中二病でも愛さえあれば関係ないよねっ!
「アロハさん、シャーベット、冷凍室に入れてもらっていいですか?」
他所の冷蔵庫を勝手に開ける訳にはいかないので、私は隣に居たアロハさんにお願いした。
「うんわかった。入れとくね〜」
「ありがとうございます」
「ゆあうぇるか〜む」
シャーベットを作ったのなんか何年ぶりだろう。きっと小学生四年生あたりが最後だ。作り方はよく覚えていないけれど、ヨーグルトと生クリームを混ぜて、早く固まるように少量の食塩を加えた。多分これで大丈夫。
ふふっ、私が作ったシャーベット食べたらアイツ、どんな顔するだろう? 想像するだけで顔が綻びそうになるのをギュッと抑える。
「万希葉どうした? 顔が引き攣ってるぞ?」
だが静香は私の僅かな綻びを見逃さなかったようだ。
「うん、ちょっとくしゃみが出そうなの」
「ああ! くしゃみね〜。そうかそうか〜」
「なによそのわざとらしい口調。ホントにくしゃみなんだからね?」
「あ〜そうかいそうかい!」
やっぱり静香の前で誤魔化しは通用しない。
アイツ、私には音楽しか取り柄がないとか思ってたら、意外性に惚れるなよ? なんてね! むしろ惚れなさい!
シャーベットを冷凍室に入れてもらって数分後、音響室でカラオケしてるねっぷたちを呼びに行って、何故か一人だけ先に戻って来た麗だけど、なんか顔真っ赤にして落ち着かない様子。
あぁ、どうせねっぷが下品な歌でも歌ってたんでしょ。私にはアイツの思考回路なんてお見通しなんだから。
ほら、その証拠に勇は冷めた目をして、広視さんは気まずそうにねっぷと麗の様子を見てる。
それで、当のねっぷはガーン! って感じの顔してる。
ふふっ、わかりやす過ぎだっつーの。ってか、ねっぷがエロいヤツだなんてみんな知ってるんだから、今更落ち込んだって仕方ないっての。
中学の修学旅行の時なんか部屋でバカな男子を何人か集めて『シコリンピック』とかいうのやってたじゃん。私はねっぷにちょっとした用事があって部屋に向かったんだけど、ちょうど白いのが噴き出すタイミングで扉を開けてしまい、何人かのバカな男子の色んなモノを目撃した。アレには唖然とするしかなかったわ…。結局、ゾウさん丸出しでべったり汚れたねっぷと話す気が失せて用事は済ませられなかったし…。
そうそう、同じ部屋に居ながら何もしてなかった勇の表情が当時と同じだから余計にわかりやすい。
◇◇◇
気持ちの整理がつかないままランチタイムを迎えた。料理が並んだ大きなテーブルをみんなで囲んでいる。上幌さんが作っていたヨーグルトシャーベットは冷凍中のため食後のお楽しみ。
リビングへ食器を運んでいる間も麗はオドオドして危なっかしく、ねっぷはドリンク用のグラスを置きながらも、心此処に在らずという感じだった。
「ねっぷどうしたの? 元気ないよ?」
あまりにも元気がなくて放っておけなくなったので、話し掛けてみた。
「強大な神の力は時に災いをもたらす…」
あ〜はいはい、そうでちゅね〜。
「はぁ…。解りやすく説明してくれれば相談乗るけど…」
こういう訳のわからない事を言うのって、中二病ってヤツだよね。災いってのは察しがつくけど。
「そうか、じゃあ後で二人で話せる時間作れるか?」
えっ!? 二人っきり!? 私は紅潮を隠すため、思わず斜め下へ目を逸らした。
「う、うん。わかった。じゃあ適当にタイミング見計らって、ね?」
突然の申し出に狼狽しながらも、断る理由はないのでOKした。自分で言っといてだけど、適当なタイミングって何時になるんだろう。なるべく早いほうがいいな。
「サンキューな」
その時、ねっぷに僅かな笑顔が戻った。
あぁ、こういう場面ってキュンときちゃう。普段元気なねっぷが落ち込んで、私が声を掛けたら少し元気になってくれた。嬉しくて、もっと会話したくなっちゃうけど、それが素直に出来ない。
「うん。ご飯食べて元気出しなよ?」
「お、おう。悪いな、気ぃ遣わせちまって」
あれ? もしかしてねっぷ、照れてる? 頬が少し赤いぞ? お互い同じ気持ちなの?
「べ、別に? ねっぷが元気ないと調子狂うから…」
あぁ、こういう時、もっと上手く言葉を発せられたらな。
「そうか」
ふふっ、二人きりで話せる時間が楽しみだ。
ご覧いただき本当にありがとうございます!
今回は万希葉目線でお送りいたしました。
サブタイトルのネーミングは毎回困っているので今回はネタにいたしました。