表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

第十六話

16

「すげーよ、ろく!よく倒したな!!」

 4人のプレイヤーが集まり抱き合う

 

 そして仲間同士、互いを称え合う

 なんて感動的な場面だろう。


まあ私には関係ないがね。

 


 私はホワイトスパイダークイーン。


 この【??ボス】イベントの中身である。


 画面の中のこいつはロックろっく。日本サーバーランキング一位だ。


 私は今こいつにあるミッションを言い渡している。


「ボスを全て倒し、私の元へ来い!」


 だけどそれも失敗に終わりそう。

 イベントはあと2日と時間はない。


それなのにあと3人のボスを倒すって無理でしょう。

 いくらランキング一位だからってできることと出来ないことがある。


「しかしこんな時間にツルの攻略とはね……」

 通知がなって飛び起きた。

  全く。見逃したらどうするんだ。


 すると画面越しの彼らが街を移動した。

 ふむ、次に向かうのは方向的に蛇か。


 蛇は偵察が1番大変だったなぁ。 


 そうして私は目を閉じ、あの時のことを思い出す


◇◇◇

 

【イベント初日】


「蛇は迷宮か」


 私は今私のストーリーを作るために、他のボスの情報収集に来ている。

 

 そして次は蛇なんだが、

 迷宮ね……


 ボスまでに時間がかかるのはあまり好ましくない。

 私が知りたいのはボス本体の情報だから。


「まあ頑張りますか」


 基本的にこのエリアは霧で視界が良くなく、壁も多い。

 

 先を見通すことがまず不可能だ。

そしてこの迷宮の道は多種多様。植物が生い茂った森から、近代的な機械の要塞、壊滅した都市の残骸に、全面に広がる花畑まで。

 さっきまでの道と違うものが突然現れる。


 その境界はまさに違和感という言葉に尽きる。

 

 次にモンスター。

 こいつらはぶっちゃけると強い。

 

 出てくるのはこのルナオンに散らばる本当のボスモンスターの幻影だ。


 そいつらが突然霧の中から現れ、攻撃を仕掛ける。


 迷宮でゴールを目指しながらボス級モンスターを相手にしなくてはならない。


 なかなかいいレベルのステージだ!


 これを作ったやつはセンスがいい。

 

 そういやツルの初見殺しも凄かった。

 私じゃなかったら避けられない様なもんだったからなー

 


 モンスターは問題ない。私は全て攻略法を知っている。

 重要なのはゴールにたどり着くか。


 イベント攻略のサイトを見ても意味が無い。毎時間マップが変わるからだ

 

 ゴゴゴと地面は突然唸りをあげ、霧は強くなる。

 ビユゥという風の音に目を守ろう顔を腕で覆う。

 そこから目を開けると、先程とは違う景色が広がっているのだ。


 正直クソだるい。

 こういうのはめんどくさいから好きじゃない。

  やめて欲しいがそういう問題じゃないのでしっかり迷宮をさまよう。


 見通し最悪のこの世界で唯一の目印は空に輝くあの太陽だ。

 あれが無ければ全てぶっ壊していたかも。

 


 私は空を見上げ、腹から叫ぶ。

「うわぁーんしんどいよー!」


 もういいか。

 スっと顔が真顔になる。


 さてそろそろ茶番は終わりにしよう



 私は地を踏みしめ、ゴールに向かって歩き出す。


  迷いなく歩みをすすめる。それが正解の道だとわかっているから。


 なぜならもう目の前にはゴームがある。 



 つまり法則を見つけたってわけ。



 

 まず、これはボスたちの存在が鍵だ。


  今まで出てきたボスに共通点がある

 

 それは

 共通マップのボスである

 ということ

 

 まあつまり、共通マップのボスへ向かう時の道をそのまま進めばいいってことだろう。


 その道が多く繋がっているせいで多くの人間が攻略できていない。

 

