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第十一話

——時は少し遡る。


 「お、来たか」

 

私は銀色の玉座に堂々と腰かけ、ダンジョン内へ入ってきた侵入者を蜘蛛越しに確認している。

蜘蛛の見ているものは全て筒抜け。まさに女王様だ。

 

 そして来たやつが求めていた者だったことに安堵。

 

ニコニコしながら私は蜘蛛の配置と出迎える準備をする。


私は今回のイベントボス

 【ホワイトスパイダークイーン】

 我々の仕事は皆を熱狂させるボスを演じること。

 


そして待っていました!ランキング1位ロックろっく!

 

偶然にも1人でいる時にダンジョンの入口を出すことが出来てよかったよ。


 私が今回作る物語に大事なヤツだ!


「大事なお客様は歓迎しないとね!」


 私は指をパチンと鳴らす。

 途端目の前で糸が紡がれ、大きい蜘蛛が生まれた。


よし行ってこい!

 そうして蜘蛛をあいつの目の前に転送。


 これで一体どんな動きを見せてくれるかな。


 この蜘蛛は他のモンスターと同じプログラミングされた機械が動かしてる。


 こいつは歓迎でもあり、お手並み拝見のためでもある。

素早さと攻撃力を盛りに盛った育のお手製だ。

 並のやつじゃ歯が立たない。 

 その程度でやられてもらったら困る。


 だが……

「そんな心配は無用だったな」

 蜘蛛が真っ二つに割れ消滅する。

 

 瞬殺かい

 

 こいつの素早さが意味をなさなかった。

 結構頑張って作ったんだけどな、育が。


 元々、ダンジョンは私がどれほどの力を使うか見極めるために、蜘蛛の強さを何段階かに分けている。

 満足できる相手なら、何回か蜘蛛を相手にさせてここまで通すし、弱ければそのままおかえりいただく。

 

しかし、彼に送ったのはボス部屋以外のダンジョン内で1番強いやつだからな。やっぱ流石と言ったところか。

 

 うん、もうこのままこっちに通しちゃおう。

 どうせ何体やっても同じだろうな。


まあでもそのまま何もせず通すのも彼に悪いか。

 

 つまらんし!

 

 そして私はまた指をパチンと鳴らす。

 するとダンジョン内の壁に張り付いていた蜘蛛がボタボタと落ち、彼に向かって集まりだした。


ランキング1位でもそんな光景には勝てないのか、悲鳴を上げ走ってきている。

 


あー面白い、腹がよじれそうだ。

「こんなに綺麗なのに分からないのかしら。ねぇサイド」

肩にいるのは私の相棒蜘蛛のサイド

 サイドは嬉しそうにこくこく頷く。

 

 いやしかし。こいつのこんな光景が見れるのはボスになったからだろう。


とても楽しいがそろそろ準備を整えよう。


 もうすぐ来る

「サイド、端に隠れておいて」

 

 今回はサイドを見せたくないんだ。


 バンっと扉が大きな音を上げ開く。


 ついにお出ましだ。ランキング1位ロックろっく。

略して、うーん……ろっく。心の中ではそう呼ぼう。


 

さあ、私の糧となりなさい


 

 挨拶を終えた私は出した鎌で手首を掻き切る。

 そこから溢れ出したのは白い血。


 これこそ考えに考え抜いた私の象徴。

 このゲームは血の代わりに光の粒子が空へと浮かび上がり消える。だからこそ、リアルな血が特別なものになる。でも赤いとグロテスクだから、私の色でもある白にした。


 何よりもこの白い血は

 蜘蛛になる。


 滴り落ちた白い血はもごもごとうねり動いて集まりひとつの蜘蛛となった。その蜘蛛はとんでもないスピードで

 ろっくの元に飛び出し、一撃食らわせる。

 彼は吹き飛び、少し悶絶。

 ちらりとこちらを鋭い眼光で見つめてくる。


 ああ、驚いてる驚いてる。そして頭を働かせている。


 さらに追撃しよう。


 私は鎌で今度は手首ごと切り落とす。

宙に飛び上がった手首は今度は形だけでなく大きさも変え、大きい蜘蛛になった。


 ろっくに攻撃を食らわせてる間、私は切られたはずの手首をじっと見る。

 蜘蛛に変わったはずの手が、綺麗に私の腕に生えている。


 これは、この白い血を出すにあたって再生能力も付けてもらった影響だ。


 白い血が出たら、その傷は回復するというもの。


 それはつまり、“白い血が出る攻撃は回復するから意味が無い”ということ。

 これが私の強みだ。


 白い血について注文した時の育の顔と言ったら。

 何を食べてたらそんなこと思いつくんですか?

