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第八話、敦君とトラブル

昨日のサマーウォーズと今朝のなでしこ見ながら書いていたので読み直したら誤字がたくさんありました‥‥

「う‥‥ん‥‥」


萌の口から苦しそうな声が漏れる。


俺は気絶してしまった萌を抱き抱え、ベンチに横に寝させた。


すぐに起きるかと思って"この体勢"にしたんだけども‥‥5分以上経っても、起きる気配がない。


もしかして本格的にヤバイんじゃないか‥‥なんて思いながら顔を覗き込むと、萌はようやく目を覚ました。


「萌、大丈夫か!?」


「あ、あれ‥‥?」


萌は未だに寝ぼけているようにぼーっとしている。


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」


数秒、お互いに沈黙したまま見つめ合う。


「‥‥‥‥」


そして、ようやく状況が理解出来たのか、顔を真っ赤にする。


「あ、あ、ああああの、す、すいませんです!」


萌ががばっと起き上がる。


そうすれば萌の顔を覗き込んでいた俺の顔に当然ぶつかる。


「痛!」


「ご、ごめんなさいですっ!」


萌は謝りながらも額を押さえてまた俺の膝の上に横になる。


「あ、あれ‥‥?」


萌は自分が枕にしている、俺の足に触る。


「え、え、えええ!」


萌が未だかつてないほどの声量で叫んでまた跳ね起きる。


「な、なんで‥‥ひ、膝枕‥‥」


萌の顔はこれ以上ないくらい真っ赤になっていた。


例えるならトマトとか。


「いや、いきなりぶっ倒れたから、とりあえず休ませようかとベンチ探して‥‥で、そのまま頭をベンチにのせるのもアレかと思って膝枕‥‥やっぱマズかったか?」


「いいいいいえ、全然そんなことは! むしろ嬉しいくらいで!」


「そ、そっか、なら良かった」


萌の普段は見せない迫力に気圧される。


今日の萌はどこか変だ。


これはやっぱり‥‥


「‥‥ごめんな、萌」


「え?」


萌は何で謝られたのかわかりません、というような顔をする。


「体調悪いのに、付き合わせちゃって‥‥」


「た、体調は大丈夫ですよ!」


「だけど、今日の萌は変だ。なんかぼーっとしてるし、ずっと顔赤いし、よく叫ぶし、それに‥‥事実ぶっ倒れてるし」


「こ、これは‥‥ひ、貧血ですよ! その、今ダイエット中なんです!」


「ダイエット‥‥?」


萌の体を見る。


確かに"脂肪"はあるけど‥‥


「‥‥敦さん、目がいやらしいです」


萌に睨まれてしまった。


「いや、でも痩せるべきところは痩せてると思うけど‥‥食事抜くとかあんまり良くないしな‥‥」


俺がそう言うと萌は俺から顔を逸らす。


「‥‥萌」


「ぬ、抜いてませんです! 別に朝食抜いてませんですよ!」


‥‥相変わらず嘘が下手だな‥‥


ってか、だから貧血になったんじゃないか?


「力士と真逆のことすりゃ痩せるんじゃないか?」


「え?」


「摂取する量を増やさずに五食くらいに分けて、食べた後に運動したら痩せるって」


俺がそう言うと、萌は少し考えてから俺を見る。


「あ、敦さんは‥‥痩せてる人の方が好きですか?」


「俺?」


何で俺の好みを‥‥?


