表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界ダーウィン賞

作者: 騎士ランチ

 ざまぁ大好き読者の皆様こんにちは。今年も安全圏から他人の不幸でメシを食う「異世界ダーウィン賞」の結果発表の時期が来ました。


 ダーウィン賞とは、その年最も愚かな死に方若しくは生殖機能を無くした独身に対し、「よくぞアホの血を絶やし人類の発展に貢献してくれた」と称賛して晒し上げる地球の文化です。


 そして、この文化をこっちの世界でもやろうと思い立ち始まったのが異世界ダーウィン賞です。


 ルールは基本的に地球のダーウィン賞と同じ、一番見事なアホ死にをした人がダーウィン賞を受賞します。


 さあ、果たして今年は誰が受賞するのでしょうか?まずは第五位の発表です。


■ ■ ■


【第五位:聖剣と思いきや…】


「うおー!ここが伝説の聖剣の眠る山か~!」


 ヒースはこの国の王太子。だが、国務も学業もサボりまくり日々王国中を遊び回る馬鹿王子だった。


「おっしゃー!登るぜ登るぜ!登りきったぜ!ややっ、何やらでっかい岩に刺さったでっかい剣発見!」


 目当てのモノを発見した王太子は、早速それを両手で掴み力一杯引っ張った。


「ウオオオ、ファイアー!!」


 間もなく刺さっていたモノはスポンと抜け、辺りは青い光に包まれた。ただし、発光していたのは岩の方である。


「うおっまぶしっ、何の光!?やべー、気分悪くなってきた…」


死者:ヒース(享年18)

死因:地球人が山奥に作って放置していった巨大なデーモン閣下・コアを聖剣の刺さった岩と勘違いして起動。慌ててストッパーを元に戻すが時既にお寿司。しっかりとデーモン閣下・コアの光を浴びてしまい、下山する頃には完全にデーモン小暮閣下へと変貌し翌日ベンチの下で息を引き取った。


■ ■ ■


 以上、第五位のヒース殿下でした。本来なら優勝してもおかしくない見事な死に様でしたが、異世界人にデーモン閣下・コアの原理を理解するのは無理ゲーというのがマイナス点となり、この順位に落ち着きました。


 続いては四位の発表です!


■ ■ ■


【第四位:魔力計測で壊れたのは…】


「すみませーん、魔力測定器壊れちゃいました」


 この日、冒険者ギルドに一人の天才が現れた。冒険者登録をしに来たこの少年、魔術は無詠唱で連打するわ、知識は賢者並だわ、アイテムボックスからウルトラレア素材を出すわでとにかく一挙一動が無双していた。


「すげーすげー」

「こんな新人見た事ないわ」

「ご主人様流石です」


 ギルド内の人々が揃って少年を褒め称える。だが、その流れに水を差す男がいた。


「ケッ、気に入らねえな」


 仕事をサボって飲みに来ていたヒース殿下だ。


「おめーら、何やってんだよ!今やるべきは、そのガキをヨイショする事じゃねえだろ。魔力の数値を再検査して、結果を示さなきゃ冒険者登録完了しねーだろがい!」

「しかし殿下、魔力計測しようにも測定器が壊れた以上『計測不能』とするしか」

「なら計測器には俺がなってやんよー!」


 そう言うとヒースは少年に向かって尻を突き出した。


「さあ、俺の美尻にお前の全力をぶつけろ!」


 ヒースは真っ昼間から完全に出来上がっていた。パンツまで下ろして生尻を見せつけている。ムカつく事に本当に美尻だった。


「カモカモベイベー!俺は計測器よりずっと頑丈だ!テメーの力はこの国の宝になるかもしれねー!だから、この尻の感度で正確に測ってやんよ!」

「分かりました!師匠には本気出すの止められてるけど、全力でいきます!」


 少年の手から先程とは比較にならない魔力が放たれ、ヒースの尻に吸い込まれていく。


「おおー、いいぞいいぞ。魔力値114514…ん?まだ上がるの?」


 最初は余裕で魔力を吸い込んでいたヒースだったが、次第に余裕が無くなっていく。


「オイオイ、この尻の中でシャッキリポンと踊るのは無属性じゃねーか!それにこのピリッと来るのは合成術かよ!こんなん出来るの俺のカーチャンと婚約者ぐれーだせ!少年、もう分かった!これ以上は…イタいイタいイタいやめてー!もう限界!濃いの出ちゃうー!はうっ!」


死者:ヒース(享年18)

死因:少年の魔力を尻で受け止めるのに失敗し、受けた魔力を屁と共に発射。至近距離にいた少年を気絶させてしまう。しかし、白目を剥き少年は起き上がり、ヒースを剣でバラバラに切り裂いた。その時の少年の動きは500年前に活躍した伝説の剣帝そのものだったと囁かれている。


■ ■ ■


 以上第四位でした。ギルドの酒場を屁と血で汚したマイナス点を除けば、お手本の様なダーウィン賞候補でしたね。しかし、今年はレベルが高い!これを超えるアホな死に方が三件もあったんです!第三位はこちらっ!


