第9話 少女の過去と異変の謎 Ⅱ
奏side
「……奏を呼ぶため?」
「僕?」
どういう事なのだろうか。
「話すと長くなるわ。」
1度レミリアに寄り添うフランに、レミリアは目を配らせた。
「このことはフランにも言ったことないわ。……けど、私が見た事実を伝えるわ。」
その言葉にフランは、布団を握りしめた。
……怪訝な顔をして、耳を傾ける。
「……わかったよ。」
そう言いながらレミリアは過去を語り出した。
「フランはね……」
「壊す力が、強すぎたの。」
あらゆるものを破壊する力。
物質だけじゃない。
結界も、因果も……運命さえも。
''本人が理解する前''に壊してしまう。
「でもね、それが暴発し始めたのは『狂気』が芽生え始めた頃だった。」
「フランの潜在的に持つ能力のひとつだったの。だけど、『狂気』なんて物の制御の仕方なんかわかるはずがなかった。」
「そして。ーー取り返しのつかない事が起きたの。」
「取り返しのつかない事……?」
レミリアは霊夢と魔理沙、僕に目を配らせる。
そしてひとつの疑問を投げかけた。
「ーーこの紅魔館。広さの割にメイドが1人しか居ないの。」
「……!」
「そうなんだぜ……広さの割にメイドは1人しか見かけなかった。」
「元々は沢山いたのよ。ーーーフランの力が暴発するまでは。」
「狂気がフランの中に現れ始めたすぐの頃だったわ。1度狂気に飲まれたフランは、悉くを破壊して行ったわ。家具、建物。…………そしてメイドたちもね。」
「全勢力を持って、フランを止めたの。
でも気がついたフランは何も覚えていなかった。」
フランの顔がさらに曇った。
握りしめる手が強くなる。
罪悪感に心を切り刻まれているようだった。
「大丈夫。」
僕は気づくと、フランの頭を撫でていた。
意識していた訳じゃない。
ーーーただ、受け止める責任があるからだ。
「それに気づいたの。
あれは''''感情''によって力が増幅される。」
「もうフランに何も傷付けて欲しくなかったし、その事実で傷ついて欲しくなかった。
だから、地下に閉じ込めたの。」
「……。」
誰も口を挟まない。
ーーーー否、挟めない。
レミリアは天井を仰ぎながら続ける。
「今考えると……馬鹿みたいな考え方だったわ。
やり方なんていくらでもあったかもしれないのに。」
「それでも私は、フランを1人にする選択をした。
……姉として失格ね。」
「そしてある時、この世界に来たの。
住む世界の環境が変わって、より狂気は力を増して言った。」
「だけどこの世界に来て、私の能力が見せてくれたの。狂気を壊せる存在がいることを。」
「だから異変を起こしたの。
ーー狂気を壊せる存在を。
フランを助けてくれる存在を。」
話終わったあと、部屋には沈黙が流れた。
「ごめ、なさい……。」
その沈黙の中、フランの掠れた声が落ちた。
涙を浮かべ、今にも泣き出しそうだった。
「……謝らなくていいわ。」
そう言いながら、レミリアは強く抱き締める。
ーー離さない。その意志が籠っていた。
「……私も、ごめんなさい。」
「今度は間違えない……絶対に。」
ーーしばらく、誰も言葉を発さなかった。
重たい空気が、部屋に残る。
フランはレミリアの胸に頭を埋めたまま、動かない。
「……なぁ」
その沈黙を魔理沙が破った。
「これ以上湿っぽくなると、
私まで泣きそうなんだぜ。」
霊夢が、呆れた目で見る。
「あんた、空気読みなさいよね」
「読んだ上で言ってんだよ」
魔理沙は肩をすくめて笑った。
「ここまで話して、全員生きてて、
異変も解決したんだ。」
「だったらさーー」
ぱん、と手を叩く
「宴会やろうぜ!」
「……は?」
「え?」
「はぁ!?」
「ふっ……」
3方向から呆れた声が飛ぶ。
思わず僕も笑ってしまった。
「いやいや、真面目な話だって!」
「今日は、もう終わっただろ!」
「こんなに広い場所があるんだ。使わなきゃ損だろう?」
「これ以上、私たちらしい結末あるか?」
霊夢は少し黙り込み、
やがて、ふぅと息を吐いた。
「まぁ……異変も収まったし、フランも無事だったし。」
「今日のところはここまでにしましょうか」
「よっしゃ!!決まりだな!」
魔理沙は満足そうに笑い、嬉しさを体全体で表してる。
レミリアは一瞬戸惑い、
それから、小さく微笑んだ。
「えぇ……」
「今夜だけフランを助けてくれた奏に免じて、特別に使わせてあげるわ。」
「……宴会?」
フランは、ゆっくりと顔をあげる。
「私……外に出ていいの……?」
「もちろんよ。」
レミリアは即答した。
これ以上不安にさせない為に。
「食って、飲んで、騒いで!」
「今日はそれだけで、いい日だ!!」
日が落ちた世界に、
湖の上の館から大きな笑い声が響いた。




