タマなしヤシの木
神社のすぐそばにある『サムエル・コッキング苑』という南洋植物など四季折々の花が植えられた広場に辿り着いた私たちは、これから江ノ島のシンボルになっている灯台、『江ノ島シーキャンドル』に上る。
ヤシの木に二つの実は成ってるかな?
木になった、じゃなくて気になったので近くの木を観察してみる。
成ってなかった。少し反りながらもピン! と元気に立っているのに残念、タマ無しヤシの木だ。タマの中にギュッと詰まった独特な味がするというココナッツミルクは飲めないね。
「あれ? ねっぷが居ない」
上幌さんの言う通り、神威くんが見当たらない。まさか無闇に神を語るから江島神社の神様に呼ばれて境内でお説教されてるのかな。だとしたら凄いなぁ。ある意味。
「トイレでも行ったんじゃね? 留萌さん見てない?」
「ううん、いつの間にか消えちゃった」
「ギャハハッ! 無闇に神を語るから天罰食らってるってか!?」
「えっ!?」
岩見沢さんに見透かされてる!? もしかして彼女、エスパー!?
「っておい! 図星か!?」
はわわわわ! 冗談だったんだ! とんだ赤っ恥を!
「麗って意外と面白いこと考えるよね〜」
「麗せんぱいは天然さんです!」
「修学旅行でイメージ変わったわ」
ええええええっ!? なんなの!? こういう時ってどう反応すればいいの!? どうしよどうしよう!?
「ちょっと〜、困ってるじゃない。ごめんね麗」
上幌さんがフォローしてくれた。美人な上に心配りが出来るなんて、男女問わず人気なのも納得。
「ううん。ありがとう。でも私、みんなと一緒に行動するようになって、世界が広がった」
はわわわわ! なんか私恥ずかしいこと言ってる!
「ふふっ、そうか! 良かったじゃん! これからもよろしくね」
「よろしくな!」
「よろしく」
「よろしくです! あと、私が傍に居ない時、うちの旦那がお世話になってるようで、ありがとうございます!」
「いえいえそんな…。み、皆さん、こちらこそ、よろしくお願いします…」
うぅ、なんか恥ずかしい。頬がムズムズする。こういう時、素直に喜べたらいいのにな…。
「よろしく留萌さん。あと、俺は不入斗の旦那じゃないぞ」
「勇せんぱいの名前を出してないのに反応したということは、認めたということですね!」
「なっ!?」
しまった! と言わんばかりに顔を赤らめて俯く長万部くん。あわわわわ。
「ニヒヒヒヒー。やったな水菜! これでヨメ決定だな!」
ニヤニヤしながら茶々を入れる岩見沢さん。不入斗さん、長万部くん、ご婚約おめでとうございます…?
「はい! やったです!」
「だからなんでそうなるんだ」
「でもお似合いなんじゃない?」
「万希葉まで何を言う!?」
「麗せんぱいも私たちお似合いだと思いませんか?」
はわわわわ! 不入斗さんから不意打ち!
「うん、お互いをカバーし合える仲だと思う」
咄嗟に、つい思っていることをそのまま口に出してしまった。
「留萌さんまで…」
燃え尽きた…。という雰囲気を醸し出している長万部くん。うぅ、なんだかごめんなさい…。
この後すぐ、神威くんが戻ってきた。
ご覧いただき本当にありがとうございます!
今回で第40話ということで、北海道旅行から大分月日が流れたと実感するこの頃です。次回行ったら麗が住んでいる手稲駅周辺の視察と札沼線(学園都市線)の新型車両でも乗ってみようかと企んでいます。