 って言いたそうだった。


おっと考えすぎてしまった。ろっくの様子を確認する。

 ようやく戦う準備ができたようだ。


 ではそろそろ真面目にやろう。


私は鎌を持ち直し、空気を変える一振。部屋中に風と言うにはあまりに鋭い何かが走り抜けた。


「では、始めようか」


 トンっと1つジャンプ。

 途端、上の玉座にとんでもない衝撃波が舞う。私の姿は上ではなく、ろっくの目の前にいた。


 あまりに速い動きだが、すぐさま反応し私の鎌に剣を交える。

 

カキンと音を鳴らすと1歩後退し、また攻撃を振る。

しばらくはこれの繰り返しだった。


 しかしさっき悲鳴を上げていたやつとは思えないほど真顔の、つまらない顔をしている。

 

だが、こちらの攻撃はなかなか当たらず

 向こうの刃は私の体に傷をつけている。

 本気を出してないとはいえ、流石1位。

 

だが。さっきの光景を忘れていないかい?

 ろっくの剣が、私の肩を切り裂いた。


「——っ」


痛みが走り

傷口から、白が滴る。

そして——傷が塞がっていく。


「...くそ」


ろっくが眉をねじ曲げる。


「見てなかった?

私の血は、特別なの」


ニヤリと笑う。


「切っても、意味がないわ」


 

さて。そろそろ変化を入れようか。


 

私は宙に上がり一時撤退。ろっくは追いかけようとするがその道を何かに阻まれる。

 

 傷から出た血の蜘蛛だ。

 

 そうさ。私には蜘蛛がいる。

ここからは蜘蛛との連携だ。


 

蜘蛛と私は交互に攻撃、防御する。


 切っても切っても増えるだろう?


 ぐるっとろっくを囲み、さらに追撃。

 

 増えていく蜘蛛も手強いが、何より本体の私がとんでもなく強い。


 ここからどうする?


 ろっくは一方向を向くと剣を振り上げ力を貯める。

 

 それを静かに下に降ろすと、

段々と地面が割れるほどの衝撃波が一直線に放たれ、その場所にいた蜘蛛は綺麗さっぱり居なくなった。


 ろっくはそうしてできた道を進み、私から距離を取った。



1度落ち着こうということか?


 いや違う。ろっくは剣をしまった。


 代わりに出したのはハンマー。


 わー、分かってるわ。


 血を出さない攻撃、それが私に有効なのだと。

 

実際それが正解


 打撃系の武器ならやっぱハンマーだよね。


ろっくは次にハンマーを握りしめ一回転。周囲を巻き込む広範囲攻撃だ。

 そのほかスキルを駆使してどんどん蜘蛛を狩っていく。


先に蜘蛛を片付けようってことね。1VS1なら今の私と互角だが、蜘蛛がいるとそうでもないから。


 しかし、それを止めるでもなく私は空から眺めている。


これはただの戦闘ではない。

 しっかり仕事しなきゃ。



お、蜘蛛倒し終わったみたい。

なかなか疲れてる。


 いい感じだ



 

ではやられるか。



 宙に漂う私にろっくはとんでもないスピードで飛び上がり、目の前に現れる。

 

 無の表情。こいつはいつも何考えてんだ?


 そう考えている頃には顔の横にハンマーがあった。

 

 乙女の顔を狙うなんてなんでやつだ。

 何とか鎌で衝撃を抑えることはできたがそれでもかなり食らった。


 頭に当てられたから少しクラクラする。

 

しかしそんな私に容赦なくろっくは追加で攻撃を加える。


間一髪で直撃は免れているが、私のHPはどんどん削られる。

 

  

 だがやられっぱなしという訳にもいかない。


 ハンマーが振り切ったタイミングでしっかりカウンターを決める。

 鎌を腕いっぱい伸ばして一撃。これも相手にクリーンヒット。

 疲れているからか、さっきより当たる。

 

 お互い服も体もボロボロで見ていて痛々しい姿に。

 そして命の危険を知らせる赤いHPゲージ。


  

 そろそろかな!


