幼馴染のヴィオロギア ①
――それから十七年後。
僕の名前は、神谷瞬。
市内の私立学園に通う、今年で十七歳を迎える高校二年生。
部活動は帰宅部……って自信を持って言うのも恥ずかしいけど、何が得意なのか自分でもわからない。
一年の時は幼馴染に誘われて、一緒に運動系の部活を幾つか転々としたが、どれも性に合わず長続きしなかった。
僕を誘った張本人は行く先々から引っ張りダコで、結局どの部活にも籍を置いて幾つかを掛け持ちで熟すマルチスターになった。
文科系の部活も別の幼馴染に言われるがまま入部したが、僕にはパッとしないどころか授業の延長のような活動にウンザリして三日と続かなかった。
これまた肝心の誘った張本人は、メキメキ頭角を現し創設以来の逸材と評され、いつの間にか部長より一目置かれる存在に昇格していた。
あれこれいろんな部活を見て回ったけど、どれもパッとしないものばかり。
もっと魅力的で僕にピッタリな部活があれば、入部してあげても良いんだけど?
例えば、読専漫画部。
描く方の漫画研究部は既にあるけど、絵心の無い僕には不向きだ。
そうじゃなくて、毎日漫画を読むだけの部活があったり。
あとは、そうだな……女の子研究部。
好きな女の子のタイプについて、雑誌やDVDを参考にしながら検証していく部活動だ。
こんな部活があれば、すぐにでも入部するのだが無いのだから仕方無い。
結局のところ、僕はこの帰宅部が一番性に合ってる気がする。
勉強だって別に出来ない訳ではない。
赤点なんて一度も取った事は無いし、いつも期末試験終了後に校内に貼り出される成績の順位表では、中の上を常にキープってところだ。
「小さい頃は、本当に神童かと思ったのよ。瞬、貴方はやれば出来る子」
母親からは、いつもそう言って育てられた。
スポーツはというと、特に秀でてる訳でもなく……鈍臭い訳でもない。
体育祭では選抜リレーのアンカーを任される……訳でもなく、半ば無理やり任命された借り物競争に出場して「パンツ」と書かれたお題を引くほどのクジ運の悪さ。
当然、誰からも借りれず最下位の汚名を着せられた訳だが……。
今になって思えば何も女の子のパンツじゃなくても、男子体操着のパンツで良かったのだが……それは控えめに言ってスケベなのではなく、想像力と応用力が足りなかっただけだ。
そんな僕に母親は……。
「仕方ないわね……? 年頃の男の子だもの……。でも瞬、貴方はやれば出来る子」
そう言って、励まされて育った。
他にも何か芸術的な才能に長け、音楽やコンクールで軒並み賞を掻っ攫うほどセンスがある訳でもなく、会話がめちゃくちゃ面白くてユーモアに溢れてるかと言うとそうでもない。
最後に、プライベートな話だが……。
小学校に入学する迄はモテてたような気がするが、中学生辺りから異性を意識するようになって、ピタッと縁遠くなった気がする。
胸を張って言える事じゃないが、今まで付き合った彼女の人数はゼロ。
当然、ど、童貞だ……。
だけど、それの何が悪いっ、たまたまチャンスが無いだけだ!
そのうち僕だって、初体験を済ませて大人の仲間入りを果たしてやる。
と、思っているが……それはいつになる事やら。
あくまでも主観だけど……容姿だって悪い方じゃない僕が、どうして女の子と縁が無いのか考えてみたんだ。
もしかして……何処に行くのも一緒、常に行動を共にする幼馴染がいるもんだから、変に気を遣った女の子たちが近寄って来なくなったのかな?
まぁ、それならそれで僕にとっては問題無い。だって僕は、その幼馴染の事が――。
って、あぶない危ない。何を言わせるつもりなんだ。
ついダラダラと自己紹介してしまったけど、客観的に見たら本当にツマラナイ男。
僕自身、何の取り柄もない何処にでもいる普通の……本当に普通過ぎる高校生……。
――だと思っていた。
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凹みそうになっても元気が出ます。