妻
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おぎゃあおぎゃあおぎゃあおぎゃあ
うるさい
「いつまでそうてっぱっているつもりかい!早く起きなさい!」
「ねえ、お母さん…私、どこで間違えたんだ…?」
おぎゃあおぎゃあおぎゃあおぎゃあ
うるさい
「何を言っているんだお前は…………このあほったれが…」
「じゃあ、花ちゃんはおばあちゃんといようね~」
おぎゃあおぎゃあおぎゃあおぎゃあ
うるさい
花が泣く、うるさい 手が動かない、体が動かない。
カチカチカチ
時計は動く。
カチカチカチ
うるさい
汚い女だわ、浮気ですって~、今の娘もまさか?、三日休めずやってるって~
あの子が私の子だとどうやって信じるんだ?
スマホを見た。
「チャラオ」彼の名前は知らない、 初めて彼と会ったのはだぶん 何か月前。
久しぶりのセックスはすごくよかった。
セックスがよかったのか、お酒が気持ちよかったのか、あるいは
誰かと触れ合うというのがよかったのか。
夫とはお見合いで結婚した。
優しくてまじめな人だった。
優しい彼が気に入った。
彼と結婚した。
彼との結婚生活は幸せだった。
セックスも毎日のように、眠る時はいつも私を抱きしめてくれた。
幸せ、だと、思った。
妊娠した。女の子、だんだん変わって行く体、重くなるお腹。
この中に私と彼の子供が育っているんだね、かわいかな?
花を生んで数ヵ月間は大変だった。
私の体も大変なのに花はずっと泣いてずっと気を使わなければならなかったので辛かった。
休みたいのに花は泣いた。
むかついた。この子はなんでこんなに泣くんだろう? なんでいっつも泣くばっかりなの?
ダメ
ダメ
私はこの子のお母だ、私はこの子を愛してる。
私はこの子を愛してる。
私はこの子を愛してる。
それから、私の生活…いや、私は変わった子供のだけの生活、夫との関係も一切止めた。
何だか気持ち悪かった。
夫は育児を助けると言ったが私は拒んだ。
出勤は早く帰りは遅い。いつも疲れた顔。
生活にはお金が必要だから。
でも夫との関係はいやだった。
私には花しかいればいい
“あれ”って、そこまで気持ちいいわけでもないし、花も気を使わなければならない。
夫が久しぶりに“あれ”をしたいと言った時、まだ大変なんだよ、今はやりたくない。
夫は「わかった」と言った。
そして、月に一度、二ヶ月に一度、四ヶ月に一度、半年に一度ずつ夫からの関係を要求するタームが長くなった。でもやりたくなかった。
花の面倒を見るだけでも疲れるんだよ。
それくらい分かって欲しい。
花だけ考えたかった、それ以外のことはすべてがイライラした。 他のことは何も考えたくなかった。
夫はいつも「分かった」と言ったから良いんだ。
夫はぞっと面倒くさいけどお金は必要だから ご飯くらいは作ったよ。
ある日、私は言った。当分やりたくない!もう要求するな!私がやりたい時に言うから。
その時までは一人でなんとかしてて。どうせ男の性欲なんか自分でなんとかできるじゃん!大変なんだよ私は。花もまだ小さいしすぐ泣くんだよ!
今思えば私自身も理解できないな…どうしてだったけ?
それ以来、夫から要求されることがなくなった。いつからか部屋も別々に使い始めた。
その方が花の世話が楽になったからな。
この時、夫も昇進して仕事が増えた。
だんだん退勤する時間も遅くなり、退勤してきた夫の肩はだんだんt疲れた。
夕食を食べなかった日は夕食を作ってくれた。
「この時間になるまでご飯も食べずに何してたの? 子供じゃないから飯くらいはちゃんと食べれば?」
しかし夫が家でご飯を食べる日がだんだん減っていった。
休日にも出勤した。
私に“あれ”を求めることもなくなった。
そうやって3年が過ぎた。
「だから~ここ数年、全然やってないんだよ…もしかしてセックスレスって言うんじゃないの?」
「アハハハ、それがセックスレスじゃなければ何? 夫に不満があるの?」
「いや~それはね?私からはちょっとね?分かるよね?」
「あはは、だったら私と遊ぶ?」
久しぶりに友達に会った、学生の頃からよく遊んでいた子。
「それでクラブ? は何をする所なの?」
「酒飲んで踊って遊ぶところ、今まで家にだけこもってたからたまにはいいでしょう?」
「いいね~行ってみようか?」
それが始まりだった。
どれくらい飲んでどれくらい踊ったか? 目の前が揺れて考えがまとまらない。
誰かが近づいてくる。
「お姉さんたち~もしかして二人だけで来た? 一緒に遊ぼう~」
「あそぶあそぶ~あら、こっちのお兄ちゃん、私の好みだよ~」
「じゃ、こっちのお姉さんは私が~」
「うん…誰…ですか?」
誰?そこは私の腰だよ?
「じゃあ、私はこっちのお兄ちゃんと遊ぶからな~」
「うん~さようなら~」
友達の子が誰かと一緒に離れる
「お姉さん、すごく酔ってるね~これだけ飲んで、もっといいことしに行こうか?」
「うん~いくう~」
「やった~」
..彼は何て言った? 私は何て言った?考えがまとまらない。
私は今どこに行くの?
