表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第十五話

一体何度この階段を登る?


 1回目は偵察。2回目は攻略。

 でもその帰りはどちらもかっこ悪い。

 2回目に至っては瞬殺され、この階段に足をのせることはなかった。


 全く。ランキング一位の名が泣くぞ

 


 だが、今回こそはそうはいかない。


 誰もいないこの無限にも感じる星空にトントンと階段を上る音だけが響いた。


 

 インベントリのアイテムを確認し、装備を整える。

 

 俺は顔を前に向け、険しい表情を浮かべた。

 

 あのボスの初見殺しは無意識を狙っている。


 なんと表現しようか。

 恐らく攻撃されているという意識を持っていなかったから、避けられず突然致命傷を負ったのだと思う。


 あのボスが槍を出し、それを横に振った。

 あれが攻撃だったのだろう。

 仲間に聞いてみれば、そんなことをしていたのかと驚いていた。


 つまり、俺は気づけたということ。


 注意していけば俺ならいける。



 しかし、問題なのは仲間が見えていなかったということなんだ。


あれを見抜けていないのなら幻翼のクロヅル攻略に連れていくのは危ないかもしれない。


そして黙って出てきてしまった。時計をチラリとみる。針は4時を指す。

さすがにこの時間にゲームをするやつらじゃあないだろう。

 

 しかし……それでも項垂れる。

「はは、また怒られる……な」


◇◇◇

 ばたばたと階段を駆け上がり、ラーナが宿部屋のドアをバシンと開ける。

「ねえ…ねえ!のん!エド!ログインしてる??またろくがどこにもいないよ!」


「うわ、まじかい。流石に不味いな、きっとあのツルのボスんとこだ」


「うん、絶対そう。またあいつは……!」


 しかし、それをのんは黙って制止し、首を横に振る。


「今回は、黙認しましょう。もしかしたらと思って、ゲームを開いてみれば……。やっぱりそうですか」


「のん……」

 

「初見殺しの技を私たちは見抜けなかったのです。

 そんなの、ただの足でまといにしかならないわ」


のんは少し悲しそうにそういった。


「ろくが帰ってきたら、いっぱい叱って。それ以上にいっぱい褒めましょう?」


 ◇◇◇


「あら、もう来はったんか?」


 美しいツルのボス

  幻翼のクロヅル


 今回は三日月に身を委ねず、その足で立ち空を見上げていた。


 漆黒の髪が視線の先でゆらゆら靡く。

 彼女は俺に背を向けていた。



「困ったなぁ。まだ出迎えの準備出来てへんのやけど」


 ボスは肩をあげ、顔をこちらに向ける。

 目に宿った小さな宇宙を細め、こちらを凝視する。



 何も答えず、剣を構えた。


「そう。まあええわ、相手してやりましょう」


 槍をどこからか取り出すと、

 右足を1歩前に出し、髪を広げ、槍を持つ手を額の前に置く。



なんて美しさ、1つの絵のようだ。

 だがもう見とれはしない。


 その瞬間ボスは槍を横に振った。


まるで流れ星のように直線を描き、消えていく。


 俺はそれを



 見ることが出来た。


 槍から飛んできた不可避の斬撃を避けることに成功したのだ。


 上半身を逸らし、何とかかすることもなく避けきった。


「あれあれ、ほんまかいなもう見破ってはったん?これ避けられたん2人目やわ……」


2人目?他に誰が……


と考えていたら、おかわりの攻撃がやってきた。

「危な……?!」 



「まあええ。あの人は倒してしまう前にどっか行ってしもた。

 けど、あんたは逃がしはせえへん。今回もきっちりやらせてもらうわ」


すると、ボスは槍を床にどんと打ちつける。

 途端、美しかった星空の空間にぐにゃんと歪みが生じる。


 酔うことはないが足がおぼつかない。


そんな俺をボスは躊躇なく、攻撃してくる。


 中央にいたはずのボスは気づけば目の前におり、その槍を存分に振るい出した。


 しばらくは防戦一方であったが、

 だんだん歪みになれ、余裕を持てるようになり、攻撃を行うことが出来た。


 彼女は俺からの攻撃を払い、少し後ろに下がる。

「おっと、これだけじゃ足りへんと…そう言いたいんやな?」


 ボスはまた槍を床に打ちつける。 


 すると今度は耳からなんの音も入らなくなる。


 くそ、まずい。

 これでは情報が視界と、感覚のみで何とかしなくては。


 そうして慣れるとまた彼女は1つ、また1つどんどんデバフを追加していった。


 まるでゲームの不調が起こったかのような現象をあのボスは起こしている。それが本当の力か。


 すんごい嫌なやつ!見た目は女神みたいだが、中身は小悪魔だ。



今のところ着いたデバフは5個


 ぐにゃりと歪む視界に、聞こえなくなった音、

 さらに追加されたのは、

 右足を出そうとしたら左足が出るような操作の反転、

 ランダムで攻撃技が使えない、

 そして、たまにゲーム自体が止まるフリーズ。

 

 どれも一時的。だがいきなり来るから工夫が必要だ。


これだけでもかなりしんどい。

 せめてデバフはここで終わりにしておきたい。


 ボスは無表情のまま真夜中の冷たさを攻撃に込める。

 

 このままでは、凍えて死んでしまいそうだ。



 だからここで決めよう。


 剣を握りしめ、ボスに向かって走り出す。

 ボスは動かず俺が来るのを待っている。 


「うおおおおお!」


 こちらの攻撃が届く……わけもない微妙な距離に来た時に視界がまたぐにゃりと歪んだ。


「くそ…」


 足が縺れ、体が倒れていく。

 

そんな隙を、彼女が見逃すはずがなく

 体を伸ばし、槍を持った手を突き出した。


 このままでは槍にあたって死んでしまう。

 

 俺でなければね

 

 その姿勢はいささか不安定なのではないだろうか



 俺は剣を手放し天に向かって手を掲げる。

 そこから魔法陣が構築され、ボスの上にも同じものが現れた。


 その体勢では何も出来ないだろう?

