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☆エピソード4 魔道具の研究員とスライムとチンピラ

総合研究施設バルバロス第三区画、ここは学園区。

薄暗い路地裏で、青年はチンピラに絡まれていた。別にぶつかったりした訳じゃない。多分服装とかが気に食わなかったんじゃないだろうか。この青年も、チンピラ君の服装を見ただけで、自分とは波長が合わないと思えた。そんな人間同士が隣をすれ違えば、それだけで悪意や敵意ってのは人の心を蝕むらしい。全く実に鬱陶しい習性である。


「あっはは、今そのまま指やったら脱臼すると思った?そう脱臼するんだよ」

何言ってんだこいつ。気色ワリイまゆなしイキリフェイス。ギラギラ輝くお耳のピアス。ドクロ、十字架、Fackの4文字をこよなく愛するファッションスタイル。中等学生の少年なら可愛いかもしれない。高等学生だとだいぶ痛いかもしれない。だが目の前に居るのは青年~中年くらいの良い大人だ。知らないお兄さんに手にぎにぎされてんだけど、非常にキモイ。

なんで昼間から学園区の路地裏にいるんだろう?第四区にでも行って力仕事でもやっていて欲しい。


「……【テレポート】」

「ハッ。【ディレイ・テレポート】」

「……ピンポイントに嫌なもん持ってるね」

「凄いだろう?」

「チンピラが天職って事なのかもね」

「お前、一回死んどけ」


テレポートは発動しなかった。拳がとんでくる。スキルじゃない。だからこっちも宣言する暇がない。とっさに下がる。そのまま人混みの中へ。すっとろいんだよバーカバーカ。実際頭悪そうだ。もういっちょバーカ。


……。


「お前ってほんと絡まれるよな、レスター」

「黙れ。おいウィド、そっち魔法陣死んでるぞ。確認しろ」

「大型軍用魔術の研究ねえ。これの誤作動一つで、先日の第三区ぐらい軽く吹き飛びそうだな。お前は報復とか考えねーの」

「チンピラ君も一応、基本的には税金を納めている国民だ。俺は1人でも多くの国民を守り、敵国の1000人を殺す為の研究をしている。誤作動など許さん。ほら、はよ魔法陣直して来い」


レスター・ハーブル

lv15_Atk18_HP190/魔道具研究員


ウィド・ヴァーン

lv18_Atk25_HP240/魔道具研究員


ジリリリリリ……《警告。警告。第七区画より合成獣が逃走しました。第七区画より合成獣が複数逃走しました。第五~第三区の非戦闘職員は迅速にシェルターに避難して下さい。合成獣のLvは10~20で……》


ジリリリリリ……


「またか。ウィド、避難路の迎撃だ」

「最近多いな。【サーチ・ゲイザー】起動!……まずい。レスター第六区だ!誰か小部屋に追い詰められてるぞ!!」


【サーチ・ゲイザー】

予め設置した監視用の魔道具を起動し、周囲のマップを表示する。


二人は走った。

第六区、薬学研究室C12。医療に関する技術を研究する小部屋だ。そこにはおよそ戦闘向きとは言えぬ人間のものらしき反応が4つ、そして大きな……合成獣らしき反応が2つあった。絶体絶命だ。


「きゃああ!」

「もうおしまいだぁー!」


迫り来る合成獣。震え上がる少年と少女。勉学に関しては優秀そうなのだが、この場では無力。そこに飛び出す研究員が二人。ウィドとレスターはまだ来ない!


スミス・ゼト/下級魔術師

Lv12_Atk16_HP140/140

「下がっていろ!わしらが食い止めーるッ!」


ブレナ・レアン/薬学研究員

Lv8_Atk10_HP110/110

「あたいらが時間を稼ぐ。ちび達二人は、なんとか隙をついて逃げて、戦える助っ人を呼んで来てくれよな!」


はぐれ合成獣が現れた。


被検体type:B03/下級合成獣・アトミックスライム

Lv15_Atk20_HP180/180

「ゴポパポォォォ……」


被検体type:G06/下級合成獣・アトミックスライム

Lv15_Atk20_HP210/210

「ゴポポパァァァ……」


スライム。目測の身長は1mほど。だが敵を丸のみにして捕食する時、奴らの身長は3m~4mにまで伸びる。触れれば溶解する体で覆い被さってくるのだ。接触は避けねばならぬ。