 まあ私はもちろん平気だけどね。

 見ただけでそこがどこかわかるもん。


 そうして私はようやく蛇と相対することが出来た



 ――そして現在。


 なぜこれを思い出したか。

 これだけ時間がかかるんだって事だ。



 蜘蛛の印、実は1個しか効果を付けられない

 蛇自体強かったから、攻略にそのひと枠使った方がいいと思ったのよ。


 だけど、これで最後までこの迷宮で迷われても困る。


「うーん、蛇なぜか前に出てきて、なぜか死んでくれないかな」


 そんなことないとわかっていながらも心の中で手を握り、神に祈った。

 



 

 ◇◇◇


 迷った

 完全に。


「ねぇ、エドぉぉ。つかれたあああ」

 気の抜けるラーナの声が頭に響く。


「俺もだよ!!もう少し頑張れ。あともうちっとでわかるんだ」


 剣を敵に振りながら横目でエドをちらりと確認する。

 

  くそ、あと少しのはずなのに


 

 【ツル攻略後】


「すげーよ、ろく!よく倒したな!!」


 ガシッとエドに首根っこ掴まれる。

  グッとその力を受け取り、俺はみんなに笑顔を見せる。

 

 怒られないのか!

 

「そうですね。ろく」

 

 しかしそう言いながら歩いてくるのんは顔は笑っていても目は笑っていない 

 

 あ、この感じ怒ってるぅ……


「勝手に、いつも勝手に!お疲れ様です!!」

 そう一気に言い放ち、のんはそっぽ向く。


 なんと返せば、そう思案しているとラーナが俺の肩を

 バシン!と叩き、ニコッと笑う。


「ろくおつかれ!よく倒してくれたわ!私たちがいたらきっと足手まといだったからね!

 ほらのん?いっぱい褒めるんでしょ?」


 褒める?

 俺は期待を込めてのんを見る


  

 のんは諦めたようにこちらに向き直る。

「そうですね。怒るのはこれまで。

 ろく、本当にありがとうございます」


 そう言い、のんは微笑んだ


 ああ、なんて素晴らしい仲間だろうか。


 心底そう思える。

 俺たち4人は互いに抱き合い、絆を確かめあった。


それが終わったらすぐに切り替える。 

「では次を考えましょう」


「ああ。次はここから近いミラージュヴァイパーの迷宮に行こう」

 

「ああ。あれだろ?

 【蜃気楼の渓谷迷宮】」

 エドの言葉に俺は1つ頷く

 

 噂によるとボスのところに着くまでにとんでもなく難しい迷宮を踏破しなくてはならないらしい。


「迷宮ならそのスペシャリスト!エドヒーロー様がいるから安心ね!」


 ラーナがそう言うと俺たち3人はエドに期待の視線を送る。


「おうよ!最高難易度の迷宮、【無限の回廊地帯】をクリアした俺様にかかればなんてことないぜ!」


【無限の回廊地帯】

 ルナオン内で1番難しい迷宮。それを最初にクリアしたのはエドだ。

 俺はその話を聞いて、パーティーに誘ったんだったな。

 

あれはこのゲームリリースから3年目ぐらいか?

 エドとはかなり長い付き合いだ。

  

 

「頼んだぞエド!」



  


 ◇◇◇

【蜃気楼の渓谷迷宮】


 

 そして今なんだが、

 頼りの綱だったエドが苦戦している。

それもかなり。


さっきからエドはぐぐぐと踏ん張り声をあげ頭をかき回している。


 そんなエドを俺たち3人で守る。

 出てくるボス級のモンスターを相手し続けて何十分経った?

 しかもしんどいのがこのボスたち倒すと霧のように消える。

 

 つまり

 経験値が入らない!


 これがなんと辛いことか。


 そろそろ限界だぞ

「エド!まだか」


「まて、あと…あとちょっとで」


 ――

 

ふむ、ここまで来るのは難しそうか。

 ゴールをしてくれないのは少し嫌ではあるが仕方ない。


 下を向いて落ちてきた銀の髪をさらりと耳に流し

 私は指をパチンとならした。


 ◇◇◇


 はっ……!


 突然、地面が揺れるでもなく霧が吹き荒れるでもなく、景色が変化した。

 

 なんだ?

 どこかに移動した?