■ ■ ■


【第三位:難関ダンジョンで置き去りに…】


「全員入り口に走れー!止まるんじゃねーぞー!」


 今日も今日とて王太子ヒースはヒースだった。この間ギルドで会った少年を荷物持ちとして雇い難関ダンジョンに挑んだのだが、本来この辺りで出現しないモンスターに遭遇し全力で逃亡していた。


「ハアハアハア、少年、後どのぐらい走れる?俺もー無理ー」

「頑張って下さいヒース殿下!ちなみに僕はめっちゃ元気です。というか、あの程度のモンスターから何で逃げなきゃいけないんです?」

「今日採取した素材が時間で劣化するタイプだからだよ!あのモンスタータフだから相手してたら素材が腐る!」

「僕のアイテムボックスに入れればいくら経っても劣化しませんよ?」


 少年の言葉を聞いたヒースはダッシュ状態を維持したまま首をギギギと動かし少年をガン見した。


「早く!言えよ!バカー!」

「聞かれなかったんで」

「お前そーゆー所さんだぞ!そんなだから他の冒険者に嫌われてるんだぞ!もういい!あのモンスターは俺が倒すから、お前はアイテム整理と援護しろ!」

「はい、わかりました。回復&強化」


 少年が無詠唱でヒースを強化すると、今まで感じた事の無いパワーが全身を駆け巡った。


「うひょー!翼授かるわコレ!サンキュー少年!これで勝つる!」


 パワーアップしたヒースはノリノリでモンスターに飛び蹴りを放った。


「一撃でクリアー!」


死者:ヒース(享年18)

死因:モンスターを強化されたキックで華麗に撃破したはいいものの、勢い余って近くにあった大穴に落下。中に居た少女から「わらわが待っていたのはお主ではないわー!」と理不尽にブチ切れられバトル突入。古龍に変身した少女をボコボコにするが、後一歩で強化魔法が切れ逆転負け。三日後、ギルドで美少女数人と食事していた少年宛に着払いで遺骨が届いた。


■ ■ ■


ハイ!第三位でしたー!借り物の力で調子乗るからこうなるんですよね。皆さんは彼を反面教師として、こうならない様にしましょう。では、いよいよ一位と二位の発表です!諸事情により一位と二位は同時発表になります。


■ ■ ■


【第二位:婚約破棄ざまぁの時間だオラァ!】

【第一位:知らなかったのか?大魔王からは逃げられない】


「公爵令嬢ユリア!俺はお前とは結婚しねえ!婚約破棄だっちゅーの!」


 王国の貴族学園で卒業パーティが行われているこの日、王太子ヒースは婚約破棄を宣言した。その相手は勿論、今までちょくちょく一緒に冒険をしてきた少年である。


「殿下、何してるんですか」

「わかんねーか?今、三月じゃん?俺、18じゃん?ワンピ、最終章突入したじゃん?なら婚約破棄するしかないしゃん?」

「僕は殿下の婚約者じゃないですし、これは卒業パーティじゃなくて勇者パーティですよ」


 少年の言う通り、これは卒業パーティではなく勇者パーティ。冒険で成り上がり、勇者認定された少年が率いる美少女ハーレムパーティである。彼らは遂に魔王城に突入し、魔王の間の目の前まで来ていたのだが、そこにヒースが割り込み婚約破棄をしてきたのだ。


「で、何しに来たんですか?流石に卒業パーティと勇者パーティは間違えないでしょ」


 ヒースと長い付き合いの少年は彼のアホさと無駄な行動力を良く知っていたが、貴族学園と魔王城はそれぞれ大陸の両端にあるから、流石に間違えるはずはない。


「うむ、良くぞ聞いてくれた少年!今まで黙っていたが、実は俺はバカ王子だったんだ」

「知ってます」

「で、バカ王子にだけかかる、『18歳になったら婚約破棄してざまぁされる病』になってしまったんだ」


 普通なら到底信じられない話だが、少年はヒースの言葉を黙って聞いた。少年の父は、『息子が15になったらハズレスキル扱いして追放しざまぁされる病』だったから、ヒースの病も実在するかもと思ったのだ。


「俺はどう足掻いても18で婚約破棄して破滅する。逆に言えばその日まで絶対死なないって事だ」

「そう言えば、殿下は僕の目の前で何回か死んでましたけど、来週にはピンピンしてましたね」

「そう、それが物語の強制力って奴だ。俺は婚約破棄する日まで死なないし、誰もそれを疑問に思わなかった。昨日まではな」


 そう言った直後、ヒースの全身から血が吹き出した。


「ウボァー!」

「殿下ー!?」

「し、心配すんな。今までキャンセルされてた死因が再発し始めただけだ。じゃ、時間もねーし、ちょっと魔王と心中してくるわ。少年、多分この城ごと消し飛ぶからお前は仲間連れて帰れ…っていねぇー!」