ああ、何か気持ちいいかも?彼が私の胸を揉んでいる、ああ、何年もやっていないからね。
気持ちいいかも?夢を見るような気持ちで彼とやった。
気持ちよかった。
パシャパシャと何か変な音、でもまあいい~気持ちいいからいい~
翌日起きたのはラブホテル、裸、隣には手紙一枚。
「どってもよかったよかったよまた見ようね?」
私は何をやった?
頭が真っ白くなった。
メールが来た。
「お姉さん~3日ぶりに会いたくなった~会わない?」
彼からのメール、彼とセックスしながら足を広げて舌を出した私、まるで蛙、私?本当に?
「会う…わけ…ない…」
でも…もしこの写真を誰かが見たら…
彼と会った、会うしかない…でも少しの期待、そしてまた彼とやった。
今までは思いもよらなかったことをした。
前に後ろに口で胸で…何時間も
……悔しかった、気持ちよかった。夫とは後にも口にもしたことがなかった。
そしてその後、また彼と会った。
どうせ夫とはやらないから。
最近の夫は私に興味さえ持っていない。
構わないだろうな。
彼がプレゼントをくれた。
似合いそうだと言ってハンドバッグ、服、靴、メガネ、帽子、下着…
「見た目は高いそうでもどっても安いものだから気にしないで」
と言った、どうせ自分が脱がすものだからとも言った。
彼と会えば会うほど、だんだん彼と会う周期が短くなった。
週に一度、三日に一度、一日に一度、彼の友達と何人かでやったこともある。
だんだん保育園に花をたのむことが多くなった。
彼と出会って3ヵ月、ある日は、隣人に花を任せ、彼と彼の友人たちと外泊したりもした。
数日間休まずセックスばかりした。
誰かに愛されている感じがして幸せだった。
ある日
「あ、ゴム無い、今日はやめようか?」
「え、いや~今日は安全日だから生でもいいよ。ゴム無しでもいいじゃん~」
「いいの?」
「大丈夫、早く」
「私はいいけど、責任取らないからな?」
大丈夫 大丈夫
彼と出会って4ヶ月目。
生理が来ない。
あれ?
そういえば先月…生理したっけ?
まさか?
赤い2本
妊娠した?
妊娠?何ヶ月目だっけ?2ヶ月?1ヶ月?彼とゴム無しでやったのはいつだっけ? …この前だったかな…その前だったかな…ゴム無しでやったことが何回かあるんだけど…
どうしよう?どうしよう? どうしようどうしよう…
あわてながら居間に出た。 夫が座ってテレビを見ている。
…どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう…
夫…夫なら何とか…そう…夫だろう?
「あ、あなた…」
「うん?」
「あなた…」
「なに?」
「…あなた…ごめん、私、妊娠、してる」
…
「いつから?」
「な、何が?」
「あいつとどのくらい会ったんだ」
「そ、それが…よ…」
4ヶ月…ただ4ヶ月…
けれど、
今までの夫との生活よりも濃い4ヶ月
あまりにも濃い4ヶ月…
これ以上の言葉が口に出ない。
…夫とは3年以上していないのに、彼とは4ヶ月間、どれだけ体を絡めたんだろうか
4ヶ月という一言を言うことさえこんなに大変なことだったのか..
…
「そうか、分かった」 バタン
夫が自分の部屋に入った。
しばらくして夫が持ってきたのは
離婚届
どうして?…なんで?知ってた?なんで?夫でしょう?離婚?
あ…あ…あ…どうしよう…どうしよう…どうしよう…
花…花は…
どうしよう、どうしよう…どうしよう。
それ以後はよく覚えていない。
頭が真っ白になった。
私が何を言っているのかも分からない。
私は夫にしがみつくしかなかった。
どうしよう…どうしよう…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「飯でも食え!」
トゥン!
目の前に小さい食卓が置かれる。
「おめえが浮気をしようが何をしようが私はおめえの母で、花はおめえの娘だ!おめえがそんなに死体のようにいたら、花はどうすんだ! 腹の中のおろすっとしても花はどうする気だ!」
あ…花…ごめん…私が…私があなたからパパを奪ってしまったんだ..
「ごめん…」
「手術は来週に決めたから、花を考えて気をしっかりするんだ!」
「うん…ごめん…ママ…ごめん…花…」
ご飯を食べた。
砂のようだった。
窓の外を見ると木が見える。 そんなに大きくはないが葉は一つもない、まだ秋なのに…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの木はね、ママの生まれた日に植えた木なんだ~、あの木の下であなたのお父さんにプロポーズもされたよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
母の思い出が詰まった木…今はただの古木だけど…
でも、人一人くらいは余裕を持って··ぶら下がることができるだろう…
花、ごめんね、私が、本当にごめん…私が..私が..私はゴミだよ…ごみは片付けなければ…
ごめん…ごめん…ごめん…ごめん、お母さん。ごめん。ごめん。
…花…
木に縄を掛けた。
ガシャン。なにかが割れる音。
バキッ。
最後に目に見えるのは、花が寝ている部屋
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ごめんね、花…ごめんね…ごめん、お母さん…
「二人は夫婦になって楽しい時も辛い時も幸せな時も悲しい時もお互いを信じて頼り合い、共にすることを誓いますか?」
「……そうできませんでした」
なぜ私は夫との関係を気持ち悪いと思っていたのだろうか…




