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第十四話

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海の帝王 タイダルオルカ攻略終盤


 

のんのバフで視界は良好。

ラーナが罠を設置し、エドが短剣で囮となって誘導する。


みんなが繋いでくれたチャンス。

長い戦いで、皆もう限界まで消耗している。


ここで決める。


ラーナの罠がシャチの体に絡みつく。

しかしボスは激しく暴れ、鎖は今にも千切れそうだった。


あまりの抵抗に体を震わせながら、ラーナが必死に耐える。


「ろ、く……早く……!」


ああ、任せろ。ここで決めてやる。


水の圧で剣を振るのに力がいる。

乱れる視界の先、


 目の前のボスの首を――切った。


「よっしゃ……!」


けれど長時間の戦いで、変なテンションになっていたのか、

大振りしすぎた。


ボスを倒すのに全力を使い果たし、

そのまま剣を握ったまま、ぐるぐると海の中を漂った。


疲れた。

重力もなく、力を抜いて体をぷかぷか浮かせるのは、案外気持ちがいい。

 俺は気づけば水にこの身を委ね、眠りについていた。


そうして目を覚ましたのは、仲間たちが次の行動を話しているときだった。


「22時? もうこんな時間ですか……正直、こんなに手間取るとは思ってませんでした」

「プレイヤーも少ないし、イベントボスも2人しかいないよ?」

「しかもそのうちの1人が【ホワイトスパイダークイーン】かよ……」


……え、22時? そんなに経ってたのか。


目が覚めると、もぞもぞと体を動かす。

どうやら眠ってしまった俺を運び出してくれたらしい。


お礼を言おうと思った、その時――


「なら次は【幻翼のクロヅル】だな! 早速行くぞ!」

そう言ったのはエドだった。


「いやだああああ!」


思わず3人の間に割って入り、声を荒げた。


「もう疲れた!寝る!」


「まあ? いつ起きたのよ、ろく」


のんがゆっくり諭すように俺を座らせる。


「あのですね、ろく。私たちは遅れてイベントに参加しているのですよ?

2体のボスを倒してようやくランキングに名を載せられたところです。

他に倒されてしまったら――」


「ぐ……それは……」

 

「まあまあ、のん? あたしも疲れちゃったよー。

ろくもおねむモードみたいだし、今日はここで終わりにしよ?

エドもそれでいいよね!」


「……まあ、俺も疲れたっちゃ、疲れたけどな」


その言葉を聞いた俺は、立ち上がって手をパンと叩く。


「そうだよ! みんな疲れてるんだ。幻翼のクロヅルは明日にして、今日は寝よう!」


のんは一瞬顔をしかめたが、ため息をついて頷いた。


それぞれ挨拶を交わし、次々とログアウトしていく。


――さあ、俺も寝よう。


……そう思って指を動かしかけて、ピタリと止める。


疲れたとはいえ、俺が遅れたせいでイベントがギリギリなのは事実なんだ。


 カッコ悪くわがままを言ってしまった。

 

一応、先に偵察だけでもしておこう

 それが罪滅ぼしになる訳ではないが。



 ◇◇◇

【星祈の天廊ほしおりのてんろう

ここにいるのは、幻翼のクロヅル。


 入口は、空へと続く長い階段。

漆黒の一段一段は、まるで夜空を踏んでいるようだった。


登り切った先は――視界の180度、全てが星空。

紫がかった黒いキャンバスに、無数の星が瞬く。

足元は柔らかな黒雲で、体重を感じない。


そして、その中心にある三日月。

そこに、ひとりの女性が優雅に横たわっていた。


黒髪が風に流れ、

身に纏う着物は、まるで星空を切り取ったように美しい。


三日月に身を委ね、目を閉じているさまは言葉では表せないほど尊い光景であった。

 

……偵察に来ただけなのに、目が離せない。


そのとき――天女が目を覚ました。


まつ毛がゆっくりと持ち上がり、

 銀色の瞳がこちらをまっすぐ見つめる。


「あれ、まだ人がおったんか。……うちも疲れてしもたんやね」


声まで美しい。意味が頭に入らず、ただ見とれてしまう。


「あんた、うちを倒しに来たんやろ? 知っとるで。

狼はんとシャチはん、倒したんはあんたやろ」


彼女が視線をふっと下げる。何を見てるんだ?