「まぁ、どっちでもいいけど‥‥ウエスト60切ってたり、あんまり太すぎたりするのはちょっとな‥‥健康的な方が好きだし」


「ほ、本当ですか!」


萌がぱっと顔を輝かせる。


「あ、ああ‥‥」


萌は一人の世界に入ってぶつぶつ呟いてる。


「あ〜、萌?」


呼びかけても返事がない。


とりあえず萌を膝から起こして立ち上がる。


冷たい物とか当てたら元に戻るかな‥‥


「飲み物買って来るから」


おそらく聞いていない萌にとりあえず伝え、近くの自販機に飲み物を買いに行く。


適当に飲み物を買って戻ると、なぜか萌は不良っぽい男二人に絡まれていた。


一分くらいしか経ってないのに‥‥


まぁ、このままじゃ危ないだろうし、助けないとな。


「なんかあったのか?」


「あ、敦さん‥‥」


「あ? なんだテメェ」


男の片割れが俺に詰め寄る。


「ごめん近寄らないで口臭い」


「ふざけてんのかテメェ!」


俺が素直に感想を述べると男が殴りかかって来る。


男の拳が俺の顔面に当たる。


「あ、敦さん、だ、大丈夫ですか!?」


萌が焦った様子で俺の傍に来る。


「だからぁ、こんな男ほっといて俺達と来いって」


俺を殴った方じゃない男が萌に話しかけながら萌の手を取る。


どうもナンパされてるようだった。


まぁ、萌は普通に可愛いしな‥‥


「ですから! 私はいかないって‥‥」


「大丈夫だって。ちょーと話をするだけだから」


「そうそう。こんな奴ほっといて俺らと行こうぜ」


どうも俺がいなくなってからしつこく言い寄っているようだ。


「ですから‥‥」


萌が俺の顔をちらちら見ながら断り続ける。


男達はしびれを切らしたのか、萌の背中に手を回し、強引に萌を連れて行こうとする。


「きゃっ! ちょ、ちょっと待って」


「だーい丈夫だって。すぐ終わるから」


「そう言うことじゃなくて‥‥」


「待てよ、嫌がってんだろ」


俺が萌の手を掴んでいる方の男の肩を掴むと、男はこっちを睨む。


「ああ、君まだいたんだ」


「そいつは俺のツレだ」


俺がそう言った時、つまり萌は男の意識が完全にこちらに移った時、萌は男の腕を捻る。


萌は見た目によらず結構格闘技が得意だ。


「痛たたたた!」


男は腕を離し、萌はこちらに戻って来ようとする。


「テメ、このクソ(あま)ぁ!」


しかし、もう一人の男が、萌を突き飛ばした。


瞬間、俺の中の何かのスイッチが入る。


自分の中の全てが、黒い何かに塗り潰される。


「敦さん!」


萌の声が聞こえた。


俺の意識が保てたのはそこまでだった。


視界が真っ黒になっていった。




気がつくと、俺は未来と萌の家にいた。


「気がついたのね」


未来の声がした。


見ると、未来だけじゃなく、萌と光もいる。


「あの‥‥大丈夫、ですか?」


萌が心配そうに聞いてくる。


「大丈夫に決まってんだろ。こいつ、一発しか喰らってないんだから」


俺が答える前に光が答えた。


「また‥‥"アレ"が出ちゃったのね」


未来が呆れたとも心配してるともとれるような口調で言う。


"アレ"‥‥俺の中にいるもう一人の俺。


昔に起きた事故の影響で、俺は軽い二重人格になった。


といっても、普段は全く出てこない。


出て来るのは、俺の怒りがピークになった時のみ。


ただ、そのせいなのか、出て来るのはかなり残虐な性格な奴で、結構相手を痛い目に遭わせてしまう。


止めれるのは未来、萌、光、順平、絵里さん、銅先生の六人だけ。


この二重人格のせいで、俺は結構危ない奴と思われ、入学した当初はあんまりクラスに溶け込めなかった。


ただ、一年という時間と、未来達のフォローのおかげで、なんとか去年のゴールデンウイークまでにはクラスメート達とは普通に遊びに呼ばれるくらいに仲良くなれ、去年の夏休みが終わった頃には学校全体が俺のことを理解してくれ、普通に接して来てくれるようになった。


まぁ、たまにびくびくしてる人もいるけど。


「みたいだな」


「ちなみに、奴らは順平が片付けてたから、心配いらないって」


光が笑顔で俺に告げる。


「‥‥また巻き込んでゴメン」


「それは萌に言いなさい。この子が止めたんだから。私達は後片付けしただけ」


「そうなのか‥‥ごめんな、萌」


「そんな、全然大丈夫ですよ! っていうか、もともと私のせいですし‥‥」


「何言ってんだ、悪いのはあの男達だろ?」


光が萌の背中をバシバシ叩く。


「い、痛いですよ光さん!」


「それで‥‥これからどうするの? もう少ししたら、お母さん達帰って来るけど‥‥」


未来が二人を見ないふりしながら俺に訊く。


俺が答える前に、俺の携帯が鳴った。


「ごめん、電話だ」


携帯を開くと、絵里さんからだった。


「誰から?」


「絵里さん‥‥もしもし?」


『あ、敦さん!? 良かった、やっと繋がった‥‥さっきからずっと電話したりメールしたりしてるのに、全然返って来ないから‥‥』


絵里さんは安堵と心配が入り交じったような声だった。


「ああっと‥‥ちょっと立て込んでて。それで、どうしたの?」


『あ、それが大変なんです! とにかく大急ぎで帰ってきて下さい!』


今度は焦ったような声。


本当に何か大変なことが起きてるらしい。


「ああうん、分かった。すぐ行く」


俺は電話を切り、立ち上がる。


「なんかあったらしいから、もう帰らなきゃみたい」


俺が未来に言うと、未来は僅かに残念そうにする(多分普通の奴なら見逃すくらいの微弱な変化だけど)


「そう‥‥じゃあ、しょうがないわね」


「ああ、また今度お邪魔するよ。久々におばさん達に会いたいし‥‥」


「お母さんに伝えておくわ‥‥じゃ、私はちょっと萌に話があるから」


「奇遇だな、未来。俺もだ」


未来と光が萌を見る。


萌は冷や汗を流し、逃げ出そうとするが、光に捕まる。


「どうして逃げるのかしら?」


「いや、これはその」


「なんか、やましいことでもあるのかな?」


未来は笑みを浮かべながら萌に近づく。


未来も光も笑っているように見えるが、目が笑っていない。


「これは‥‥ねぇ?」


「これは‥‥なぁ?」


珍しく未来と光の息が合っている。


「あ、あの、その、これは‥‥」


萌が困った表情で俺を見る。


明らかに助けを求めていた。


「‥‥じゃ、そういうことで」


「あ、敦さん!?」


「じゃあね、敦」


「また明日」


「ちょ、ちょっと待って‥‥」


俺は萌達に背を向け逃げ出す。


ごめん、萌‥‥今の二人は無双状態だ‥‥俺も命は惜しい。


「さぁって‥‥どうしてくれようか」


「何したか、とりあえず体に聞いてみるか」


「ちょ、ちょっと待って‥‥きゃはははは!」


廊下に出ると、萌の嬌声が聞こえた。


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