アールナーヴァさんと森散歩
アールナーヴァさん曰く、この世界はインターンって言う世界みたい。
剣と魔法の世界で、人間の国々と魔族の国が対立してる世界なんだそう。
うん、さっぱりわかんねえ。
弟なら好きそうな世界かも。
アールナーヴァさんは言う。
魔族は自然を大事にしてるけど、人間は違う。
森を切り開き、海を荒らして私利私欲なんだって。
だから、魔族と対立するみたい。
私達が居る森カタナー大森林は、厄災級の魔物が出るんだって。
自然に生きる魔力持つ獣は魔物、ダンジョンで産み出された物はモンスターと言うみたい。
アールナーヴァさんは暫くして、大きな岩の前で立ち止まった。
「実は、森に小さな孤児院がありまして……種族関係無く一人のシスターが世話をして暮らしているのですが、最近になって何処からか流れてきたドラゴンに悩まされているみたいです。まぁ、ドラゴンと言っても意志疎通も出来ないドラゴンの紛い物なんですがね」
苦笑してアールナーヴァさんは教えてくれた。
……意志疎通出来ないドラゴンもどき……
ドラゴリオン!?
「違います、ドラゴリオンって種族居ません。ワイバーンです。……おや、噂をすれば……」
苦笑いしてアールナーヴァさんは答えると、急に立ち止まる。
翼を持つ巨大なトカゲが目の前に現れた。
場所は森が切り開かれた広場。
「まぁ、テンプレ的な展開だと、RPGの中級ボスくらいなんですがねぇ。結城はゲーマーだったから見たら大興奮ですね」
苦笑いしてアールナーヴァさんはポツリ。
……ん?なんでアールナーヴァさん結城の事を知ってるの?
私は思わず目が点になる。
「じゃあサクッと行きますよ」
アールナーヴァさんの姿が、私と結城が小学一年生の頃、通り魔事件で殺された父と重なって見えた。
そう、私達兄弟は父と兄達を通り魔事件で亡くしている。
芸能人の俳優として活躍している父は、年の離れたアイドルやモデルとして活躍していた兄達の手助けも借りて、母を病気で亡くした幼い私と結城を育てくれた。
父も兄達もスパダリで、笑顔絶えない家庭だったのに。
休日、近くのファミレスに向かうため駐車場から通りに出た時。
「うおおお!!皆、ぶっ殺してやる!!」
叫んだ犯人が突っ込んできた。
「結城!!雛菊!!危ないっ!!」
「何するんですか!?」
「取り抑えろっ!!」
「暴れんなっ!!」
パパの声と、お兄ちゃん達の声。
気付いたら、犯人は返り血を浴びて立っていて四人は動かなくなっていた。
「姉ちゃん!!見るなっ!!」
結城は私の目を塞いでいて、何が起きたか理解できなかった。