第5話 『魔王城で在宅勤務。美女と修羅場になる前に、雇用契約書はどこや?』
新居・魔王城。見上げても天井が見えへんほどの吹き抜けに、マサトは思わず言う。
「広っ……住むとこ間違えたわ」
「ま、魔王城ですから……っ!」
耳まで真っ赤なアイリス。黒猫は尻尾バッサバッサ。
「まずベッドにゃ。ここは大事にゃ」
「お、おっ……!? で、でも一つだけですか……?」
「一つでええやろ? 広いんやし」
──沈黙。
アイリスは口をパクパクさせて、急に髪を耳にかけ直し、
「……夜、怖かったら……その……呼んでくださいね?」
黒猫「呼んだら噛むにゃ」
コメント欄:
《布団実況はまだですか?》
《早く密着しろ!》
《黒猫の牙はご褒美》
アイリスは慌てて話題を変える。
「洗面台! まず洗面台を見ましょう!」
「あ、せやな」
マサトが課金ボタンを押すと──
金貨が雨のように降り、魔道具が次々と具現化!
「キャーーーッ!? す、すごい……!」
「便利やろ? 札束で解決する世界最高や」
コメント欄も興奮の渦。
《金こそ力!》
《うちの生活保護と交換してくれ》
そのとき──
背後にすっ……と影が射した。
「はじめまして。マサト様ですよね?」
清楚な白ワンピ。
腰まで届く金髪。
甘い香りと同時に、営業スマイルの圧。
「私……リュミエールと申します。
配信、拝見しておりました。とっても素敵で……」
黒猫が毛を逆立てる。
「お嬢ちゃん、あんた誰にゃ」
「ふふっ。かわいい猫ちゃん♡」
──その瞬間、黒猫の目がサファイアから漆黒へ。
「(コイツ、やりよるにゃ……)」
リュミエールはマサトに密着するほど近づき、
唇だけで囁く。
「あなたの力、独占したいんです。
宣伝でも、案件でも……なんでも。
マサト様のために、すべて尽くしますから♡」
アイリスの笑顔が固まった。
背後に氷柱のオーラ。
「ま、マサト様……? その方は……だ、誰なんですか?」
コメント欄:
《修羅場ァァァ!!!》
《聖女、裏あるやろ絶対》
《この女、広告代理店の匂いする》
「えーと……誰なんやろ?」
マサトだけ状況が理解できていない。
だが、配信者視点では──最高の展開。
黒猫は小さく呟いた。
「始まったにゃ……争奪戦が」
次回:「清楚系ビッチ、炎上マーケティング開始♡」




