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さつこい! 麗編  作者: おじぃ
北海道での日常編
12/69

彼ってアレなの!?

 部員が四人しか居ない新聞部は、最低あと一人部員を確保しないと廃部になってしまう。廃部になったら、音威子府くんと会話する機会がめっきり減っちゃう…。どうしよう…。


「ねぇねぇお兄さんたち! 新聞部入らない? おやつ出るよ!」


 入学式が終わると校庭で行われる部活動の新入生勧誘会。開始から数分、音威子府くんが行き交う新入生たちに無差別に声を掛けているが、今のところ手応えはないようだ。


「僕たち軽音部に入るって決めてますので…」


「そうか残念! またね! おーっとそこのお姉さん、新聞部の者なんですけど、ステキなファッションですね!」


「いや、制服だし」


「制服の着こなし方が良いんですよ! 僕たち、一年生のファッションとか、趣味とか動向を調査してましてね、ちょっと部室で取材したいな~なんて思ってるんですよ」


「いや、忙しいので、さようなら」


 音威子府くんの勧誘の仕方は人間観察をしながら個々に合わせて行っているようだけど、今の女子へのやり方は、アダルトビデオの出演交渉を彷彿させた。


 音威子府くんって、とてもエッチな男の子として有名だけど、もし、万が一、私と付き合うことになったら、がおーっ! ってされちゃうのかな?


『麗ぁ! 食ってやるー!』


『きゃー!』


 そんな事になっちゃったら…。


 って、なんなの!? 何考えてるの私!?


 なんて事を考えている麗だが、アダルトビデオの出演交渉なんて、一体どこで覚えたのやら…。


 妄想をするようになった麗の脳内は、今日も表向きの態度と違って元気いっぱいだ。


 ギュッ!


「ひあっ!?」


 また知内さんか。


「うらら姫ぇ~、誰もいない部室でオジサンとイイコトしないかい?」


「部の存続危機なんですから、部長はもう少し緊張感を持ってください」


「わ~お、最近の麗ちゃん、だいぶスパイシーになってきたねぇ。いいぞいいぞ!」


 確かに私、知内さんに対しては少し強気な気がする。彼女と一緒に居ると楽しいし、とても話しやすい。そして、強気にならないと、あんな事やこんな事をされそうで、色々と危ない。


「はぁ。ちょっと失礼します」


 このままだと部員確保が難しいと判断した私は、私の脇を押さえる知内さんの魔の手からするりと抜け出し、新入部員確保に貢献すべく、自称勧誘のパイオニア、音威子府くんにアドバイスを乞いに行った。久しぶりに会話するチャンス到来!


 意気込んで音威子府くんに近寄ってみるも、私が緊張しているのと、彼がスマートフォンで電話をし始めたことが相俟ってなかなか声を掛けられない。


「どうした留萌さん?」


 挙動不審な私に気付いたのか、電話中にも拘わらず音威子府くんから声を掛けてくれた。


「あの、私も何か力になれること、ないかな?」


「お、じゃあ早速お仕事をお願いしようかな。この電話に『お願いします』的なことを言ってくれる?」


 音威子府くんは通話口を親指で塞ぎ、囁くような声で言った。


「え?」


「まあまあ深く考えずに。言うだけでいいから。俺が懇切丁寧にお願いしてんのに、先方が承諾してくんないんだよ。そこで奥床しい女性の留萌さんからお願いしてくれると廃部を免れるかも」


 先方って誰? と思いながら、私はスマートフォンを受け取った。


「あの…」


 相手は誰なんだろう? 音威子府くん、先方とかカッコつけて言わなくていいから、代わりに相手の名前を言ってほしいな。


「えっ? どなたさまですか?」


 そちらもどなたさまですか?


「留萌です。お願いします!」


 相手が誰だかも分からずに、でも知っているだれかだろうと思って私は名乗って音威子府くんの代わりに何かをお願いした。


「ああ、留萌さんか。申し遅れました。長万部(おしゃまんべ)です。いつもバカダチがお世話になってます」


 長万部くんだったんだ。バカダチだなんて、音威子府くんはいい人だよ? たぶん。


「あ、いえ、そんな…」


「わかった。これからそっち行くよ。じゃあまた後で」


「あ、ありがとう。また後で…?」


 状況が整理できないまま通話が切れた。


「勇、なんて言ってた?」


 音威子府くんの口調は心なしか焦っているようだ。


「うんと、わかったって言ってたよ」


 何がわかったのか、私はわからないけど。もしかして、新聞部に入部してくれるのかな?


「わかった?」


 えっ!? 音威子府くんが説得しても長万部くんは納得してくれなかったから私に頼み込ませたんだよね!? 用件作ったのは音威子府くんだよね!? この人なんなの!? 長万部くんが言ったみたいにアレなの!?


「音威子府くんは、どんな用件で長万部くんに電話したの?」


 まさか忘れてなんかないよね!?


「ああ、新入部員の勧誘を手伝ってほしいって」


 そうだったんだ。部とは無関係なのに手伝ってくれるなんて、長万部くんって友達思いの優しい人なんだなぁ。

 ご覧いただき誠にありがとうございます。


 麗の神威に対する見方が怪しくなりました。


 先行公開の『神威編』でも予告させていただきましたが、次回から新キャラクターが登場予定です!

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