表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さつこい! 麗編  作者: おじぃ
修学旅行編
29/69

湘南新宿ライン物語 水菜編

 今回は水菜目線のお話となっております。

 これは、麗たち一行が小田原おだわらから横浜よこはまへ移動中、電車内で繰り広げられた、もうひとつの物語。


 ◇◇◇


 太っ腹なねっぷせんぱいが料金を払ってくれるということで、私たちは地元の路線『湘南新宿ライン』のグリーン車に乗ってます! 2階建て車両の1階席は揺れが少なく、景色は線路スレスレで迫力があり、内装はラズベリー色の座席と間接照明で落ち着いた雰囲気です。


 私は大好きな勇せんぱいの隣に座れてドキドキです!


 優しい勇せんぱいは、私をさりげなく窓側に座らせてくれました。


「飛行機が苦手な勇せんぱいも地面を這いつくばるように走るグリーン車なら安心ですね!」


 でもね、麗せんぱいと見知せんぱいの話によると、車輪がレールに食い込むフラなんとかって部分の高さは3センチ未満らしいですよ! よく脱線しないですね! 怖がりの勇せんぱいにはとても言えません。


「おいおい、俺が飛行機苦手だって何処で聞いた?」


「情報屋さんです!」


 ねっぷせんぱいと見知せんぱいが教えてくれました!


 勇せんぱいとの会話を楽しんでいると、電車はあっという間に私の故郷、茅ヶ崎ちがさきに到着しました!


 茅ヶ崎にはですね、な、なんと『ラーメンサラダ』のお店があるんです! 湘南に居ながら北海道を味わえるんです! もちろん地元の『しらす丼』や世界の料理を味わえるお店もあります!


 茅ヶ崎はハワイを推してる街なので、アロハビズとか、ハワイ関係のお店が多いのも特徴です!


「降りないのか?」


 勇せんぱいが心配してくれています!


「はい! 皆さんと一緒に横浜行きます!」


 もしかして夜は『港の見える丘公園』でメイクラブしちゃったりして!


「そうか」


 そうこうしているうちに発車メロディーが鳴り終わって電車が発車しました。茅ヶ崎駅では桑田佳祐くわたけいすけさんが地元出身なので、発車メロディーにサザンオールスターズの『希望の轍』を採用しようという話が持ち上がりましたが、旅客の乗車を促進するためのメロディーなのに、逆に聴き入られそう等の理由で頓挫しました。残念です。


「うおーっ、なんだあの紫とかラムレーズンのアイスクリームみたいな色の電車!? 全部2階建てだぞ」


 ねっぷせんぱいが駅を発車してすぐの山側にある、茅ヶ崎電車区に停まっている電車を見て興奮しています。確かにオール2階建ての電車って、あんまりないですね。


「あれは『湘南ライナー』です! 朝と夜のラッシュアワーだけ走る座席定員制の電車なんです!」


 ラッシュアワーの東海道線は、旅客線だけでは電車が詰まるので、ライナーが貨物線を走ったり、大船おおふなとか横浜よこはまでは前の電車が出て行く前に隣のホームへ次の電車が入ってきたりと人の多さを物語っています。


 神奈川県は日本で人口が2番目に多い906万人くらいですが、実際のところ人が多いというのは良い事ばかりではありません…。


「おおっ、さすが地元の水菜ちゃん! いま乗ってるのは『湘南新宿ライン』で、あっちは『湘南ライナー』なのか!」


「はい! どっちか覚え間違えてる人たまにいます! JRの人はお客さんに間違って質問されたら困るかもです!」


「よし、今度こっち来たらあれに乗るべ! サンキュー水菜ちゃん!」


「ゆあうえるかむです!」


 それから約2分、隣の通過駅、辻堂つじどうに差し掛かる頃、勇せんぱいから話し掛けてくれました。


「不入斗は今回の旅行、というか帰省で、こっちの友達とかお父さんには会ったのか」


「友達には会いましたけど、父親には会ってません」


「そうか」


「父親に会ってない理由、訊かないんですか?」


「訊いて欲しいのか?」


「う~ん、どうでしょうね。勇せんぱいになら、話を聞いて欲しかったり、欲しくなかったり」


 好きな人には自分を知ってもらいたい。でも、知られたら引かれるかもしれない。深くを訊いてこない勇せんぱいは、きっと私の考えを察している。


「そうか」


「私、父親とはあんまり仲良くなくて。だから離婚を機に母親と一緒に札幌へ引っ越しました。茅ヶ崎は友達も沢山住んでるし、海も山もあって、ショッピングセンターとか大型スーパーもあるし生活に困らくて、いい街なので好きだし、離れるのは寂しいですけど」


「そうか。ねっぷ以外には内緒にしてたんだけど、うちも両親が不仲でいつ別居とか離婚するかわからないんだ。だから、なんとなく不入斗の気持ちがわかるような気がする」


「そう、なんですか…」


 勇せんぱいも私と同じような悩みを抱えてるのかな? 好きな人には幸せであってほしい…。


「なんで夫婦って上手くやれないんですかね? 私の友達も両親が離婚してる人が何人か居るんです。愛し合って結婚したんじゃないんですかね? お互いが愛し合ったからこそ、私たち子供が生まれたんじゃないのかな? ただ欲情して生み落とされただけなら、望まれていないなら…」


 やだなぁ、どうして私、勇せんぱいにこんなこと…。肩の震えが止まらない。顔を見られたくなくて、下向いてるしか出来ない。


 私が生まれなければ、きっと両親の関係は憎しみ合わないで、友達同士でいられるくらいの関係でお別れ出来たかもしれない。


「不入斗、電車の中じゃアレだから、後で時間がある時、二人で話さないか?」


 キュピーン! これはもしかして!?


「…それは、デートのお誘いですね?」


 まさか勇せんぱいからアプローチされるなんて! これはフラグ立ちましたね!


「なんでそうなるんだ!」


「照れてる照れてるぅ~」


 照れてる勇せんぱい、か~あいいっ!


「照れてねぇよ」


 ふふっ! 照れてる照れてないはともかく、勇せんぱいから心配してくれて、トークのお誘いしてくれて、嬉しいです!


「勇せんぱい、ありがとうございます!

 今度ゆっくりお話しましょうね! その時は勇せんぱいの悩みも教えてください!」


 私も勇せんぱいの元気の源になりたいです!


「あ、うん、わかった…」


 もしも、もしも万が一、恋人同士になれなかったとしても、お互いを支え合える関係で居させてくださいね、勇せんぱい。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 麗や神威以外のキャラクターの恋物語もご用意しておりますので、彼らと併せてご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