表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第一話 召喚

この小説における天界・魔界・人間界の定義について


天界:いわゆるキリスト教やユダヤ教の神が治める世界。この小説ではこの神を奉じる宗教は『十字教』として一つに纏めています。

魔界:一神教の神に貶められた他の多くの神や堕天使の治める世界。彼らのことを総称して悪魔と呼びます。

人間界:無数に存在する人の住む世界の総称。この小説では人間界は一つだけのように思えますが、本当はいくつもある『世界』の一つだと考えてください。(地球も並行世界に存在します)

 終わらない。

 終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない終わらない・・・・・だぁっ

「いつ無くなるんだこの書類の山はっ!」


 思わず頭を抱えて天を仰ぐ俺。頭を急に上げたことによって生じた風圧がそこらの書類を舞い上げる。そしてそうしている間にも増える書類。

 まじ無理。ほんと勘弁。俺が処理するスピードより運び込まれてくる方が早いってどういうことだよ。



 現在、俺を含む魔界の地位ある悪魔達は大変忙しい。

 今まで天界とのいつ終わるやも知れない大戦を繰り広げていた俺達だが、このたび停戦協定が結ばれたのである。

 無論、それでも天界との仲は最悪と言ってよく、交流どころかテロや反・反戦運動(戦争やれという運動)を抑えるのがせいいっぱいだが、天界・魔界共に現在軍縮を行っていてそこそこ順調だ。

 簡単に言うと停戦協定の内容は次の通りだ。


・双方はお互いの領土、領民に攻撃を仕掛けない

・双方人間界に不要な干渉をしない(例:夢のお告げなど)

・悪魔は人間の召喚に応じない

・神や天使は人間の祈りに報いない


 まあ要するに天界・魔界・人間界で干渉せずにしようってことだ。魔界には不満を言う大悪魔も大勢居るが、俺はいいかなと思ってる。今まで戦争、戦争、また戦争だったし、停戦協定がいつまでも続くなんてのがありえないって分かるからこそ、つかの間の休息を味わってみたいんだ。




 まあ、その結果が冒頭の書類の山な訳だが。


 というかこれ明らかに俺の分以外のも混ざってるだろ…俺の軍の再編成はとっくに終わったし、切った連中への辞令も出したぞ…


「おいそこの。これはどこの部隊の書類だ?」


 今さっき俺の机に書類の山をひとつ追加した文官に問いただしてみる。


「アンドラス様のですが」

「返して来い」

 あとでぶっ殺す。


「いえあの、すいません、もって帰ってきたら殺すって言われていまして…」

 部下を何だと思ってやがるんだあの野郎。


「どうすっかな・・・」

 ともかく俺だけでこれを処理するのは無理だ。よく見たらアンドラスのだけじゃなくてベリスとかヴォラクのも混ざってるし。気晴らしもかねて書類仕事のできる知り合いに応援を頼みに行こう。


 俺は人間の姿から本来の姿である翼ある狼になり、書類の一部を入れたトランクケースをくわえて外へ出た。

 まずはストラスのところに行くかな。



 「ストラスーちょっと頼みたいことが…」

 執務室の扉を開けたら部屋が紙で埋まっていた。

 扉を開けたら廊下まで書類がズザーッと流れてきた。

 ・・・シャレにならねぇ

 俺のところはむしろ手加減されていたのかもしれないと思ってしまうほどひどい有様だ。やはりというか博識で有名なストラスの所にもしわ寄せがいったらしい。

 まあ実戦武官である俺のところにも来てるんだから当たり前だよなーはは。


「ス、ストラス。生きてるか?おーい」

「マ・・・マルコキアスか・・・俺はもうだめかも知れん・・・形見にこの宝石をうけとっt」

「衛生兵ー!衛生兵ー!」


 無理だ。ストラスには頼めねえ。俺には死人に鞭打つような鬼畜な真似はできない。まあ、とりあえず癒しの魔法が使えるブエルを呼んでおいたから大丈夫だろう。


 あんまり迷惑かけたくないけどゴモリー先輩の所にも行ってみようかな・・・あ、やっぱ止めとこう。あの人はお人よしの上に世話焼きだから俺が行くまでも無く書類を押し付けられているに決まってる。


 ゴモリー先輩は俺の元上司だ。昔からなにかと世話を焼いてくれて、俺は今でも尊敬している。ついでに言うとものすごい美人だ。

 先輩に会うたびに俺って幸せ者だよなーって思えるんだぜ。



 他にも色々な知り合いを当たってみたが結局全部空振りだった。俺や先輩に書類を押し付けた奴は後で調べ上げて家を爆撃してやろうと思う。

 

 「泣いて謝っても許さんぞ・・・げへへ・・・」


 爆撃予定の連中の泣きっ面を想像しながら半分空ろになった顔で俺は残った書類を片付けていく。とりあえず後はサインするだけという書類を重点的に減らしていこう。現実の仕事量は変わらなくても視覚的に書類が早く減っていくから楽なんだ。もうほとんど頭なんか使ってないぜ・・・



 片っ端から書類にサインしている俺は、他とは異なる内容の書類にサインをしてしまったことに直ぐには気がつかなかった。

 ちょうどサインし終わった時、斜め読みした内容が目に入ってくる。


  ・・召喚・・・・生贄・・・対価に・・・・力を貸し・・・


「あれ?」


 これって召喚要請の書類じゃね?

 たしか停戦協定が結ばれた時から人事部に全部回されて自動的に拒否されるようになったはずじゃ… 俺の目がおかしくなったのかもしれないのでその書類をよく読んでみる。



 召喚要請 創生暦137億3247万8千2百7十5年 10月8日   *持ち出し禁止


 宛先:ソロモン72柱序列35位 マルコキアス様


 本文:~前略(邪神に対する美辞麗句とか季節の挨拶)


    ~中略(姫巫女がどう生贄として優れていてそれを手に入れるためにどんな苦労をしたかとか)


    神聖王国サークレアの姫巫女を対価として差し出しますのでどうか力をお貸しください(要約)


                        邪神を支援する会:グレスヴォルグ山脈支部より


  


・・・・・・・・・・・・


 やっちまったorz


 いやこれ俺のせいか?俺のせいなのか?紛らわしいにもほどがあるだろ!人事の連中は何やってんだよ!

 

 しかし一度承諾してしまった契約はたとえ魔王でも覆せない。俺はそのままなすすべなく人間界に召喚されてしまった。



 でもこれで書類地獄から逃れられるなーとちょっぴり思ったのは秘密だ。

 もしくは現実逃避だ。ハハハ・・・(泣)



 マルコキアス:ソロモン75柱序列35位魔界の侯爵。

本来の姿は翼を持つ狼で、人の姿を取っているときは強力な剣士であり、真面目で誠実な態度で召喚者に接するという。

ただしそれに対して不誠実な態度をとったり、嘘をついてそれがマルコキアスにばれれば八つ裂きにされる。

 元はゴモリーの騎獣兼副官だったが、ミカエル軍に多大な被害を与えた戦功で昇進した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