、やめて…」


「そんな事言って、本当はやりたいのだろう!?」


「そ、そんな事ないっ、あっ…」


 イヤ!! そんなトコ触らないで!!


「フフフ、感じてきたね」


「あっ、ひやぁ、ああっ!」


 もうだめーっ!! ガマンできないっ!! このままじゃ新たな快感に目覚めちゃう!!


「や、やめてって言ってるでしょーっ!!」


 ドンッ!! ズドーン!!


「ぐほっ!! ぐはーっ!!」


 私は叫びながら知内さんのお腹を蹴り上げ、彼女が宙を待っている間に素早く立ち上がり、空手チョップで腰を叩き落とした。


「うおっ、うっ、うぁ…」


 しまった! つい強姦されそうになった時のための護身術を使ってしまった!


 知内さんはグレーの絨毯の上で弱った魚のようにピクピクしている。


 私は息切れして膝に手を当て、立ったまま知内さんを見下ろしている。






 あぁ、なんかイイ…。制圧した相手を高い所から見下ろす感じが、なんかイイ!!






 って、制圧した快感に浸っている場合じゃなかった。


「ごめんなさい、大丈夫ですか!?」


「あ、あぁ、大丈夫だよ…。悪かったよ…。もうしないから、許しておくれ…」


 うつぶせのまま息絶え絶えの知内さん。すごく苦しそう。流石にやり過ぎてしまったかな。


「でも、私は嬉しいよ…」


「えっ?」


 知内さんって、Mなのかな?


「少し前まではあまり口を利かなかった麗姫が、こうして私の家にまで来てくれて、一緒にモノづくりしてくれて、イタズラしたら、反撃して。きっと、ねっぷが麗姫をここまでオープンにしてくれたのだろうね」


 そう。私が少しオープンになれたのは神威くんと雪まつりの取材へ出掛けたのがきっかけだと思う。


 でも…。


「はい、でも、知内さんや、他のみんなも仲良くしてくれて、感謝しています」


「やややっ!? 私は何もしていないよ。欲望のまま麗姫を愛でているだけさ」


 私が知内さんに感謝しているのが意外だったのかどうか判らないが、とても驚いた様子を見せた。


「でも、麗姫の幸せを、心から祈っているよ」


 先程のイヤラシイ表情から一変、知内さんは私のすべてを包み込んでくれそうな優しい笑みを浮かべている。


 私は思わず知内さんの二の腕にもたれ掛かった。


「ひゃっ!?」


 あれ? いま、腰からお尻を流すように撫でられたような…。


「ムフフフフ~、乙女の柔肌はたまりませんのぅ!」


 ズドッ!!


「ぐほあっ!!」


 バサッ!


 思わず知内さんのお腹を拳で突いて倒れ込ませてしまった。


 やっぱり、女の子同士で一線は越えられない私なのでした。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 再び北海道での日常が始まりましたが、どうにも非日常的な雰囲気となりました。これまでいくつか作品を執筆してまいりましたが、麗はメインキャラとしては拙作史上最強にぶっ飛んでます! 神威や他のキャラも負けてられません!


 ここでお知らせです。既にご存知の方もいらっしゃると思われますが、当作品や他の拙作、アニメ等の作品の舞台となった土地の写真をTwitterにて公開しております。


 名義は0jii1、アイコンは海岸から眺めた初日の出の写真を使用しております。

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