そう思った瞬間、彼女は笑った。


「うちはここでのんびりしとるだけや。見逃してくだはらん?」


……なんて美しい瞳。まるで小さな宇宙みたいだ。


その目に吸い込まれ、意識が霞む。

何も考えられない。


――その時。

手の甲に痛みが走った。


蜘蛛の印。


ハッとする。

そうだ、俺は偵察に来たんだ。


さっきまでのぼんやりが一気に吹き飛ぶ。

たぶん、このボスは“美しさ”でプレイヤーを無力化するタイプだ。


……やっぱり今日は引こう。


くるりと背を向ける。


「あら、もう帰りはるん? ええんやな、うちを倒さんでも」


背中越しに声を聞きながら、答える。


「明日にでもまた来る。お前を倒しに。」


背を向けて言うそのセリフは、我ながらとてもかっこ悪い。


彼女は攻撃してこなかった。

 

最後まで無表情なまま、こちらを見つめていた。



 ◇◇◇

 【翌日】

 昨日は一晩中クロヅルへの対策を考えた。

 どう転がったらあの魅力に勝利できる? 



 もう朝だ。今日は土曜日なので朝からログインしようと話している。また遅れる訳には行かないので体を起こす。



さて、みんなにどう話したものか


 昨日の全てを正直に話すと案の定お叱りを受けた 



 途端ラーナに肩をガッと掴まれ上下にブンブン振られる。

「あんったはほんとに勝手に動いて」


 それを止めたのは、昨日とは逆でのんだった。

 

「まあまあラーナ。ろくは以前の失敗を挽回しようとがんばってくれたのですよ?そのくらいは許してあげましょう」


「そうだぜ。今何より大事なのは幻翼のクロヅルをどうするかだ」


そうだな。

 あの美しさが効く人と効かない人がいるらしい。

 どうかで判断しないと。


「行ってから判断しよう。攻略情報を見る限り、俺たちなら倒すことが出来るはずだ」



全員頷いた

  決まりだ。


「さあ行くか」


◇◇◇

 

うーん。やっぱろっくツルのとこ行ったか。


昨日の様子が 頭に残る。

 攻略できるのか?


 今日が土曜日で良かった。

 最初からその様子を確認できるから。


  

あいつがツルにどう思うかは自由だが 

このままだと私までたどり着かんな。

 

 今回はお試しなのでイベントは5日、

 祝日の月曜日まで。


あいつはそれまでに残り、5体のボスを倒せるだろうか。

まあ私は次回へ持ち越しも悪くはないけどね

 

「どう転ぶかな」


 ◇◇◇


 3人がハッと息を飲む。

ついでに俺も後ろで同じ反応。



 エリアに入った瞬間からその全てに心が奪われる。


「なるほど、ろくがいっていたことがよく分かります。これはルナオン史上一番素晴らしいボスだわ」



のんは意識がはっきりしていたのだが


「ラーナ?エド?」


「「……」」

 

こりゃアウトだな。


 目を見開き、ひたすらたった1人を見つめている。


 顔前で手をパタパタさせても反応がない。


 ふぅ…と息を吐く。やっぱり対策無しに来たのは失敗だっただろうか。

 


 俺は視線を上げる。

 ゆっくり、ゆっくり、刺激に目を潰されぬよう丁寧に視界に入れる。


 三日月に腰をかけ、軽々座っている。

 目線は彼方を指しており、どこか物憂げだ。



 しかし俺たちの存在に気づいたのか、パッと顔を戻し、佇まいを整えた。


 裸足の足を伸ばし、ゆっくり立ち上がる。


「昨夜来た人やんな。なんで帰ったか思うとったら仲間連れてきたかったんか。仕方ないおひとや」



 キリッとした顔つき。

 人を相手にするのが心底億劫そうだ。


 他のプレイヤーもぞろぞろと現れてきた。


 エドやラーナの意識は戻りそうにない。

このまま2人は置いていった方がいいか?