スミスの攻撃。

「わしから行くぞ!【ウィンド・ランス】!」

【ウィンド・ランス】

判定開始。1回攻撃。1d6を振り、5で1回追加攻撃。6で2回追加攻撃。1で攻撃失敗。判定のダイスは……5。2回攻撃、総火力は32。

被検体type:B03 は32のダメージを受けた。

被検体type:B03 HP180→148


被検体type:B03の攻撃。

「ごpppppばばばぼぉ!!」

【溶解液】

判定開始。3d6を振り、合計値10以上で敵の残存HPを半減。それ以下なら1回攻撃。自分よりlv20以上格上の相手には効かない。判定のダイスは……15。


溶解液がスミスに襲いかかり、そのHPを半減する!

スミスは70のダメージを受けた。

スミス HP140→70

「ぐわァァァ!」

「スミスー!」


ブレナはアイテムを取り出す。

「【レッドポーション】だ、下がって来い!」

【レッドポーション】

判定開始。HPを3d4×10回復する。1ゾロ目だと行動は失敗する。判定のダイスは……3、3、4。回復値は100。

スミスのHPは100回復した。

スミス HP70→140

「ふう!助かったわい……すまんな」

「あたいらが倒れたら本当におしまいだ、もう少し粘るぞ!」

「おうよッ!」


被検体type:G06の攻撃!

「うわぁぁぁ!」

被検体type:G06は……後ろの二人に迫っていた。狙いは少年の方のようだ。

「!いかん!少しばかり遠いぞ!」

「1体で手一杯になっちまった!少年逃げろ!」

しかし無情にも少年は追い詰められる。後ろには壁。これ以上下がれない。

「ゴポポパァァァ……」

「うわぁぁぁ!食われる!」

「間に合ったようだな。駆けよ【サンダー・ガンド】!ウィドーー!!こっちだ!こっちの部屋にいたぞ!」


【サンダー・ガンド】

判定開始。1回攻撃、2d6の8以上で敵を1ターン《スタン状態》とする。これによってスタン状態となった者は、次の行動が1d6の3以下で失敗する。判定のダイスは……12。被検体type:G06はスタン状態となる。総火力は18。

バリバリバリバリ!今まさに少年を捕食せんと膨れ上がっていたスライムの巨体に雷が走る!

「ごpppppばばばぼ!?」

被検体type:G06はスタン効果により動けなかった。


被検体type:G06に18ダメージ!

被検体type:G06 HP210→192

「これが魔道具の力だ。ウィドーー!こっちだー!はよ来ーい!ヤバいのが2体もいるーー!」


「ゴポパポゴポ……」

「ゴパポパァァ!!」


「全員、手を繋いでひとかたまりになれ!このフロアは5分後に閉鎖する!俺の仲間が合流し次第、俺の【テレポート】で逃げるぞ!」

「おお、わしらは助かるのか。ありがとう、ありがとう!」

「スミス、休んでな。あたいとこの人とで、この人の仲間が来るまでの時間を稼ぐよ」

「なんの!わしはまだやれるわい!【ウィンド・ランス】!」


スミスの攻撃!

【ウィンド・ランス】

判定開始。1回攻撃。1d6を振り、5で1回追加攻撃。6で2回追加攻撃。1で攻撃失敗。判定のダイスは……6。3回攻撃、総火力は48。

被検体type:B03 は48のダメージを受けた。

被検体type:B03 HP148→100


「あたいも行くよ!【超氷結薬】!」

【超氷結薬】

判定開始。アイテム「超氷結薬」を消費し、1d4回攻撃する。更に1回コイントス。表なら対象をスタン状態にする。判定のダイスは……4。総火力は40。コイントスの結果は裏。スタンはなしだ。

