第1話 『社会保険、切られた。──おっさん、黒猫と配信したら即・報酬全借り──』
「マサト! 今日限りでクビや!」
ダンジョン奥で怒鳴られた。
理由? 知らん。ただのチュートリアルおじさんやし。
「お前みたいな雑魚、パーティーにいらんねん!」
「戦闘できへん奴の社会保険とか、重荷やん!」
──社会保険、切られた。
終わった。
現実でも異世界でも、保険って命より大事やん……?
と、その時。
【ピコンッ!】
突然、宙にウィンドウが現れた。
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★特異点チュートリアル終了★
【真の職業を解放します】
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「真の……職業?」
【転職:黒猫配信者】
「黒猫?? おっさんやぞ??」
次の瞬間、俺の腕の中に
ふわっふわの黒猫がテレポートしてきた。
「にゃぁ♡(※翻訳:あんた、救世主やで)」
脳内に音声が響く。
しかも近い。可愛い。
耳が死ぬ。
「おおっ!? 何やあれ!?」
「闇の眷属や! 殺せ!」
パーティー全員が剣を抜く。
こいつら、猫に何すんねん。
俺は黒猫を守るために立ちはだかった。
「待て! この子は──」
【配信開始】
【スキル:光るだけ魔法 発動】
俺が喋った瞬間、
ピカーッ!!!!
ダンジョンが照明完備のスタジオになった。
黒猫:
「にゃあ♡(※翻訳:カメラ入ったで)」
視界にコメントが流れる。
《うお黒猫可愛い!!》
《おっさん邪魔!!》
《スパチャ解禁まだ?》
スパチャ……?
【スキル:無限スパチャ解放】
《¥10,000》
《¥50,000》
《¥120,000》
ドバババババッ!!
金貨が雨のように降ってくる。
「な、なんやこれ!?!?」
敵の魔物が、
落ちてきた金貨に当たって爆散。
黒猫が解説してくれる。
「にゃ♡(※翻訳:札束は爆弾や)」
元パーティのダリウス達は真っ青。
「おま……何者や、マサト……」
俺は静かに言った。
「黒猫配信者や。社会保険も付く」
黒猫がプイっと尻尾を立てる。
「にゃぁ〜♡(※翻訳:配信続けよ。スパチャ止まらんわ)」
コメントがさらに加速する。
《黒猫撫でろ》
《おっさんの手だけ映ってて草》
《魔王退治して♡》
《帰るなよ?》
帰る……
いや、帰りたくない。
(黒猫可愛いし、金くるし)
なのに。
黒猫が俺の袖をくいっと引っ張る。
「にゃ♡(※翻訳:行こ。配信映えや)」
【緊急クエスト:迷宮魔王を倒せ】
魔王の咆哮が轟く。
「配信者マサト!! 覚悟!!」
よし。
俺は札束を一枚取り出して、
適当に投げた。
ドガァアアアァン!!!!!!
魔王、爆発。
所要時間、2秒。
視聴者のコメント:
《wwwwwww》
《金で全部解決やん!!》
《今日から推すわ》
《アンチ→信者化》
《社会保険、つよい》
黒猫が俺の肩に乗って、
ドヤ顔で言った(※可愛い)。
「にゃ♡(※翻訳:お前、今日から主役や)」
俺は気づいてしまった。
努力?
成長?
伏線?
そんなもんいらん。
スパチャと黒猫があれば、
全部どうでもええ。
「さぁ、世界救って帰ろか。
……でも美女来たら帰らん」
視聴者の脳内ドーパミンが、
爆増した音がした。
本日、一挙3話公開。