 そう思ったが、直後昨日に感じた痛みがまた手の甲に走る。


 そう思い、手の甲を確認する

  蜘蛛の印が淡く光を帯びていた。 


 エドとラーナの元へいき、また手の甲へと染み込んで行った。

 すると2人は手の甲をビリッと動かしたあと、目に生気を宿した。



「あ、あれ~私何してた?」

「ちょ、頭がキーンってする」


よかった。2人は戻ってきたようだ。 



「おい!戻ってきたところ悪いがもう戦闘だ。しっかりしろ」



 状況を飲み込んだふたりは武器を取り出し臨戦態勢に入った。




よし。じゃあやるぞ。

 そうしてボスに向き直る。


 相変わらずこちらに興味が無いように爪をいじっている。


「流石に遅いわ…」


 その瞬間だった。

 槍を取り出し、右から左へ――


一閃。


 俺たちだけでは無い

 このエリアにいたプレイヤー全員

 

「え?」

 全員の胸あたりに亀裂のような、痛みが走る。

 

視界が、光で埋め尽くされた。

傷から溢れる、圧倒的な量の光の粒子だ。

 

 速い。

 

 いつだ?この攻撃はどうやってここまで届いた?

 HPが消えるまでの刹那、頭をフル回転させる。

 

「ああ、そうか」

  

 俺達のHPはゼロになり、そのまま光となってしまった。……



  

 ハッと目を開ける。 


 すー……


 まじか……

 これかなりショックだ…


 幻翼のクロヅル、そのフィールド近くの街の宿で目を覚ました。


 やられた。久しぶりに死んだ。

 ラスボス以来だ。


 バシンと額を叩く。

 油断したんだ、俺は。

 

 だがこのまま逃げる訳じゃない

 

 体を起こし、しばらくの間座り込む。 

 考えているから。

 

 次は勝てる。そう確信しているから。


 ◇◇◇

 【星祈の天廊】


はあ、



 緊張しました……

 

 まさかランキング1位の人が来るなんて思わないですよ……


 私はイベントボスの1人幻翼のクロヅルをやっているものです! 


 口では関西弁ですが、それは設定です!

いやあ狼さんやシャチさんがやられてて心配していたのだけど、そんな暇はなかったですな。


 だってこのゲーム日本サーバーの頂点に立つ人が次に私のところへ来たのですから。



 戦いたくないので昨夜は刺激しないよう、動かない形を取っていたのですが、まさか仲間を連れてくるなんて!!



もう!私にどうしろって言うんですか!


 しかし、彼から蜘蛛さんの気配を感じたのですがあれはなんでしょうか?

 

  蜘蛛さんとは仲良くなりたかったのに熊さんが余計なこと言ったせいで流れが変な方向にいっちゃったのがいけなかったですね。



 彼と蜘蛛さんの間にはなにかあるのかしら……


あわわ羨ましい。


 でも!

 私の初見殺しの技を見事受けてくれました!

 

 このまま何が起こっているか分からなかったら私を倒すことはできませんわね。

 

 ふふふ

 蜘蛛さんと何かあるなら、案外これが話のタネになるかもしれませんわ!


 来るなら来なさい!ランキング1位さん!



 ――

 【ログイン中】

 エンバーグリズリー

 ナイト・ホクロウ

 幻翼のクロヅル

 ホワイトスパイダークイーン

 ――

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