雪
12月。
皆さんは、何を思い浮かぶだろうか?
クリスマスやスキー、大晦日など色々あると思う。
でも、私はたつまとの初めての雪だるまかな。
あのときはお互い幼稚園で、初めて雪が積もった日。
必死にかき集めた雪を丸めては、指で顔を書き足した。
とっても小さな小さな雪だるま。
あのとき、にかって笑うたつまに私は恋心を覚えた。
そう、あのときは私が幼稚園年少の頃。
パパの仕事の都合で知らない町に引っ越した。
小さな町で、町おこしに参加したパパ。
当然子供なんて少ないし、いてももう私より大きなお兄さんやお姉さんばかり。
同年代の子供はいなかった。
アパートから古くさい藁の家に移り住んだ。
一人っ子な私。
当然、何もない田んぼや藁の家を山で取り囲んだ町は、スーパーさえまともになく泣いてばかりだった。
おもちゃも今で言うDIYと言うやつでつくってもらったが……
山を越えた先にある都会の子には、指をさして笑われる始末。
だから、私はこの町が大嫌いだった。
幼稚園には、バスがわざわざ山を越えて送り迎えしてくれた。
ただでさえ田舎暮らしで、人見知りの私は孤立状態。
そんな私に声を掛けとくれたのが、『せつたつま』だった。
たつまは顔が広い。
いや、たつまは皆の事を思いやれる優しい子だった。
だから、皆がたつまの周りにいた。
私もその一人。
自然とたつまの周りには笑顔がっなかった。
そんなある日、雪が振り積もったことで山を越えるには危ないからと、帰りがおそくなった日。
たつまは歩いて帰れるのに、私が一人でいることに気づいたのであろう。
たつまは、
「せっかく積もったんだ! 雪だるまつくろーぜ!」
と、声をかけてくれた。
2人きりの時間は短く感じたけれど、とても楽しかった。
それから、たつまとは仲良くなり年長になっても仲良しだった。
たつまは、とても歴史が好きで良く図鑑など見せてくれた。
その中には藁の家があり、
「私んち、藁の家だよ!」
と言うと、たつまは目を光らせて遊びに行きたいとせがんだ。
しかしながら、子供1人では山を越えるには難しいと説明するとしょんぼりしてたっけ。
あっという間の幼稚園生活は、幕を閉じたのだった。
ーー
現在。
何故この話をしているかに戻そう。
私は中学2年生。
もうすぐ、クリスマスだ。
今は、たつまのお陰で家の仕事を手伝っている。
今日も囲炉裏の前には、お客さんが。
同じ中学生だが、遠足として来ている。
皆面倒くさそうにしているが、1人だけ目を輝かせてる少年がいる。
名字を見る。
名札には『雪』と書かれている。
珍しい名字だなぁと思いながら、囲炉裏の使い方や歴史などを説明していた私。
それが終わるとそそくさと皆出ていくのだが、『雪』と書かれている少年は違った。
「あの、大丈夫ですか?」
と、声をかけてみる。
「あっ、すみません。つい、興奮しちゃって。初めて見るもので」
と、少年は言った。
では、と大荷物を抱えながら去ろうとすると一冊の本が落ちた。
お互いに手を伸ばし触れた。
私は、つい手を引っ込めた。
「すみません、ありがとうございます」
と何事もなかったかのように、深々と礼をする少年。
「いえ、こちらこそありがとうございます」
と、頭を下げようとしたその時だ。
少年が持っているものはとてもボロボロだった。
しかしながら、見覚えのある本でもあった。
私は、つい、
「た……つま?」
と言うと、
「えっなんで俺のことを?どこかでお会いしましたっけ?」
と、返事が。
「もしかして、ゆいな?幼稚園時、仲の良かった?」
と、少年は聞いてきた。
そう、私は竹田唯奈。
この町で唯一の、子供である。
まさか、たつまくんが来るとは思ってなかった私。
感動していた矢先、同級生であろう1人が、
「おい、次だってよ。達磨早くしろよ。この雪だるまめ!」
たつまは顔を赤くするが、私にはさっぱりだった。
しかし間髪入れずにその謎も解ける。
「誰が雪だるまだ!俺は雪達磨だ!ったく!」
と、カンカンに怒るたくま。
「だから、雪達磨なんだろ?!漢字の読み変えるだけで『雪達磨』っておもしれーよな」
と、じゃれ合っている。
「なるほど。たつまくんって、達成の『達』に磨くの『磨』で達磨なんだね!」
くすくす私も笑うと、
「ゆいな!?お前も俺の名前でおちょくるのかよ!」
と、達磨に突っ込まれた。
「ううん、ただなんだろう。嬉しいなって」
なんだろうか。
あのときの思い出と重なって、より嬉しく感じたのは。
「ゆいなはさ、冬休み空いてるか?」
顔を赤く染めて、聞く達磨。
「うん、別に用事ってことはないけど。どうしたの?」
と、何故か私も赤くなる。
「……ライン!ライン教えろよ!今度こそ来ていいだろ?!」
と声を荒げる達磨。
「う、うん、いいよ」
と、お互いに何故か距離を縮めることなく、ライン交換。
でも、達磨のアイコンは、昔2人で作った雪だるまの写真から撮ったモノであった。






