まさかのまさかだったようです
その後が大変だった。
天涯孤独になった私と結城は、親戚に引き取られたけど冷遇されていたんだ。
だから私達は高校を他県にして、寮生活しながらアルバイトしつつ自立を目指した。
高校卒業後、結城はイケメン声優として大ブレイク。
私は弟の活躍見ながら喪女生活。
けど半年前、弟が収録スタジオに移動中、玉突き事故に巻き込まれてマネージャー諸とも亡くなってしまう。
葬儀を済ませてから、本当に一人ぼっちになった私は泣いた。
泣いても現実は変わらない。
だから仕事に打ち込んでいたんだけど。
……パパ?
「ん?」
私が聞くと、アールナーヴァさんはニッコリ笑った。
「サクッと済ませるからね」
笑ってアールナーヴァさんは、魔方陣を前方に展開させる。
「我、求めし風の鋭利なる刃。我に塞がりし愚か者を凪払え。ウィンドウカッター」
アールナーヴァさんが詠唱すると、魔法陣から風のナイフが無数に出現した。
「グギャアアアッ!!」
風のナイフによって切り刻まれたワイバーンは、断末魔を上げて頭部、胴体、尻尾、足に別れ地面に落ちる。
「ワイバーンって美味しいんだよ。いや~魔法って包丁要らずで便利だよね」
笑ってアールナーヴァさんは言うと、手際よくワイバーンの部位ごとに異空間に収納していく。
……パパ?どう言う事?説明求む。
「いや、パパにも分からないんだよね。気付いたら何もない空間に居てさ。殺風景だから魔法で神殿に改装してみたんだ。そしたら赤ちゃんになった雛菊が現れたんだよ」
アールナーヴァさん……パパは苦笑して言うとポリポリ頬を掻いた。
……神殿にしたのは何で?
「結城がハマっていたゲームかな?ダンジョンって神殿多いから神殿の方が良いかなと思ってね」
パパは笑って答えた。
見た目はエルフ、だが中身がパパ。
締まりのない現実に私は思わず遠い目をする。
「孤児院に行こうか、シスターも知り合いだからきっと雛菊はびっくりするよ」
……また知り合い……
嬉しそうなパパに連れられ私は目を丸くした。