ガールズトークin上野
深夜0時、昨日とは異なる上野にあるビジネスホテルの一室。手前から麗、静香、万希葉のの順で川の字に並ぶベッドに座り、ガールズトークが始まる。
まず、静香が口を開いた。
「はいでは早速、万希葉は好きなヤツ居るのか?」
ニヤニヤ含み笑いでイジワルに目をやる静香。
「さあね。静香はどうなのよ」
万希葉は少し動揺しつつも噛まずに切り返した。
「あ~、残念ながらアタシに春は来てないな」
刺激が足りないぜと言わんばかりに心底残念そうな表情の静香。
「じゃあどんなタイプが好みなの?」
万希葉の問いに、静香は少し考え込んで口を開く。
「そうだな~。一緒にバカやれるヤツがいいかな~。んで、万希葉はどんなヤツが好きなんだ~? アタシが答えたんだから答えろよな~」
またもイジワルにニヤニヤする静香。
麗は二人のやり取りに聞き耳を立てながら、話を振られないようなるべく存在感が薄くなるようにしている。
上幌さんはモテるけど、誰かと付き合ってるって話は聞いたことないなぁ。上幌さんくらいのレベルになると、白馬の王子様のような高貴な人を好きになるのかなぁ。
私は神威くんが好きだけど、それを二人にバラしたら『え~、ねっぷは悪いヤツじゃないけど付き合うのはね~。路上でパンツ脱がされそうだし、やめたほうがいいよ』とか『ハッハッハッ!! 趣味わりー!! いくらなんでもねっぷはないだろ!!』とか言われそう…。
「わ、私は…」
万希葉が静香の問いに答えようとするが、珍しく顔を紅潮させ、人差し指を突き合わせモジモジしながら吃り気味。
「ほらほら言っちゃえよ~。名前まで言わなくてもいいからさ~」
「わ、私はっ、静香とおんなじでバカやれる人もいいけど、それだけじゃなくて、変に気取ったりしないで、さりげなく気遣ってくれたり、褒めてくれたり、外見だけじゃなくて、ちゃんと内面見てくれて、なんだかんだで優しい人…」
万希葉は赤面MAXで頭から血が噴き出しそうな勢いだ。
「ほほほー! な~るほどねぇ。そういうヤツが万希葉の子宮をキュンキュンさせるわけか~」
予想外に多くを語ってくれた万希葉に、静香はニヤニヤMAXで納得した。
「し、子宮ってなによ!? 私べつに…。いや、年頃だしたまにするけどさ…。でもハートがキュンキュンとか言ってくれても良くない!? って、色々何言わせんのよ!?」
「ニヒヒヒヒー。別にナニまで言えとは言ってないぜ~。ハートがキュンキュンなんて、いつになく可愛らしいこと言っちゃってー」
「う、うるさい! 私はピュアなんですぅー!」
赤面したまま息を荒げて完全に開き直った万希葉。普段は割とクールなので、こんな状況は非常に珍しい。
一方、麗は…。
上幌さん、理想高いなぁ。さて、話振られないうちに寝よう。
「ところで、麗は誰が好きなんだ?」
「えっ!? 誰が!?」
振られてしまった…。空気のように放っておかれるのも哀しいけど…。
「あ~それ私も気になる~。名前まで言わなくていいけど、どんなタイプが好みなの? クール系? インテリ系?」
「いや、その、クールでもインテリでもなくていいんだけど…」
「「けど?」」
うぅ、二人同時に訊かれると圧されて萎縮しちゃう…。
「けど…、優しくて、一緒に居ると楽しくて、安心できる人、かな」
「ほぉ、I see I see、イイ男の鏡みたいなヤツだな。強けりゃ尚いいけどな」
「麗らしいわね。いいんじゃない? そういう人」
二人とも、それが神威くんだって気付いてないみたい。
「いやぁ、しかし麗はピュアだな! 訊いてもねぇのにナニかしてんの自白したどっかの誰かと違って」
「ナニかしてるとまでは言ってないでしょ!?」
静香の振りを慌てて否定する万希葉。
「別に万希葉のこととは言ってないぜ?」
ニヤリと万希葉を見る静香。今夜の静香はニヤニヤが止まらない。
「なっ!?」
かああああああっ!! と再び真っ赤になる万希葉。
麗はじゃれ合う二人を見ながら『ゴメンナサイ…。私、そんなにピュアじゃありません』と心の中で謝っている。
結局、万希葉は静香にイジリ倒され、他の二人が眠っても全身が熱くキュンキュンして明け方まで眠れなかった。
ご覧いただきまして本当にありがとうございます!
今回は短めのお話となりましたが、万希葉のウラが少し露見しました。
神威編の『ボーイズトークin上野』と併せてご覧いただきますとより一層お楽しみいただけます!