被検体type:B03 は40のダメージを受けた。

被検体type:B03 HP100→60


被検体type:B03の攻撃。

「ゴポパポ……!!」

【自爆】

判定なし。残存HPの半分と同値のダメージを全ての相手に与える。その後、自らはHPが0となり、体のあらゆる部位を爆散させて失う。総火力は30×6人。


「ここにいたか。行け、【自律型タワシ君 ver3.02】」

「ウィド……お前またタワーシールドをタワシと呼んでいるのか」


【自律型タワシ君 ver3.02】

判定なし。アイテム「自律型タワシ君 ver3.02」を消費して発動する。スキル1つによる全体攻撃や連続攻撃を一手に引き受け、そのダメージを無力化する。無力化したダメージの合計が500を越える場合、無力化効果適用の後に破壊されてしまう。


「きぃぃぃぃぃん……マスターウィド、わレ凄い?」

「偉いぞ。後でグレードアップしてやる」

「きぃぃぃぃぃん……マスターウィド、わレ照れル」

被検体type:B03の自爆は無効化れた。タワシ君は30ダメージ×6人分で180ダメージを一手に引き受け、無力化した。


ちなみにタワシ君は、魔力だか霊力だかを帯びた盾にaiを埋め込んだら意志疎通や自律行動をするようになった魔道具だ。ウィドのオリジナルで今のところ世界に一つしかない。が、簡単な構造なので量産も可能ではあるらしい。


「ナイスカバーだ。みんな、手は繋いだな。ウィドも早くこちらへ」

「タワシ君、撤収だよ」

「きぃぃぃぃぃん……マスター、待っテー」

「繋いだよー!」

「繋ぎました!」

「スミスとブレナ、okだよ!」

「行けるぞい!」


「じゃあな合成獣ども。【テレポート】」

テレポートにより時空が歪む……強烈な時空震に目を瞑る一同だが、再び目を開ければそこは第三区。安全な「はず」の学園区であった。


レスター達は逃走に成功した!


「何だこれは……ウィド!可能な限り自律型ゲイザーをばら蒔いて情報を集めるぞ!」

「レスター!そこら中が血塗れだぞ!どうなっている!?」


そう。辺り一面は血の海だった。ここは昼間人口の大半を学生がしめる区画だ。学生達はどこへ消えたのだろうか。まさかこの血がソレなのか?


「合成獣の脱走被害が、こんな上層まで来てるとはのう……」

「あたいらは消耗が激しい。一旦研究施設自体を抜けて、近隣の町までテレポートで逃げた方がよさそうじゃないか?」

「そうしよう【テレ」


「助けてくれェェ!」

「ぎゃぁぁぁぁ!死にたくない、死にたくないぃぃ!」

「誰かー!ぎゃあっ……」


……必ず助けに戻るよ。【テレポート】」

しかしテレポートは発動しなかった。


「【ディレイ・テレポート】!!見殺しなんて人としてダメダメじゃないか陰キャくぅぅん?《あのお方》はそう簡単に君らの逃走を許しはしない。君らは今からねぇ、シェルター脱出実験の被検体なんだよ!ギャハハハハハ!」


「お前、あの時のチンピラかよ。やっぱりロクな奴じゃなかったな……良いだろう。これだけの大惨事の加害者との繋がりを仄めかす軽率な発言とお前の姿形、確かにゲイザーに記録した。どうなっても知らんからな。行くぞウィド」

「了解した、レスター。職場を荒らされちゃあさすがに俺も手を出そうかね」

「やれやれ。当分休めそうにはないね。あたいらはちびどもを守っておくよ。回復アイテムも結構あるよ。後方は任せてなよ」

「わしもちびっ子達についておこう。いざとなれば魔法で助太刀しますゆえ。お願いしますぞ、お若い助っ人さん方!」


ーー戦いの終わりは、新たな戦いを呼ぶだけだった。レスター達の脱出劇は始まったばかりだ。ここは総合研究施設バルバロス。地下施設であり、地上へ出るには第二区、第一区を越えて行かねばならない。男の口振りから、そこも合成獣等によって既に血の海になっているのであろう事が伺えた。さあ、この者達の戦いも見届けるとしよう。


つづく

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