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お足元にご注意を~忘れられた令嬢は今日も靴作りに励む~  作者: 紫蘭かな


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10.大会本番

一人一人、順調にプレゼンテーションが進んでいく。

皆、作品を手で掲げたり、自ら履いてみたりしながら、制作のアイデアや製法の工夫などを説明していた。審査員たちが2,3個投げる質問に、緊張しながら答えていた。


いよいよクロエの番がやってきた。


クロエの靴を履いたサラは、カイにエスコートされながら舞台に上がる。

姿勢よく進む二人は、まるで舞踏会に向かうようだ。

するりとサラはカイの手を離れる。

追いかけようとするカイをゆったりとした手つきで拒むサラ。

そのままサラは数歩歩いた所で、不安げに足元を確かめ、はっと前を向く。「いける」と言わんばかりの表情で。

そこからサラのダンスが始まる。たっぷり大きな動きで、優雅に舞い続ける。

「ほうっ」と観客からため息が漏れる。


「何をやっているのだ?」とあっけにとられる審査員たち。

その視線を誘導するかのように、サラの足元に光が当たる。靴にはアクセサリーで使われる小さなガラスのパーツがつけられていて、キラキラ輝く。踊るサラに合わせて、光も移動し、靴は輝き続ける。


舞台中央に来たところで、サラはだんっと足を踏み鳴らし、両手を上に掲げ、華麗に止まる。

「ジャン!」という音が聞こえてきそうな終わり方に、見惚れていた観客たちは、「ほおお」と感嘆の声を上げた。


しかしこの光はどこからきてるのだ、と疑問に思う人々が後方を振り返りきょろきょろしていた。

壁際の休憩するスペースにある姿見だ。二階の窓から差し込む光を、鏡で反射させて舞台を光らせているのだ。暗い舞台で、サラの履く靴が輝く仕掛けだ。よく見ると姿見をスススーッと動かす怪しい影が見える。


観客のざわめきの中、審査員の中で一番高齢そうな男性が立ち上がる。

「これは何なんだ?君たち二人が製作者なのか?」

サラは丁寧に答える。「いえ、私たちは協力者でございます。この踊りは作品のコンセプトと世界観を表しております。」

「製作者が一言も説明せずダンスで表現?前代未聞だ!」

「はい、しかし製作者が必ず言葉で説明せよと規定にございません。」

「それは詭弁だな」

「しかし、いかにこの靴が動きやすく、動きに合わせて表情を変える美しい作品か、ご覧いただけたと思います!それこそ本当のプレゼンテーションではないのですか?」

「生意気だ!君は誰なんだ、部外者のくせに!名を名乗れ!」


加熱する審査員とサラとの応酬に、姿見の陰に隠れていたクロエは震えが止まらなくなっていた。

どうしよう、私のせいでサラが非難されてしまう…!


「わ、わた、わたしが、製作者です!マイスターマイケルの弟子、クロエと申します!」


スカートを握りしめながら、大声を出すクロエ。緊張で声が裏返ってしまった。恥ずかしさがます。もういっぱいいっぱいだ。逃げたい、カイ様のように家出したい、でもそれではサラが…!


「このプレゼンテーションは私のアイデアです。この靴は激しいダンスでも、男性の手を借りずとも踊り続けられるぐらい足への負担がないよう工夫しました。お、女の子でも、一人で、どこへでも行けるようになったらいいなって…。あと、一人でつまらない時も、可愛い物見てると、頑張れるので、見た目の可愛らしさも妥協しませんでした!それを、二人にお願いして表現してもらいましたあああ!」

最後は目をつぶって叫ぶように伝える。


「しかし、君はなぜそんな所にいるのだ。鏡で…ああ自分の作品を目立たせたかったのか。それは他の参加者に対してずるくないか。それに自分自身が責任をもって踊ればいいじゃないか」

「それはそうなのですが…私より二人がイメージにピッタリなので…」どんどん声が小さくなりほとんど泣きそうだ。



パチ、パチ、パチ。


遠くから手をたたく音が聞こえてくる。2階席の中央で一人の青年が、ゆっくり拍手をしていた。


「委員長、もうその辺でいいんじゃないか。私は楽しかったぞ。」

「しかしリチャード様!」

「彼女の世界観に、しっかり皆が引き込まれていたのには間違いない。突拍子もないけど、彼女が言わんとしている事はちゃんと伝わったよ。審査に関しては、敬愛するあなたたち審査員の方々にお任せするし、心から敬意を示そう。そうだな、クロエ嬢は、規則にないからと先走らず、前もって運営側に知らせておけば混乱はなかったな。そういう根回しとか、必要な交渉術などは、これから我々年長者が教えていけばいいんじゃないか。それより、この大会の元々の意味を思い出してみないか。我々が教えることができない、情熱や若々しいアイデアを持った若者を支援したかったんじゃなかったかな。」

「まあ…そうですね。リチャード様がそういうのであれば…。失格にはしません。しかし、他の作品と同じように厳しく審査させていただきます。」

「もちろんだ。」青年は、嬉しそうに微笑む。

「さあ、他の者も、どんどん自由にやってくれ。なんなら歌ってアピールしてもいいぞ。ただし音を外しすぎると、委員長も今度は容赦してくれないよ。では健闘を祈る!」

わははっと会場に笑いが起き、張り詰めていた空気が一変した。リラックスした空気の中、プレゼンテーションは進められた。皆が感情豊かに作品をアピールをして、例年になく盛り上がりを見せていった。


クロエは合流したサラ達と、なんとか乗り切ったことを喜び合った。

ふと視線を感じて、クロエが2階席の方に顔を向けると、先程の青年と目が合う。

青年は微笑みながら、なんとウインクをしてきた。

「うえっ」と驚き仰け反るクロエに、青年が破顔するのが見えた。


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