悩みの種
菊ちゃんの孤児院に私とパパは、ワイバーンの肉炒めをお裾分けに行った。
「あらあらあら、ワイバーンの肉炒めありがとう。とても助かるわ!!狩りしたくても深く森まで入れなくて困って居たのよ。一応、私のランクはZランクなんだけど……森は今ちょっと厄介なのよね……」
菊ちゃんは受け取って礼を言うと、困った顔をする。
「森の奥が厄介なのかい?もしかしてスタンピートとか?」
気になったパパは菊ちゃんに尋ねた。
「……えぇ、実はツリーフォークの群が発生しているの。ツリーフォークの中でも上位種ツリーフォークキングが現れたみたいでね。単体程度なら私も一人で楽勝なんだけど、ツリーフォークの群が100体以上居るからちょっと私でも厳しいのよ。しかも、ツリーフォークキングは物理も魔法も使って来て厄介で……。駆除しようとして30体倒すのが限界だったわ」
菊ちゃんは溜め息まじりに答えた。
……それでも30体倒すなんて……流石は菊ちゃん!!
私は思わず生唾を呑み込む。
ガタンガタンッゴトンゴトンッ
「この音は?」
「……あぁ、私が倒したツリーフォークの解体を年長の子供達が解体しているのよ。ツリーフォークの素材って使い勝手良くてBBQの炭火にしたり、暖を取る焚き火用にも出きるしね。冒険者用の防具にも出来るわ。火に弱いけど、強度もあるわね」
パパが聞くと、菊ちゃんは教えてくれた。
「ふむ、汎用性に優れているんだね。雛、どうする?」
『ふっ、BBQのクイーンと呼ばれた私にそれを聞くかね?大人になった私は一人キャンプにハマったのだよ。まぁ、パパ達ともキャンプしていたし、ハマるのは自然の道理だけどね』
パパと私はハードボイルドな顔をして笑みを浮かべる。
「一人キャンプはあまり嬉しくないけど、ハマるとは流石は我が娘。……それで?どうするんだい?」
『可能ならば、討伐したいと思うのだよ』
「奇遇だね、パパも同じだよ」
パパと私の心はいつも一つ!!
……うーん、赤ちゃん語にしか聞こえないけど、私も長年の付き合いだからか手に取るように分かるわね。
……思い出すわ、スーパーの特売で主婦達が戦争並みに激しく大乱闘する中を……。
雛ちゃんを肩車して、ダサい私服を着た人気俳優、葉山秋人が果敢に主婦の群に突っ込んで行くんだもの。
秋人は主婦に殴られながらも、目当てのバラ肉ゲットするし、雛ちゃんはお鍋の蓋でおばちゃん達のパンチを受け流すわで。
見ていた私は思わず口を開けたわね。
そうね、雛ちゃん見てると亡くなった朱雀さんを思い出すわ。
あの子も、人気女優だったのに結婚と同時に芸能界引退して五人の子を儲けたもの。
亡くなる前日に見舞いに行った時なんて、朱雀さん幸せそうに笑って居たわ。
『私が居なくなって、家族にどんな困難があったとしても、引き裂かれた絆はまた一つになると私は信じているの。私は病気で死ぬだろうけど、遺した家族の可能性を信じているのよ』
……偶然かしら?あの子は最後に言ってたわね。
まるで予言していたみたいに……。
そこで、菊ちゃんことアルティアナは現実に意識を戻した。
「BBQと聞いて何もしない葉山家じゃないよね!!」
『菊ちゃん!!勿論私達もやるわよ!!』
「……雛ちゃんは赤ちゃんでしょ?私達ならともかく……」
『ダンジョンマスターはオールマイティーだから大丈夫!!』
「……分かったわ、いくら言っても駄目ね。それでは行きましょうか」
私は菊ちゃんを説得して、ついにツリーフォークの群討伐に向かうのだった。




