4.気まずい二人
時を戻して。
サラが立ち去った中庭で、二人しばし沈黙の後、おそるおそるクロエは話しかける。
「ダニエル様、ごきげんよう。何か御用ですか?」
ダニエルは、てっきり交流会の事を責められると思ったのに、あっさりと「何の用だ」と聞いてくるクロエに、もやっとする。しかし切り替えて神妙に謝意を伝え始める。
「いや、クロエ、君に謝りたくて。この前の交流会では君をエスコートせずホールを離れてしまって大変申し訳なかった。婚約者としてあるまじき振る舞いだった。この通りだ。」ダニエルは丁寧に頭を下げる。
「あの、もう大丈夫ですので。謝りに来てくださってありがとうございます。」慌ててクロエはダニエルに頭を上げるよう促す。
「帰宅が一人ぼっちで嫌な思いをしただろう。すまなかった」
「それはいつもそうなんで…っていや本当にもう気にしてないので。」
「気にするだろう、それが婚約者としてあるべき姿だ。私は確かに生徒会の仕事が忙しいが、それを言い訳にする狭量な男ではないぞ」ダニエルの眉間に深いしわが寄る。
あら、なんだか不機嫌になってしまったわ。
久しぶりに笑顔を見られて嬉しかったのに一瞬だったわね。謝るとか言って、結局お説教のような雰囲気になってきたし。また私は気に障る事をいったのかもしれない。
「すみません…」クロエはいつものように謝ってしまう。
なんだろう。こういうの、もう疲れたな。
「わかってくれればいいんだ。次の交流会はちゃんと寮までエスコートするつもりだが、私が失念して帰らないよう、クロエも気を付けてみていてくれるか。婚約者としてちゃんと協力してくれ。」
(協力?)
私をエスコートするのは仕事か。業務か。なるほど。
(愛が、ない。なさすぎる。)
「いいえ!次回の交流会は用事があるので出られません!ダニエル様は、そうですね、可憐なお友達クリスティーヌ様とでもご参加いただけますか?常日頃よりお二人ご一緒の姿は目の保養になると周りの皆々様、お悦びですので。では、私はこれにて失礼!」
「おい待て、用事とは何だ!それになぜ私がクリスティーヌをエスコートせねばならぬのだ?」
「それが沢山の人を喜ばせることになるからです。生徒会として交流会を盛り上げるのも仕事です。ダニエル様が、何よりも大切にされている『お仕事』の一つですよ。そうですね、壁族の私は本当に壁にでもなったとお思いください。あら、予鈴ですね、次の授業の準備がございますので、私はお先にいきますね!」荷物をかき集めクロエは駆けていく。
一人取り残されたダニエルは呟く。
「壁族とはなんだ?」




