第6話 少女の狂気
奏side
里の人々の治療がある程度片付いて、少し休憩している頃だった。
「……!」
「……奏……!」
「うん…わかってる。」
ハウラも気付いたようだ。
(何かの大きな気配……)
それも人里の近く。方角で言ったら、ここから北西の方だ。
博麗の巫女の強さは知っている。
だがそれでも少し厳しいんじゃないかな。
「ハウラはここに残って里の人の様子を見てて。僕が向かうよ。」
「わかった!奏なら心配ないだろうけど、油断はダメだよ!」
「そりゃもちろんわかってるよ。すぐ終わらせてくるさ。」
僕はハウラにそう言い、気配のする方角へ向かっていった。
霊夢side
状況は苛烈を極めていた。
迫る弾幕の密度と破壊力が、桁違いだった。
「ッ!!!霊夢これはまずいんじゃないか!!!」
「わかってるわよッ!!!けど……!!!!」
決定打になる隙がない。
避けても避けても弾幕しか見えない。
しかもその弾幕があったった物は粉々に砕かれていたのを、視界の端で確認した。
フランの能力か、それともただ弾幕の威力が桁違いなだけか。今のフランの妖力を見ればどっちが正解か、なんてわかりゃしない!!
「アハハハハハハハハッ!!!!」
狂喜乱舞するフランの猛撃は止まらない。
魔理沙も私も、耐えているのが奇跡であった。
「じれったいのぜッ!!!恋符『マスタースパーク』!!!!」
そう聞こえたと同時に、魔理沙の八卦炉から極太のビームが放たれる。
マスタースパークが弾幕を消し去り、フランまでの通路が作られた。
(……ッ!!今……ッ!!)
3重の結界を張り、私はそこへ全速力で飛行する!!
3重と言えどこの弾幕の質量じゃ、持って5発!!
最速でフランへ向かう。
「魔理沙ッ!!、」
「わかってるんだぜッ!!」
魔理沙は対抗すべく、追尾型の弾幕を発射する。
フランが飛ばしてくる弾幕を少しでも削り、その隙に私が背後へ回る!
「アハッ!!!まだ足りないわッ!!!!」
だがフランもその行動は読んでいた。
炎の剣で、私に切りかかる。
「あッつ!!!!!!!」
ギリギリの所で交わすが、剣の熱気で喉が焼かれるように痛い。
これじゃあ、札は熱気で燃えてしまう。
やるなら私も弾幕で対抗するしかない。
「霊符『夢想封印』!!!」
スペルカードを発動したら、巨大な勾玉が4つ出現した。
その勾玉を、私はフランと魔法陣に向かって放つ!!!
「キャハッッ!!」
二つがフランの元へ向かうが、炎の剣によって両断される。
だが、1つは魔法陣の破壊に成功した。
禍々しい紫色の魔法陣はパリンっと砕け、光を反射する。
その少しの目眩しは、魔理沙のマスタースパークによってより大きな目眩しへと変わる!!
「キャアアアアアアアアッ!!!!!」
そのマスタースパークはフランへ直撃した。
3秒後、そのマスタースパークは止むが私は休憩の暇を与えない。
4つ出現した勾玉の内の1つは、私の手のひらで圧縮させている。
その勾玉が乗った掌底をフランの腹へとお見舞いしたッ!!!
「がぁッ!!!!!」
胃酸を散らしながらフランは吹き飛んでいき、館の屋根へと激突した。
「はぁ……っ、はぁ……っ!」
「かなりギリギリだったんだぜ……っ」
2人して息を切らしながら、フランを見据える。
動く気配はない。
「流石にもう起き上がらないでよね…っ。」
「…今のうちにフランのお姉ちゃんのところに言って、フランを何とかしてもらわないと……!!!」
魔理沙はそういい、姉の方へと向かって行く。
私もそれについて行かなく…………ちゃ……?
バギッ!!!!!!!!
私と魔理沙は一瞬で振り返った。
轟音と共に、館の一部が崩れていたのだ。
フランが立っていた。
「魔理沙……今さっきのマスタースパーク威力弱め過ぎたんじゃない?」
「そんなわけないのぜ、全力の全力だったのぜ……。」
「私も本気でやったわよ。……………なんで立ててんのよ……。」
それに先程とはまた雰囲気が違う。
狂気に飲まれていても自我は保てていたのであろうが、今回は自我がないとわかる。
狂気じみた笑顔すら消え去り、赫の瞳は虚空を見つめているようだった。
フランが体制を低く構える。
「魔理沙……来るわ………」
一瞬でフランは私との距離を詰める。
そしてお腹に一発。
「ッッ!!!!!!ッ」
「霊夢ッ!!!!」
声が出ず、されるがままに吹き飛ばされる。
先程のフランと同様に館の屋根へ激突した。
「…………ぁッ…………がッ……!!!!」
(息ッ!!!!……息がッ!!!)
鳩尾にモロに入り、内蔵が悲鳴を上げていた。
何とか霊力でお腹を覆い最小限に減らしたが、それでも20mは飛ばされてしまった。
(魔理沙……ッ!!)
ドゴーーンッッッ!!!!!!!
(ぇ……っ?)
地面が揺れると同時に魔理沙も、吹き飛ばされていた。…………ていうか動いていない……??
(……大丈夫ッ!!!気絶してるだけよっ!!……少しでも動ける私が何とかしないと……っ!!)
拳を握りしめ、体に力を込める。
だがその手をフランは問答無用で踏みつけてきた。
「ぅ゛ッ……!!!」
踏みつける力が段々と強くなってくる。
瓦に亀裂が走り、それが次々に伝染していく。
……死ぬの…………?
……私。
「大……じょう…………ぶっ!!!」
魔理沙ならこんな事で諦めない…………ッ!!!
私が少しでも隙を作って……ッ!!!
踏みつける足を退かそうと、フランに対抗し力を込める。…………少し……少しずつ!!
「ぁぁぁぁぁ゛ッ!!!」
今出せる渾身の力でフランの足を振り払った!!!
その隙にスペルカードを……ッ!!!
「ッ!!!」
上に視線を向けると、眼前に炎の剣が迫ってきていた。
(ぁ…………)
振り下ろされた剣は私の顔面を、焦がし……両断し………灰へと還元され…………。
「ストップ。」
……………………なかった。
張り詰めた空気を崩すような、少し明るめの青年の声が間に割って入ったのだった。
「…………ぇ……?」
「ごめんよ、少し遅くなって。」
(どうやってここに…………ていうか剣を…………っ)
高熱を放つ炎の剣。一瞬で手を溶解してもおかしくない物を、青年は何事もなく掴んでいた。
「傷が痛むだろう?……これっ」
片手でポイッと投げられたのは……飴玉……?
「僕特製の飴玉。食べたら傷もすぐ治るさ。」
「あ……あの……。」
「自己紹介とかは後で!今はこの子を何とかしないとね。」
そーれっ!という掛け声と同時に、青年は炎の剣を掴み、フランごと振り回す。
そのまま手を離し放物線を描きながら、館を超え奥の森にフランは飛んで行った。
「もう大丈夫だよ。頑張ったね。」
もう大丈夫……という言葉に体の奥が燃えるように熱くなった。そして込み上げてくる涙。
死を悟ったからなのだろうか……。
もう何も分からないけど。今はただ自然に涙が溢れてきた。
「えっ!ごめん!!なんで泣くのさ!!」
青年は困惑しながらも、涙を指で拭ってくれた。
「隣の友人…?も治療はしておいた。今は気絶してるだけだよ。……一先ず、あの子をお仕置してくる。」
青年はそういうと、フランの方へ飛んで行った。




