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異世界巫女はVtuberになりました。~除霊で登録者100万人目指します~  作者: 鍵谷端哉


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第17話 巫女と稲荷寿司と、視線の先の違和感

「私は豊穣の神なんです!」


 手を腰に当て、自信満々で言い放つ稲荷。

 

「へー。そうなんだ。で?」

「だから大丈夫なんです!」


 ……全然大丈夫じゃなかった。

 それ、ただの楽観主義なだけじゃないのか?


 なんて、そもそも稲荷のような小さいお子様に頼ろうなんてしてる時点でダメだろ。

 ここは自分の力でなんとかするしかない。


「ルーナ。最悪、お前にもバイトとかしてもらうからな」

「働きたくないでござる」

「……ほほう」


 俺はルーナの頬を引っ張る。


「今日から外で寝るか?」

「ふびばせんれした(すみませんでした)」


 反省の色が微塵もしない表情で言い放つルーナ。


 とはいえ、住民票どころか戸籍もないルーナが採用されるとは思えない。

 宅配バイトとかさせるか?


 ……ダメだな。

 平気で客の食べ物を食いそうだ。


 なら単発のバイトは……。

 絶対に途中で逃げ出しそうだな。

 いや、そもそも現場に行くことさえしなさそうだ。


 うーむ。どうするかな。

 

 ……うう。

 全然いいアイディアが出ない。


「まあいい。この件は一旦、保留だ。バイトに行ってくる」

「行ってらっしゃーい」


 ……ルーナ、その手の振り方だと、シッシッってやっているように見えるぞ。


 まったく。

 少しは労われっつーの。


 ドアを開けようとしたとき、視線の端で、稲荷が一人でお祓い棒を振り回しながら「福よ、来てください」と叫んでいるのが見えた。

 なんか心配だ。

 しぐさ的には可愛いんだけども。


 ぐぅ、と腹が鳴る。


 ああ、それにしても腹減った。



 ***



「むふふふ。今日は売り上げが跳ねるわよ〜ん♪」


 コンビニの事務所に入ると、店長が妙にテンション高く、腰をくねくねさせながら近寄ってきた。


 ……青髭ゴリマッチョがその口調だとホラーなんだよな。

 そりゃ新人も逃げるよ。

 俺でさえ、まだ怖いもの。


「新人君! 見てごらんなさい!」


 新人って。

 バイトを始めてもう1年になるんだけどなぁ。


「こ、れ、よ、これ!」


 目の前にスマホの画面を突き付けられる。

 そのスマホにはSNSが開かれていた。

 そこに店長が投稿した文章が載っている。


「……発注ミスしました。助けてください?」

「これでバンバン売れるって寸法よ!」


 ……ひと昔に流行ったなぁ。

 てか、定期的にそういうの見る気がする。


 なんていうか、本当に間違ったならいいと思うけど(よくない)、意図的にやるのはどうかなぁって思うんだよな。

 人の好意につけこむっていうか。

 あんま好きじゃない方法だ。


「けど、なんでいなり寿司なんですか? もっとメジャーなものにすればよかったのに」

「頭の中に子供の声が響いたの♪ きっと神のお告げだわ」

 

 ……それ、絶対、受信したらヤバい電波だと思いますけど。


 まあいいや。

 さっと着替えて店内に出るとするか。


「先輩、おはようございます」


 店内に入り、俺が「いらっしゃいませ」と言う前に挨拶されてしまった。


「おはよう、如月さん」

「もう、つむぎでいいですってば」

「如月さんこそ、先輩はやめてくれ。同い年なんだし」

「でも、ここでは先輩です」


 如月つむぎさん。

 人懐っこさと可愛らしさ、そして清楚な感じがする女の子だ。

 なんていうか、正統派ヒロインって感じ。


 そんないつも通りのやりとりをしていると、ちょうど、お客さんが入ってきたので対応していく。

 出勤した直後は割と忙しいが、22時半くらいになると落ち着いてくる。


「俺、品出しするよ」

「私は清掃に入りますね」


 ニコリと愛想のいい笑みを浮かべてバックヤードに入って行く。


 気が利いて接客も完璧。

 彼女のファンは多く、彼女目当てでこのコンビニに通う客もいる。


 まあ、そりゃそうだよなって感じだ。

 ただ、本人は気付いていないようだが。


「さてと。今日の売れ行きはどうかな?」


 補充するために棚を確認していく。

 すると――。 


「……」


 外に、全身黒ずくめでヘルメット姿の人物が立っている。

 この怪しい人物もそんなファンの一人。

 いつも、外から見ているだけで、店内に入ってこない。

 で、30分もするといなくなる。

 ヘルメット越しには顔が見えないので、どんな奴かもわからない。

 ストーカーの類ではないとは思うけど……何が目的なんだ?

 

 こいつを見ていると何だか背筋が寒くなる。

 いかん。無視だ無視。


 ――そして深夜1時半が過ぎた頃。


「どーしてよぉ!」


 バックヤードから店長が泣きながら出てきた。


「どうしたんです?」

「これ、見てよぉ!」


 SNSの画面を見せられる。


 『詐欺乙』『犯罪行為ですよ』『割引なしとかw』『手口古っ』

 などと、書き込まれ炎上している。


 棚をチラリと見ると、店長が大量に入荷したいなり寿司は確かに一個も売れてない。


「……本部から評判に響くから撤去しろって」

「そ、そうですか」

「うう……。新人君。ごめん、これ持って帰ってくれないかしら?」


 店長の、その何気ない一言は、俺にとってまるで神からの救いの言葉のように聞こえた。


「っ!? いいんですか!?」

「大量廃棄したら、それはそれで本部から文句が来るのよね」

「食べ物かくほーーーーー!」


 こうして俺は大量にいなり寿司をゲットした。


 ん? あれ?


 もしかして。

 神のお告げって……。

 いや、まさかな。 

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