第23話 巫女と鬼ごっこと、最後の一人がホラーすぎた件
「……どうして? また私からいなくなるの?」
花ちゃんの突如の変貌。
明らかに辺りの空気が冷たくなり、背筋がゾクッと寒くなった。
さすが有名な幽霊なだけある。
貫禄が超半端ない。
それは見ている視聴者にも伝わっているのだろう。
さっきからコメントもピタリと止んでいる。
「い、一旦、落ち着こう。ね?」
「うるさい!」
目を剥き出しにして、今にも襲ってきそうな雰囲気の花ちゃん。
チラリと視線を送ると、稲荷様はまだ健気にルーナを探している。
助けて、稲荷様。お願いだから、こっちに気付いて。
「また帰っちゃったんだ。もういやだよ! 私を置いて帰らないでよ……」
今度はぽろぽろと涙を浮かべ始める花ちゃん。
有名な幽霊であっても子供だ。
子供のように感情がコロッと変わる。
置いて帰らないで。
花ちゃんの悲痛な言葉。
おそらく、学校に肝試しに来て、花ちゃんに追いかけられた子供たちのことを言っているのだろう。
子供たちは花ちゃんを見て、怖くて逃げた。
子供たちにしてみれば当然だ。
幽霊を前に、友達として遊べる子供なんてほとんどいない。
だが、花ちゃんはそれを置いていかれたと思い込んでいる。
友達ができたと思って、その友達に置いて帰られてしまう。
それはもう、イジメにさえ、思えてくるんじゃないだろうか。
このままだと、花ちゃんはずっと孤独なままだ。
ずっと、一人でトイレで来ることのない人を、来たとしてもすぐにいなくなってしまう人を待ち続けることになる。
そんなのはあまりにも酷い。
成仏してもらって、あっちでお姉さんと友達になってほしい。
それにはまずルーナを、花ちゃんに見つけなけてもらわねばならない。
置いて行かれたんじゃないって気付いてもらう必要がある。
なのに、あいつはどこに行ったんだ?
空気の読めないやつめ……って、あ!
ルーナが隠れる前に走っていった方向を思い出す。
そうだった。
あいつはこの教室じゃない方へ走って行った。
ここにいるはずがない。
くそ、なんでもっと早く気付かなかったんだ。
ホント、間抜けだな、俺は。
「花ちゃん。理科室まだ探してないぞ」
「え?」
涙をポロポロと流している花ちゃんの手を握り、すぐに理科室へと向かう。
ドアを開けて部屋の中を見渡す。
変な人体模型がある以外は、変わったところはない。
が、絶対にここにいるはずだ。
「稲荷様はカーテンの裏を、花ちゃんは机の下を探してくれ」
「はい!」
「わかった!」
俺は教壇の下をのぞき込む。
が、いない。
戸棚の中か?
一つ一つ開けてみるがいない。
『いた。動く人体模型だ』『ベートーベンの目が光った』『二宮金次郎像が歩いてるぞ!』
そんな冷やかしのコメントばかりが流れてくる。
……だめだ。
視聴者は役に立ちそうにない。
やはり自力で見つけるしかなさそうだ。
「ふふふ。無理無理。見つけることなんてできないよ」
そのとき、ルーナの声が響き渡った。
……やっぱりここ、理科室にいたか。
「うう……。絶対、見つけてやるんだから!」
花ちゃんがムキになって叫ぶ。
あくまで花ちゃんはルーナを見つけたいようだ。
なら、出て来いとは言えない。
なんとか自力で見つけるしかないか。
15分かけて探すが、やはりいない。
だが、声がするから、近くにいるはずだ。
「……忍法、隠れ身の術。貴様らなんぞに見破れるわけがない」
あいつ、なんで忍術だけ上達していくんだ。
巫女の力を磨けよ。
「花ちゃん、稲荷様! 壁を調べてくれ」
2人は頷いて、壁を触りながら、探していく。
「くはははは! ムダムダムダァ! 我が透遁の術は異世界一ィ!」
さっきと術が変わってんじゃねーかよ。
透遁って、透けるってことか?
そんなのかくれんぼだとチート能力だろ。
「おい、いくら何でも透明になるのは卑怯だぞ、ルーナ!」
「黙れ小僧! お前に花ちゃんの不幸が癒せるのか?」
「お前が邪魔してんだよ!」
くそ、絶対に見つけて、吠え面かかせてやる!
だが、落ち着け。
相手はルーナだぞ。
あいつが高度な術なんて使えるわけがねえ。
どうせハッタリだ。
そして、俺は理科室の奥にあるドアが目に入った。
理科準備室。
そうか。
あいつ、理科室にいると見せかけて、準備室にいるな!?
そんな小細工、俺に通用すると思うなよ!
俺は勢いよく準備室のドアを開く。
「……なん、だと?」
いない。そんな馬鹿な。
見渡してみても、隠れるような場所はない。
現に人体模型が置いてあるだけで手狭になっている。
……ん? 人体模型?
なんで、ここに……?
「あっ!」
俺は理科室に戻り、人体模型を見る。
そこには半分透明になったルーナが立っていたのだった。




