プロローグ
この小説に登場する悪魔の設定はネット上で調べた記述が元になっていますが、作者個人の解釈や構造が含まれます。ご了承ください。
「助けて…誰か助けて!」
魔境と呼ばれるグレスヴォルグ山脈の奥深く、深い木々の間に存在する隠された邪教の神殿で一人の美しい娘が生贄に捧げられようとしていた。
その娘は黒ずんだ醜悪な祭壇に両手両足を拘束された上に魔封じの首輪がはめられていて、その周囲を黒いローブをまとった邪教徒たちが何十にも取り囲んでいる。
「助けを呼んでも無駄だ、サークレアの姫巫女よ。お前はここで我らが奉ずる神に仕える魔を呼び出すための贄となる。
お前の持つ純潔と高貴な血、それに膨大な魔力は強力な悪魔を我らの元に呼び出してくれるだろう」
邪教徒たちが邪神に捧げるおぞましい呪文が広間に響き渡る。哀れな姫巫女の前に立つ邪教の司祭は蛇が這うような彫刻が施された短剣を手の中で弄びながら、呪文の完成を心待ちにしている。
不意に神殿の門の方角が騒がしくなり、門を破らんとする丸太をたたきつける音、矢に倒れる兵士達の悲鳴が広間に届いた。
「何事だ!」
「サークレア聖騎士団の襲撃です!」
ところどころに傷を負い、狼狽した様子の兵士が広間に飛び込んできて司祭に叫んだ。
「この場所まで無理やり進軍してきたようです。本来の数より多少目減りしているようですが、とても持ちません!早く避難を!」
しかし司祭はもちろん広間にたたずむどの邪教徒も身じろぎひとつせず、呪文の中断もしなかった。
「はは、召喚までもてば何の問題もない。そうすれば我らが呼び出した厄災の魔獣が、奴ら聖騎士団を引き裂き、忌々しい神聖王国サークレアの民も貴族も王族も、まとめて皆殺しにしてくれよう!」
「いやよ!そんなことさせない! 私はここよ!」
呪文の狭間に司祭の哄笑が響く。しかし姫巫女の助けを呼ぶ声は姫を求める聖騎士の耳に確かに届いた。剣戟の音は怒涛の勢いで儀式の広間に迫る。
そして広間の扉が蹴破られ、聖騎士達が弓を構えるのと、召喚の呪文が完成したのはほぼ同時だった。
「頭の腐った邪教徒共!我らの姫を返せ!」
怒りに燃えた団長の怒号に合わせ、聖騎士たちが弓を引き絞る。しかし、そこに横たわった姫の姿に彼らは一瞬躊躇してしまった。
その一瞬が命取りになった。
「ソロモン72柱の序列35位、凍てつく炎の狼よ!生贄の体、心、魂の全てを食らい、我が呼びかけに応えよ!」
司祭の振り下ろした短剣は巫女姫の心臓を深々と貫き、それと同時にいくつもの矢が司祭へと放たれた。
「姫!」
「姫様!」
すぐさま聖騎士たちは姫巫女に駆け寄ったが、そこには既に姫の姿は無くなっていた。
・・・生贄に捧げられたものは、肉のひとかけら、血の一滴にいたるまで呼び出したものに食われ、取り込まれる。そしてそれは召喚の成立の証でもある。
「なんということだ・・・皆、離れろ!」
祭壇の下に書き込まれた召喚の魔方陣が淡く光り、その場に魔を呼び出した。
完結できるようにがんばりたいと思います。よければお付き合いください。