 

 しかも鬱陶しい程視界を遮ってきた霧がない。

  

 変な感覚が今あった。

 さっきまでのマップ変化とは違う、何かが。


 そして何が起こったか、すぐに気づいた。


  いる。あそこに。


 そう思って見た視線の先には

 1人の男が座っていた。


 銀の髪が空の優しい太陽の光に淡く反射し、キラキラ煌めいている。

 服は少し中国のハンフーと呼ばれる民族衣装がイメージと思われる少し長い丈がある。

 

 胡座をかいて座っており、少し気だるそうに目をつぶっていた。


 周りを見れば、

 いくつもの花壇に美しいアーチを描く噴水。

 

 周囲は木々に囲まれ、風で優しく揺れる。

 どこかからことりのさえずりさえ聞こえるほどだ。

 

 花壇は主張をしない、小さな色とりどりの花々が咲き乱れている。

 噴水がこの穏やかな空間にアクセントを入れていて、あるおかげでこの場所は輪郭を持つことが出来ていた。


  

 これはまるで庭園だ。

 

 そんな場所の中心に座るあの銀髪の男が

 【ミラージュヴァイパー】だろう

 隠せない強者の気配が身を強ばらせる。

  

 ボスがいるということは、蜃気楼のように人々を惑わす渓谷の先が、ここなのか?

 

 こんな美しい場所だったのか



 その男は目を開け、こちらを捉える。


 来るか?

 そう身を構えると


 この男は口を開いた。


「あなたらが今私らボスを倒し回っているっていうやつか?」


 いきなりそう問われた。 


 少し戸惑ったが、何より圧がすごい。早く答えないとって思わされる。

 

 「まあ、そういうことになる」

 それがホワイトスパイダークイーンとの約束だから。


「そうか」

 ボスはそう一言つぶやく。


 その瞬間だった。


 突然目の前に現れた。


「え?」


 腹を思いっきり蹴られ、俺は遠くまで吹っ飛んだ。


「「「ろく!!!」」」


 3人の仲間の声が聞こえる。


 何が起こった?俺は今油断していなかったはずだ。


 混乱し、頭が色んな意味でぐるぐるする。


 

 するとボスはこちらに向かって、目を細める。

 

 先程の気だるげな姿からは想像もつかないような、

 背筋が寒くなるような、足から頭まで絡まれるような視線と笑顔だった。


「わかっただろう。私たちは強いんだ」 


?何を急に


 言っていることが分からない。

 そう顔に出ているようでこいつはまた続ける。


「あなたたちが簡単に倒せるほど弱くは無いって事だ」 


 簡単にだと???


「簡単に倒せたやつは居ない」


 怒りを込める。

 俺たちは全力を尽くして、戦ったんだ。


「そういう意味では無いぞ」


 そう言うと、細めていた目を見開く


「あなたらは本来、俺たちを倒せるステージにいないんだ。」


 は?


 蛇に睨まれ、体はすくむがそれ以上に舐められたと感じた。


 ボスはまた言葉を繋げる。


「今の蹴りも私のメインの力ではない。それなのにそんなに吹っ飛んだ。

 倒した方法などはよく知らないが、これだけはわかる。誰も本気を出していなかっただろう?」


 そんなことは、と言いかけてやめた。


 そういえば、ボスたちは皆、最初の姿のまま死んだ気がする。ボスによくある形態変化が出ていない。

 ただ単にないだけなのかと


「第2形態が、とかだけでは無い。第1形態の本気も出ていないだろう。

 ……だが、まあそんなことはあなたらに分かるはずないか」


 いや思い当たることがある。

 今までのボスを思い出して少し息が苦しくなる。


「何が…言いたい?」


 ボスの顔から笑顔が消える。

 現れたのは睨みつけるような鋭い視線だった。


「誰かから協力を受けているな?」


 

 心臓がドクンと強くこだまする。

 息遣いが本格的に荒くなる。


「やはりそうか」


 ボスは少し頭を撫でると、また目を細め、言い放つ


「誰の仕業だ?」


 これを聞くために呼び寄せたのか?