「【ガイアクラッシュ】」


 

「あ……」

 ボスは空から落ちてくる岩の塊を見つめ、そのまま潰されていった。





 

「はぁぁぁ」

 俺は大きな声でため息をつき、その場に倒れ込む。


 ボスにつけられたデバフは無くなっている。

 体がとても軽い。


「上手くいってよかった。ラーナ直伝の技」

名ずけて【捨て身のいわおとし】

 自分を囮にして、相手を油断させ、無防備な状態を叩く。

 

「コツは自分が余裕を無くすことだよ!」

まさにって感じの技だが、成功して良かった。

 

 そう考えると、ラーナの顔が思い浮かぶ。

 

 

 あ、そういえば置いてここに来たんだった。


 よっこいしょと体をゆっくり持ち上げる

「じゃあ怒られにいきますか」

 

◇◇◇

 

はああ……なんて酷い倒し方なの?

 まさか私が体勢を崩した時に、

 上から岩を落としてくるなんて。


 私の初見殺しを乗り越え、幻翼のクロヅルとしての本領を発揮できたのはよかったのだけど、なかなかきつい死でしたわ……


 

 そう考えているのはロード時間。


 今向かっているのは恐らく死んだ後の待機室かな?


 誰かいるでしょうか。


 ロードが完了し、視界が開ける。


 現れたのはボスたちの会議室と、1人静かに座っているシャチさんでした。

 そういえばこの後のシフトはシャチさんが出るんでしたっけ。


 シャチさんはこちらに気づくと、気まずそうにこちらを2度見し、口を開ける。


「お前もロックろっくにやられたんだな。それも少し嫌な死に方だ」



 あ、こちらを気遣ってくださっている?

 

「ええんや。相手もそれだけ必死だった言うことですやろ。そんなシャチはんは?」


「まあ、こう首をスパンと」


「それも充分酷いわ」


  そんな短い会話を二人でクスクス笑いながらした。


 静かな人。

 最初は強くて怖い人だと思っていた。


 でもこんな空気感、嫌いではないですね。


  私たちは会話を終えたあと、

 互いに静かに……

 しかし落ち着ける時間を過ごした。


◇◇◇


【蜃気楼の渓谷迷宮しんきろうのけいこくめいきゅう

 

「きゃあああ」

「うわあああ」


 あちらこちらでプレイヤーの悲鳴が聞こえてくる。



「なるほど、今はこんな評価ですか」


そんな迷宮のど真ん中、

 銀色の髪が、鱗のように光を反射しながら揺れる。

金色の瞳が、獲物を見定めるように細められた。

 

 私はミラージュヴァイパー。


 今ここまでくるプレイヤーがおらず暇しているんです。


 ゴールまで来たのはてるてるぐらいでしょうか。


なのでウィンドウを開き、掲示板で評判を確認しています。


 端的に言えば、好評。


 

「新しいキャラクター!」

「まるで生きているようなボスたち!」

「謎が多くて考察しがいがある!」


 などなど。

 このままいけばイベントは続行だな。


それはよかったのだが1つ気になることが。


 同じプレイヤーがボスを倒して回っている。


 狼、シャチ、ツル。

 彼ら全て、日本サーバー最強、ランキング一位ロックろっくにやられていた。

 



これは本当にとんでもない事だ。

  このイベント丸々かけて、1人倒せるならわかる。

 だが終了間近でもないこの三日目でもう3人も攻略しているのだ。


「ロックろっくは強いから」


 そんな理由では片付けられない。


なぜなら私がとんでもなく強いから。 

  今までの日々はなんだと問いたいほどの圧倒的な力。

 ただの一般プレイヤーが1日2日で倒せるもんではない。

これは他のボスにも当てはまることだろう。

 つまり


 誰かが仕組んでいる。

 育、は恐らくない。

 もしかしてでも失敗に繋がるようなことはしないだろう。


「ボスの中の誰か?」


 有り得るのは、

 

 自信たっぷりなシャチ?

 しかしロックろっくに倒されていた。


 何かありげな熊?

 だが誰とも関わりたくなさそうだった。


 イタズラけのあるフクロウ?

 賢そうなツル?


 それとも…最初には話題を出すほど馴染もうとしていたのに、急に意見を変えた……蜘蛛? 


まあいい。

「今ログインしているのは私と蜘蛛、後サソリか?」

 

 ツルが倒された。

 そろそろ私のところに来るかな。

 

「その時答え合わせをしようじゃないか。」


 ――

 【ログイン中】

 エンバーグリズリー

 幻翼のクロヅル[リスポーン待機]

 ミラージュヴァイパー

 ナイト・ホクロウ

 ホワイトスパイダークイーン

 ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