奇妙な二人組
「せんぱーいっ。本国の観測器からなんか連絡きました?」
小柄な少女がすぐ目の前で背を向けている男に話しかける。
男は椅子に座っているが、立っている少女と高さがほとんど変わらない。
「いや、来てないな。もう3日は来ていないか」
かなりの長身であろう男は少女に落ち着いた声で語りかける。とても低い、抑揚のない、だがゆっくりと聞きやすい声。そんな男とは真逆に、頭のてっぺんのほうから声がでているのではないかと思うような甲高い声で少女が語気を強めに早口でまくし立てる。
「え~、あたしたちいつまでここにいればいいんですか~ いいかげん早く帰りたいんですけど~! 待ってるみんなだってあたしに会いたいだろうし~ ねぇ~ 聞いてます~!?」
小柄で赤髪の少女は噛みつくような声で座っている男にがなり立てる。どうやら仕事の進捗状況が芳しくないらしい。傍から見てもイラついているのがわかる。
「ねぇ~!! せんぱ~い!! キースせんぱいってば~!!」
「少しだまれ」
周りにいた人々が一斉に二人のほうを向く。それも仕方がない。あれだけ大きな声を出しいてたのだ。当然そこにいる連中は注目するだろう。だが二人のいた場所が悪かった。
二人はコンビニのイートインスペースで、小柄で赤髪の少女が頼んだコンビニ特製アイスクリームを待っていたのだ。コンビニは昼のピーク中、レジの列にはたくさんの客が並んでいた。
「ちっ、もう行くぞ」
寡黙そうな男は立ち上がると、少女の手を引いて店から逃げるように立ち去ろうとする。
「あっ、せんぱ、い、あの、アイス! まだもらってない!」
「お前がぎゃんぎゃんでかい声をだすのが悪いんだ」
「謝るから~ お願い、ひとりで待ってるから~ キースせんぱいは外にいてくれていいから~」
コンビニで注文していたアイスがもらえず、目にうっすら涙を浮かべて懇願する少女には一瞥もくれず、近くの公園まで小走りで歩いていく。やっと人気のない公園のベンチまで来て、ふぅ、と一息入れタバコに火をつけると、ゆっくりと腰を下ろした。
「いいか、俺は人込みが嫌いだ。あと騒がしいのも嫌いだ。知ってるだろ? コンビになった時にそう言ったよな。あと頼むから頭に響くそのキンキン声をやめてくれ」
しょぼくれた表情を見せる少女は今にも泣きだしそうだ。よほどコンビニの特製アイスを楽しみにしていたのだろう。
膨らんでいた風船から空気が抜けたように萎れている少女を見るに見かねて、寡黙で、人込みの嫌いな長身の男性は少女に言った。
「はぁ、わかった、俺はここにいるからアイスをもらってこい」
ピコーン! ついさっきまでのしょんぼり具合から一気に全快した少女は大きな声でやたーっ!! と叫び、コンビニまで駆け足で走りだした。
◇
数分後、さっきより少しゆっくりなペースの駆け足で少女が帰ってきた。特製アイスがカップから落ちないか心配しているらしい。
「はぁ~、めっちゃおいしい。500円も出した甲斐があったわ~」
「金を出したのは俺だがな」
2本目のタバコに火をつけながら、キースと呼ばれた男はボソッと答える。
「わかってるって~♪ せんぱいにも一口あげるからさ~ あ、そういやレジの近くにいたおばあさんがさっ、これお食べってチョコレートくれたよ~♪ やっぱあたしってかわいいんだよね~ なんか貢ぎたくなっちゃうんだろ~ね~♪」
ふん、大方父親か年の離れた兄に我が儘を言って怒られている子どもにでも見られたのだろう。それでしょぼくれている姿を見て憐れにでも思ったに違いない。
つむじから飛び出た二本のアホ毛を左右に揺らしながらおいしそうに特製アイスを頬張る少女を眺めつつ、2本目のタバコを投げ捨て、足で踏みしめる。
「プルルッ、プルルッ……」
その時だった、キースと呼ばれた男の携帯電話が、彼を呼び出すために音を鳴らした。
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