 

 果たして言っていいのだろうか


 

 ◇◇◇


 

 あーあーくそ。やっぱ面倒なやつだ。

 バレても正直問題ない。なんなら他の奴にはもうバレてるだろうし。

 でもこっちの方が面白そうだから黙ってて貰おうかな!

  

 ◇◇◇


 途端、手の甲が突然ズキズキ痛みだす。

 これは言うなってことか。


「なんの事やら」


 少しピクっと動いた。すると少し残念そうに首を傾げる。


「本当に言わない?

 あなたに力を貸したやつはきっと助けてくれないぞ。

 いいか?ボスを倒したのはあなたの力ではないんだ」



 心臓に釘が打ち込まれた。

 完全なる図星。


 そうだ。蜘蛛の印がなかったらきっとこんなすぐ攻略出来なかった。


 息が口から出ていく。

 目の前がどんどん暗闇に侵食されていく。


 ランキング一位でありながら、

 ボスの力を借りて、ズルをしたんだ。


 俺は……なんて……


 そんな時だった。


「ろく!!大丈夫だよ!!」


 俺の名を呼んだのはラーナだった。


「あなたは自分の力を使いました!頂いた力だけでは攻略なんてできません!!」


 そう言ったのはのんだった。


「お前は、俺たちの仲間だ!」


 そう、言ってくれたのはエドだった。


 そうだ。俺には仲間がいたんだった。


 

「おや」


 俺は顔を上げた。太陽の光を浴び、穏やかに佇むそのボスの目を離さなかった。


 俺は何よりも俺のためについてきてくれた仲間を引っ張っていかなきゃならないんだ!


 「仲間の言葉に力を貰って…。なんて素敵な話。それで話して貰えるだろうか?」


「いや。話さない」


 俺は、俺はお前なんかに屈さない。

 そう決めたんだ!



 

 だがそう綺麗に終わることは無かった。



「はあ、そうでしょうね。それは残念。

 

では私を倒せ」


「え?」

 

 今度は俺たちが固まった。


 ボスはこちらに近づく。

 


「このままあなた達を倒しても、誰が黒幕か知ることはできない」


 気だるげに髪をかき揚げ、

 

 1歩。


「ならばやられてしまった方が早い」


 顔を上げ、また目を細めて


 1歩。


「ボスを全て倒し回るのだろう?」 


  そう言って目の前に立った。


  

 あ、足が動かな……

  

 目を細めて見えなかった金の瞳がその時見ることができた。


 

「良かったな。楽に倒せて」

 彼は震える俺の手を気味が悪いほど優しく剣ごと掴み、ゆっくり肩に置いた

 

その時の笑顔はとんでもなく、美しかった。

 

 しかし、人の心を見通すその光は、 

 彼のその全てがとても恐ろしかった

 

 その目に魅了された俺は、剣を下に下ろしてしまった。 


――


 

 はぁ、つかれた。


 彼も酷いですね。

 そんなかたくなに言うことを拒まなくても変なことはしないのに。


 しかし、ボスとしてやられるのは初めてです。

 ずっと迷宮に迷うやつらで戦うこともなく、真ん中にいるだけで少し疲れたですよね。


「ようやく休憩できる」


 そう呟くと、

 死後のロードが終わり、ボスの会議室が現れ、


 そして、とても恐ろしいものを見るような目でツルとシャチがこちらを見ていた。


「え?なんですかお二人共そんな顔して」


「お、お前、ほんとに怖いやつだな」

「嫌なもん見てもうたわ」


「な、なんでですか?」


 2人の言葉に少し戸惑う。私はなにかしてしまったのですか?

 

「ただ、誰が後ろにいるのか知りたかっただけです!なにかをどうこうしようとは……」 


 それを聞いた2人は目を合わせ、呆れたような様子を見せる。



「それであれなら」

「蛇はん元から恐ろしい人なんやな」


2人がそれぞれ1人ずつ復帰するまでのその時間中、


 2人から距離を感じた。


――

 【ログイン中】

 ブラッドウルフ

 サンドスコーピオン

 ミラージュヴァイパー[リスポーン待機]

 タイダル・オルカ

 ホワイトスパイダークイーン

 ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