肉食系
見習いキューピットのフィニーとミケは、今日も今日とて地上観察の実習中だった。今回のターゲットは、サファリパークの飼育員、通称「レオキラー」こと肉食系男子の健太と、見習い実習のラムちゃん。健太は飼育す一頭の獰猛なライオン、レオのお世話中。
「フィニー、見て。あの健太さん、またレオに威嚇されてる。今日の威嚇、ちょっと気合入ってない?」
「ミケ、気のせいだよ。ライオンの威嚇なんて、毎日あんなもんだ。それより、私たちが放つ最高の矢で、健太君とラムちゃんの心を繋ぐんだ。今度こそ完璧に成功させるから、見ててね!」
フィニーが弓を構え、心を込めて狙いを定めた。ミケは矢に「運命の絆」と書かれた魔法の粉を振りかける。しかし、またしてもハプニングが起こる。フィニーがくしゃみをした拍子に、ミケが放とうとしていた矢を誤って弾いてしまったのだ。矢は勢いよく弧を描き、ラムちゃんを避けて健太が持っていたエサの肉に突き刺さる。
「ガオッ!」
エサの肉から漂う、どこか甘く、懐かしい香りに、健太は首を傾げた。それは、まるでライオンが愛する肉の味とは違う、繊細な香りだった。ライオンのレオは、その香りに誘われるように、健太に駆け寄り、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。
「…レオ、どうした?なんか、今日の肉、いつもと違う匂いがする…って、あ、おい!噛むな!おい、甘噛みするな!」
健太の腕に、レオが甘噛みをする。レオの歯は鋭いが、決して本気で噛みついているわけではない。その絶妙な加減に、健太は悶絶した。
「あああ!痛い痛い!甘噛みっていうか、痛いって!お前、俺の腕をスティックパンか何かだと思ってるだろ!やめろって!」
「ガオ…(ごめん、でもこの腕、すごくいい匂いがするんだもん)」
レオは、健太の腕を離すと、今度は彼の顔を舐め始めた。
「おい、やめろって!俺の顔を舐めるな!お前、肉食獣だろ!俺はエサじゃねえよ?」
「ガオガオ…(いや、あなたのお顔は、とてもおいしそうな味がするわ)」
健太は、レオの甘噛みと舐めに耐えながら、心の中で叫んだ。
(なんなんだ、このライオンは!俺は、肉食系男子として、肉食獣を飼育してるのに、なぜか肉食獣に甘噛みされる側になってるんだ!)
フィニーとミケは、空の上からその様子を見て、顔を見合わせた。
「…今回は、猛獣に甘噛みされる肉食系男子っていう、新しいジャンルが生まれたね」
「うん…でも、お互いに足りないものを補い合って、素敵なカップルになった」
二人がそう言って、穏やかな気持ちで空を見上げていると、再び巨大な雷鳴が轟いた。二人の上司である雷キューピットが、雷雲に乗って現れたのだ。
「お前たち!また余計なことをしてくれたな!今度は何だ!」
「ええと…さすがに報告書にどう書けばいいのかな…」
こうして、見習いキューピットたちのドジは、今日も世界に少しばかりのカオスと、そして予想外の幸せを振りまいているのだった。彼らのもたらす恋の結末は、いつもとんでもないことばかり。だが、それで幸せになるカップルがいる限り、彼らの「ドジ」もまた、一つの愛の形なのかもしれない。