 急にグラッとしてしまった私のその隙を逃さず、相手のハンマーがついに直撃。

「ぐ……」

 何とか立ててはいるが満身創痍の私に、最後の一撃を与えようとふらふらとろっくが近づいてくる。


 足を止め、ハンマーを振り上げる。


 今だ。


 私は咄嗟に手を前に出す。

 

「待て!提案がある。」


ろっくはぴくりと動きを止める。


 よしよし。第1段階クリア。

 このまま潰されてたらまずかった。


「お前にも得がある。一旦その武器を下せ」

 


頼むぞ……


ろっくは考えているのかこちらをじっと見つめる。


「攻撃してこないだろうな」


「当たり前だ。これからするのは提案だ」


 一瞬迷いはあったがこいつは武器を下ろしてくれた。

 ナイス!第二段階クリア!


 ろっくは呼吸を整え、改めて尋ねる。

「それで?俺に得のある提案とは?」


 ここらが正念場


「このままあんたにやられたくない。今他のボスと勝負をしているんだ」

 

「ふむ。それで?」

 

「お前に蜘蛛の印をつける」

 

「印?」

 

「これがあれば今回のイベントボス8体に高確率でエンカウントでき、そのボスを攻略する時、必要な能力が1つ与えられる」


「な?」

ろっくは驚愕する。

 当たり前だ、これはとんでもない破格の性能。


「取引をしよう。


お前は私を、倒せる。

だが、私もお前を倒せる。


どちらも同じく消耗してるからな

 だが、それでもお前は私をなんとかやろうとするだろう」


間を置く。


「だから提案だ。

お前に『蜘蛛の印』をつける。

これがあれば、他のボス全員を攻略できる。


その代わり、今は見逃せ。

他のボスを倒してから——」


私は微笑む。


「また、私を倒しに来い」



これはつまり、ボスを倒すというイベントで全ボスを倒せるチャンスという訳だ。

能力をあげるというものは置いとくとしても、ボスの居場所が分かるという力はとんでもない。


ボスたちのフィールドは広く、私ほどではないにしてもエンカウントは難しい……はず。

 

だが相手はランキング1位だ。こんなものに頼らなくても大丈夫な可能性が……


「その提案、受けよう」


 え、まじか。

 こちらの目を見てそう言ったろっくに内心驚く。

 こいつほどのやつが?正直実力者は印なんて必要ないと断るのではないかというのが心配であったのだが……


 まあいいか!受けてくれるのなら!

 

私は優しく微笑みこういった。

「それは良かった。では印をつける。手を出せ」


 そうして差し出された手。

 うーん。私が言うのもなんだがもう少し警戒した方がいいんじゃないか?


 そう思いながらも私は鋭い歯で指に線をいれ、血を手の甲に垂らす。


 途端、血は光を放つ。渦を巻き、ゆらゆら揺れるとゆっくり手に染み込んでいった。


「完了したぞ」


「なんか、嫌ではないけど変な感じだ」


 ろっくはじっと手の甲を見つめる

ふむ、そればっかりは私も試してないからわかんないな。

まあ忘れないでくれよ。育を説得するの大変だったんだから。


「じゃあな。ここでお前を待っている」



「ああわかった。俺が来るまで倒されんなよ。女王様」


そうして私は指をパチンとならし、ろっくを上へ送り出した。



 ふう、疲れた。

 

 ボロボロの体を宙に上げ、回復。

 傷は一瞬でなくなり、身につけていた服も元通り。

 そうして上にある玉座に戻る。

 

 ゆっくり腰をかけると、込み上げるものがどんどん出てくる。


「ミッションクリアだ!」


 私の素晴らしいストーリー計画。私ができることは成功した。


 ああ、大変だったな。主に……

 育の説とk……げふんげふん


 ろっくの誘導!


消耗した様子を見せて、ろっくを説得する——全て計画通り


 よかった……何とかなって。


 あとはろっくがうまく動いてくれること。


他のボスを倒し、私を倒しに来る。


 なかなかいいストーリーだろ?


 私は、しみじみと静まり返るボス部屋を見る。

 

 さっきまで、なかなかの戦闘をしていたのよね!

 

 そう満足していると後ろから冷たい視線を感じる。


 体を身震わせゆっくり振り返ると、 ホログラムの扉から半分体を出した育がこちらを睨んでいる。


「とっっっっても、大変だったんですからね!!!

 設定の追加に、構造に、その導入に!

 これで成功しなかったら……」


 あぁあぁすみませんでした変な頼み事して。


 とても感謝してます!ありがとう育!


――

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