表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

第十三話 敦君と幼馴染と先生と、転校生

教室に戻る途中、銅先生と加瀬部さんに出会った。


「音羽、いつまで外で遊んでいるんだ。もうHR始まるぞ」


「すいません」


外に出てたのは、俺のせいじゃないけど‥‥


「敦さん、何処行ってたんですか?」


「何処っていうか‥‥」


説明しにくいな‥‥


「もう仲良くなったんだな。さすがに同じ家に住んでいるだけあるな」


銅先生がさらっと俺達の秘密を言ってしまう。


「え、ど、どうして‥‥」


知ってるんですか、と聞こうとしたけど、銅先生は"先生"なんだから当然生徒の住所なら知ってるはずだと思い、聞くのを止める。


だけど、銅先生が告げたのは予想外の物だった。


「昭一さんから聞いてたからな。許婚がそっちに行くからよろしく頼むと」


「‥‥はい?」


「結構心配してたぞ、お前と加瀬部が仲良くなれるかどうか」


あのジジイ‥‥


「まぁ、心配する必要なかったみたいだな。もう噂になってるみたいだし」


銅先生が意味ありげにニヤッと笑う。


「どんな噂ですか?」


「登校中に抱き着いていちゃついてたんだろ?」


「はい!?」


何でそんな馬鹿げた噂が!?


「なんだ、してないのか」


銅先生はつまらなそうな顔をする。


「するわけないでしょうが! 誰がそんな事言ってるんですか!?」


「さて、誰だろうな。ボクが聞いた相手はボクの受け持ってる生徒じゃなかったし」


銅先生は興がそがれたとでも言いたげに適当な感じで答える。


「私は構いませんよ?」


加瀬部さんはそう言いながら、見かけよりも大きな胸を押し当てるように、俺に抱き着いてくる。


いい加減に理性が‥‥


「か、加瀬部さん!」


「なんだ、もうそこまで仲良くなったのか」


「なってません!! 加瀬部さんもふざけないで下さい!!」


「ふざけてませんよ。私は本気です」


「とにかく! 離れて下さい!」


俺は加瀬部さんを引き離す。


「私の事、嫌いですか……?」


加瀬部さんが不安そうな目で俺を見る。


「いや、嫌いとかそういう事じゃなくて、ここだと人の目とかありますし」


俺は一縷の望みをかけて銅先生を見る。


しかし、その望みが絶たれたことは一瞬で分かった。


銅先生はニヤリと笑っていた。


「ボクは構わないぞ? むしろ奨励したいくらい」


やっぱり‥‥


「ほら、先生もこう言ってますし」


加瀬部さんはニコッと笑うと、また抱き着こうとしたその時。


「何馬鹿な事言ってるんですか」


「お前ら何してんだよ!」


未来と、別な世界から帰って来た光が俺の後ろに立っていた。


加瀬部さんの動きがぴたっと止まる。


「光、もう大丈夫なのか?」


俺が訊くと、光はやや赤面しながら、


「あ、ああ! 大丈夫だぜ!」


と答える。


あんまり大丈夫そうじゃないけど、まぁ本人がそう言ってるんだからそうなんだろう。


「二人共、まだ教室に入ってなかったのか?」


「生徒に不純異性行為を推進させるダメな教師に敦が毒されようとしているので」


未来が無表情で返す。


「何だ、気に障ったのか?」


そういう問題じゃないだろうけど‥‥


「違いますよ」


未来はそう答えると、


(先生に何を言っても無駄でしょうし)


と小声で付け加える。


「何か言ったか?」


「いえ、何も」


銅先生が少し表情を変えるが、未来は相変わらずの無表情で答える。


「もう行きませんか? もうすぐチャイムが鳴りますよ」


俺は四人に言いながら時計を指差す。


すでにHRまで三分切っていた。


「うわ、やべっ!!」


光が一番に駆け出す。


「光! 走るな!」


銅先生が言っても、説得力がねぇ‥‥


「未来、俺達も行こう」


「別に、歩いても間に合うわよ。どのみち、先生がこなきゃ始まらないし」


運動嫌いの未来が歩きながら、嫌そうな顔で返事をする。


「なら、私達も走るか」


さっきの注意はどこに!?


「私は敦さんがいればどっちでもいいですけど」


加瀬部さんがそう言いながら、さりげなく俺にくっつく。


「‥‥何をしてるの?」


未来は立ち止まり、加瀬部さんに絶対零度並の冷たい視線を浴びせる。


「羨ましいんですか?」


「そういう事じゃないでしょう?」


二人の間に火花が散る。


「二人共、頼むから仲良くしてくれよ」


「別に、仲悪くないわよ」


どこが‥‥?


「まぁ、敦さんが言うなら‥‥」


加瀬部さんは渋々といった感じで言いながら、さっきよりも俺にくっつこうとする。


「だから、あんまり抱き着かないで下さい! 未来もいるんですから!」


「未来さんに見られたら嫌なんですか?」


加瀬部さんが不満げな声で訊いてくる。


「未来に限らず、誰かに見られるのが嫌なんです」


「そう‥‥ですか」


加減部さんは残念そうな顔をしながら俺から離れる。


途端に罪悪感に襲われる。


「あ、加瀬部さん、やっぱり」


「ほら、いくわよ」


俺が全部を伝える前に、未来が俺の手を掴んでやや早足で歩き始める。


「ちょ、未来?」


「うるさい」


未来が問答無用で黙らせる一言を突き付ける。


「歩いて行くんじゃなかったでしたっけ?」


加瀬部さんも俺達の速度に合わせて歩く。


「何言ってるの、歩いてるわ」


未来は加瀬部さんを見る事なく言う。


「見かけによらず歩くのが早いですね」


「誰かさんと違って効率がいいからな」


いい加減仲良くしてくれ‥‥


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