 勇者パーティは既に残像にすり替わっていた。


 少年はヒースが血を吹き出した直後に状況を察し、とっくに残像を残し脱出していたのだ。そして、残像もヒースのツッコミの後にスーッと消えた。


「せめて最後の言葉とかあるだるぉぉぉ!まー、いいや!マジでタイムリミットだし突撃すんべ!」


 がチャリと扉を開け、玉座に座っている魔王へと駆け寄る。


「こんにちは、魔王様ですね?デリバリーサービスのヒス子でーす!チャームポイントはお尻、よろしくねぇーん!」

「だ、誰じゃ貴様!ワシは剣帝との決着を求め蘇ったのじゃ!立ち去れ!」

「残念だけど、ご指名の子は体調不良で来れなくなっちゃったのよ。だから、つべこべ言わず死ね!」

「何の光っ!?」


 魔王の間は青い光に包まれた。


死者:ヒース(享年18)

死因:18で絶対に破滅する運命を背負った彼は、それを利用してあらゆる方法で死に続けた。ある時は自然災害に飛び込み、ある時は毒を浴びる程飲み、ある時は異世界の危険物質を取り込み己の肉体を最強の時限爆弾へと作り変えていった。それでも目標とする威力には届かなかったが、規格外の実力を持つ少年達に出会うた事で彼の計画は一気に前進し、何とか魔王の目の前で自爆し相打ちするに至った。


死者:魔王(享年555)

死因:500年前、剣帝に敗れ一度肉体を彼は魔王城と魂を同化させ完全な死から逃れていた。その後長い年月を掛けて新たな肉体に魂を移し復活したのだが、代償として魔王城の外では生きられなくなってしまう。それでも、何とか戦力を整え宿敵との再戦が実現されようとしたが、全く無関係のバカが魔王の間に乗り込み自爆。先程説明した代償により、逃げる事も不可能。彼は500年の延命をしたにも関わらず、何も叶える事はできなかった。


■ ■ ■


 見事異世界ダーウィン賞を獲得したのは魔王でした!本人のミスは少ないですが、500年掛けて復活してこの有様、そして、二位以下を独占していたヒース殿下にやられたのを考慮しての優勝です!


 これにて、今年の異世界ダーウィン賞は終了です。最後に六位から十位を紹介してお別れしましょう。ご視聴、ありがとうございました!


六位

死者:ヒース(享年18)

死因:妹の婚約者に挨拶に行く為に、妹と一緒に伯爵家に馬車で向かうと山賊に襲われた。得意の変身魔術で山賊のボスに化けて混乱させながら一人づつ処理していると、伯爵家の方からシュバババと少年が走って来て生き残っていた山賊を全て切り捨てた。妹が「それ、お兄様ですわー!」と泣き叫ぶと少年は素早く無詠唱回復発動。起き上がった山賊のボスは少年に礼を言い、王家に事情を報告に行くと告げその場を去った。倒れたままの方が本物のヒースだと分かったのは、死後二日経ってからだった。


七位

死者:ヒース(享年18)

死因:武闘大会に魔族が参加している事に気付いたヒースは、路地裏でその魔族を倒し、彼の着ていたフルプレートアーマーを借りて大会に参加。同じく大会に参加していた少年を驚かせてやろうとした。しかし、正体を明かす前に「お前魔族だろ、とっくに分かってるよ」と言われ、誤解をされたまま少年が生み出したブラックホールに吸い込まれていった。


八位

死者:ヒース(享年18)

死因:自分を基点に重力魔法使ったら、自分が真っ先に潰れた。


九位

死者:ヒース(享年18)

死因:少年の実家である伯爵家が衰退し、困り果てた伯爵と次男坊の前に魔王の部下が現れた。伯爵達は魔族化し広場で暴れていたが、駆けつけたヒースにボコボコにされる。しかし、少年に倒させた方が色々と都合が良いと考えたヒースは、わざと敗北し少年にバトンタッチ。少年は怒りによって完全覚醒し、魔族化したと思われる三人を一瞬で消し炭にした。


十位

  :ヒース(18)

原因:魔王と相打ちになった後、土曜日の25時35分に復活したヒースは自分の葬式が行われている事を知る。普通に生還報告するのも面白く無いと思った彼は、婚約者である公爵令嬢に化けて参列者の前でケツドラムを披露。遅れてやって来た本人によってゴールデンボンバーされ、究極生命体(SEX必要なし)となった。なお、来週になっても股間は治らんかった模様。その後、平民のヒス子として勇者パーティに正式加入し、自分達に理不尽な運命を強いた神々に喧嘩を売りに行った…え?あいつら今こっち来てるの!?ギャー来るな来るな来るな!うわ何をするgjdtmふじこ



(異世界ダーウィン賞は諸々の事情により今回で終了となりました)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヒス子英傑すぎィ!! あたまおかしいけど
[良い点] ダーウィン賞は不謹慎ではあるけれど、「良い子は真似しちゃダメだよ」と教訓にはなりますからね。 というか、ほぼヒース個人の偉業(異業)を讃える賞になってますから、ヒースが死んだら終了ですよ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