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お足元にご注意を~忘れられた令嬢は今日も靴作りに励む~  作者: 紫蘭かな


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13/13

13.サプライズとともに(完結)

サラ達を探していると、セイロンの生徒数人に囲まれている所をみつけた。


「サラ様、ぜひ今度私達の舞踏会にもお越しください!」

「良くってよ。では、ごきげんよう」「ごきげんよう!」

きゃあ話しちゃった、とはしゃぎながら女生徒たちが離れていく。

「クロエ!聞いてよ、セイロンの生徒の中に、ギルド大会に来てた子達がいたのよ。もちろん私のファンらしくて。おほほほ。そう、貴女の事も話しといたから、後でまた来るかもね。」


ご満悦なサラに、クロエは自分の居場所に帰ってきたようでほっとする。


突然、ファンファーレのようなラッパの演奏が流れ、教授が壇上から生徒たちに声をかける。

「今日は素晴らしい一日でした。準備に寄与した者たちに感謝の意を。両校の絆が深まり、君たちのますますの発展を心から祈る。そんな輝かしい未来に満ちた君たちと交流したいと、特別にいらしてくれた方がいる。セイロン校の卒業者でもあられる。お迎えしよう、セイロン国王太子、リチャード殿下!」


拍手にむかえられ、気品ある笑みを浮かべながら、美しい青年が壇上に上がる。


「噓でしょ、クロエ、あれって…」「まさかまさかまさか」クロエとサラは手を取りって震える。

「あれえ、気づかなかったの?大会で僕たちのピンチを救ってくれたお方は、リチャード王太子だよ。」

カイの肩がゆれている。我慢できず笑い出した。

「何であの場で言わない!そういうとこ!」サラの拳がカイのみぞおちを襲う。「ぐはっ、油断した…」カイはがくっと跪きうめいている。


「クロエ、見つけた!」ダニエルが駆け寄ってくる。

「さっきはすまかった、クリスティーヌは、本当にただの幼馴染なんだ。この前も彼女をエスコートしろと言ってただろう、今まで変な誤解をさせて申し訳なかった」ダニエルは幾分息を切らしている。

「そんなことより、あれ、あれです、うえっ・・・」

「そんなことなんて、酷いじゃないか…」不貞腐れた表情のダニエルは、クロエの指さす方を振り返る。


リチャードが満面の笑みで、こちらにまっすぐに歩いてきている。


「クロエ嬢!会いたかったよ!昨日マイスターマイケルにお会いしてね、貴女がこの学園の生徒だと聞いたから来てみたよ。私のサプライズ、君のプレゼンテーションを超えられたかな?」

クロエは驚きすぎて頭が整理できないが、それ以上なのはダニエルだ。


(ななな、なんでクロエの名前を?王太子が?会いたかったって言った!?俺のクロエに!!)


それでもなんとか高貴な方への挨拶を正しくできた二人は、動揺したままだ。

「リチャード殿下、先日はわたくしめの危機を救ってくださり、誠にありがとうございました。」

「ここはカジュアルな場だ。堅苦しいのはやめてくれ。」ウインクするリチャードについクロエは仰け反り、それを見てまたリチャードは笑い出す。

耐えられず、ダニエルが会話に割って入る。

「リチャード殿下、恐れ入りますが、私の婚約者クロエと面識がおありなのですか?」

「ああ、ギルド大会でね。彼女は波乱を起こした新しい職人の星だよ。彼女のおかげで新鮮な風が吹いたよ。伝統だなんだという長老達に委縮していた若い職人たちも、のびのび活躍してくれると思うよ。」

「クロエは、ただ観客として見に行ったのではないのか!?職人として参加していたのか!?」

「はい、まあ、そんな感じです。」クロエは観念して認める。


「なんだ、婚約者殿は知らなかったのか?」


「ええっと、はい、ダニエル様とはあまりお話しする機会がないものですから…。でもずっとほっといてもらえたので、靴づくりに専念できました。感謝してます。ダニエル様、一人の時間をたくさんいただいて、ありがとうございました。」クロエはぺこりと頭を下げる。

「ほっといて…」クロエの天然の攻撃にダニエルは息も絶え絶えだ。


「ふうむ、ダニエル殿はお忙しいか。なら、クロエ嬢、いっそ我が国に留学してみないか。宮廷職人になるための学校があるのだ。私が推薦するよ」

ダニエルははらはらし始める。

やばい、口調は穏やかだが、王太子の目は本気だ。

今日一日で何度も驚愕し、ノックアウト寸前のダニエルだが、ここは俺の人生の踏ん張りどころかもしれないと、ぐっと腹に力を入れる。


「だめだ、クロエは行かさない」


「は?『ほっといている』とかいう婚約者殿が、今なんと?」

低い声がリチャードから漏れる。周りの者は威圧され一瞬で空気が凍りつく。


リチャードはくるりとクロエに向き直り、にこりと美しい笑顔を向ける。

「なんだかここは気が悪いな。クロエ嬢、とりあえず私と踊ろうか。エスコートさせてくれ」「いや、クロエ、僕と…!」慌てるダニエル。


両方から手が差し伸べられる。

クロエは目をつむりうーんと考えた数秒後、ばっと両手を広げ、手のひらを二人に向ける。


「いいえ、大丈夫です!『マイスターマイケルの愛弟子、靴作りのクロエ』こと、この私は…」


すうっ息を吸う。

視界の隅でサラが「いけ!」と拳を掲げる。


「 『エスコートのいらないクロエ』ですから! 」

クロエは、精一杯誇らしげに胸を張った。



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