41番
プルルルルッ、プルルルルッ、電話の呼び出し音がなる。カチャッ、電話の向こう側の相手が受話器を取ったようだ。
「はい。あら、これは先生! 先生からお電話を頂戴できるなんて光栄の至りですわ」
「ふん、そんなくだらん前置きはいいのだよ。先程ハル君がサキ君を連れてここにやってきた。学校を出たのならなぜすぐに報告せんのだ?」
「えっ! し、失礼致しました。彼らはそのまま自宅へ帰宅するとおっしゃっていたので、特段ご報告の必要ないかと思い……」
「現にここに来ているではないか。もちろんここにはいくらでも来てくれて構わないし、ずっといてくれたってなにも問題はないのだが、だがだ!こういったイレギュラーに対応するために御前がいるのではないのかね?」
「申し訳ございません。我が主」
「その言い方はよせといつも言っているだろう。私は先生だ。そうだな、御前にひとつ頼みたいことがある。教室に仕掛けてあるカメラの映像を確認しろ。追悼集会が終わってからの、そうだな、20分間でいい。なにかおかしな点があればすぐに報告しろ」
「かしこまりました。我が主、じゃなかった、先生」
「はぁ、頼んだぞ…… ちゃんと確認するんだぞ」
「この41番に全ておまかせくださいませ。それでは、失礼いたします」
ガチャッ、通話が終了し、メルは受話器を戻した。受話器の向こう側にいた相手のことを想像して溜息を漏らす。41番と名乗った人物は相当ポンコツなのだろう。だが背に腹は代えられない。彼女に任す他ないのだ。
◇
一仕事を終え、ハルたちが待つ応接間へ戻る。時計を見ると正午をとっくに回っている。小腹が空いたな、とたくさんあった餅を食べようとしたが、あれだけ潤沢にあった餅はすでに残すところ3個になっていた。
「おかしいですね、あれだけあったお餅が忽然と姿を消しているのですが」
「先生、すみません、僕は止めたんですが、サキが……」
ハルの横をちらりと見ると、そこにはおなかをパンパンに膨らませたサキの姿があった。
「先生! ごめんなさい! ものすごくおいしくって、つい…… ハル! 見なさいよ、このおなか!」
そういってサキは制服の上着を捲って、パンパンに膨れたおなかをハルに見せつけた。
「ちょっと、サキやめろよ。そんなもの見せてくるなよ、おまえ女の子だろっ、もうちょっとお淑やかにしろよ……」
「なに言ってんのよ! 下にシャツは着てるから問題ないでしょ。えー、もしかしてシャツも一緒に捲ったほうがよかったとか!? このエッチ!」
「ごほんっ!!」
思わずメルは咳払いをして、この甘酸っぱい青春の一コマを中断させる。
「え~、食欲があるのは結構なことだ。大人は子供に食料を譲るもの。なんの問題もない。デザートのケーキもあるから遠慮なく食べていきなさい」
そういってくれる先生にお礼を言って、結局デザートまで頂いてしまった。そして母親が帰ってくる時間になったので、帰宅の準備を始めるのだった。
「ハル君、なにかあったらすぐに私に言いなさい。どんな些細なことでもいい。私はいつでも君の味方だ。それだけは忘れないでくれ給え」
突然シリアスな面持ちで話し出すメルにいまいち状況が把握できないハルは“わかりました、ありがとうございます”とだけ伝え、病院をあとにした。
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