チャイナタウンハプニング! 麗編
はわわわわ!? 電車内では長万部くんと不入斗さんが何やら良い雰囲気でした。実は2人の会話の内容が少し聞こえてしまいました。お互いに信頼関係を築き上げているようです。ガンバレ2人とも! 陰ながら応援しています!
私もいつか、神威くんと悩みを打ち明けられるような関係になりたいな。
さて、私たちは今、平日にも拘わらず大賑わいの横浜中華街に来ています。早速6個入りのシウマイを購入し、みんなで分け合って食べています。さすが中華街のシウマイ。大きさは一般的なシウマイの約2倍です。
「うおっ! さすが横浜! 肉がジューシーなのに脂がしつこくないぜ!」
「高級な味だな」
「はい! 横浜は中華料理とかアイスクリームとかアパレルとか、色々高級です!」
「この調子で肉食いまくるぞ!」
「ちょっと静香、太るわよ?」
「歩けばカロリー消費するって!」
太りそうだけど、アイスクリーム食べたいなぁ…。横浜駅隣接のデパ地下で売ってるジェラートが美味しいって噂だし…。
「チョトチョト! ソコノイケテルオニサンオネサン!」
「俺のことか!?」
「アタシのことか!?」
神威くんと岩見沢さんは建物と建物の間の薄暗い場所に座り込む中国人とみられる中年男性にイケてると言われて真っ先に反応した。私はイケてないし、他の3人は反応しなかった。なるほど、神威くんと岩見沢さんは自信家なんだ。
「ソウネ! オニサンオネサン、ソラトンダブタマンホシイアル!?」
空飛んだ豚まん? あぁ、きっと精肉が航空貨物便で輸送されたんだろうなぁ。
「「欲しいアルー!!」」
子供のように目を輝かせる神威くんと岩見沢さん。ピュアだなぁ。私みたいに航空貨物便で飛んで来たのではと疑うのは良くないのかなぁ?
「ちょっと2人とも!? 空飛ぶ豚とか胡散臭過ぎでしょ!? この人、店構えてる訳じゃなさそうだし、腐った豚肉使ってるかもしれないわよ!?」
私も上幌さんに同意。やっぱりどう考えても怪しい。もしかしてダンボール肉まん?
「ごめんオッサン! やっぱやめとくわ!」
「わりぃな!」
言うと、男性はニコニコしながらササササササササッ!! と擦り足で神威くんと岩見沢に駆け寄り、2人の肩をガッチリ捕まえ、耳元で喋り始めた。
「カワナイトテメェラノタマシイソラトブアル」
私にはヒソヒソ話の内容が聞こえた。都会って恐いなぁ。私の友達に向かってそういう事言うのやめてほしいな。私が武術を習得している事は出来れば内緒にしたかったけれど、神威くんと岩見沢さん、助けないと殺されちゃう。
ササッ! ストンッ!
私はなるべく目立たないように素早く移動し飛び上がり、3秒弱で男性の後頭部に踵落としをキメて倒した。
技をキメたところを上幌さんや不入斗さん、長万部くんに見られてしまったようで、3人は唖然としている。困ったなぁ、なんだか気まずいなぁ。神威くんと岩見沢さんには私が男性を倒した事を気付かれないように何事もなかったかのような素振りをしよう。
でも良かった。相手が少林寺拳法の使い手じゃなくて。
私は男性が居た建物と建物の間の薄暗い所へ入り、豚まんらしきものを1個拾ってきた。地面には無数の生ゴミや黒い羽根と血痕があり、刺激臭がする。
私は豚まんを二つに割り、肉をよく見たりニオイを嗅いだりして中味を確認した。
「麗ちゃん、ニオイ嗅がない方が…」
神威くんが心配そうに声を掛けてくれた。嬉しいなぁ…。
「これ、カラスの肉…」
間違いない。以前、私がパンを咥えて登校中に襲ってきたカラスと同じニオイがする。
「え? カラス? カラスってあの、ゴミ漁ったり空から奇襲してくるあの…」
そうそう、温泉で神威くんの頭にベチャッ! てやったカラスさんだよ。
「うん」
「F〇ーck!! このジジィ、アタシにカラス食わせようとしたってか!? イイ度胸じゃねぇか。昇天するか!? あぁ!?」
岩見沢さんは憤慨し、気絶して口から泡を噴いた男性の胸倉を掴んで前後に激しく揺さぶり始めた。
「オラオラオラー!! 早く土下座しねぇとテメェの魂ブッ飛ばすぞコラー!!」
あわわわわ! この人死んじゃうよ~。
「ちょっと静香!? やり過ぎると補導されちゃうわよ!?」
「チッ…。今回は万希葉に免じてこんくらいでカンベンしてやんよ」
私たちは男性を建物と建物の間に引き摺り込み、生存確認をして逃亡した。
ふぅ、これで岩見沢さんだけじゃなくて、私の正当防衛も警察にはバレずに済みそう。
めでたしめでたし。
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