6カツラ
ブックマーク有難うございます〜
「そろそろお腹も減ったでしょう。食べ易いご飯を作って来ますね。」
「そんな、其処まで迷惑をかける訳には…」
人様に既に迷惑をかけているのにこれ以上迷惑をかける訳にはいかず、止めに入るがこのおじさんは特に気にするそぶりもなく、優しく笑った。
「いえいえお気になさらず。大した物は出せませんが、どうぞお寛ぎください。あ、ご安心下さいませ王女殿下が生きてた事は口外致しませぬゆえ。」
「おご迷惑をおかけします…」
本当に私は迷惑しかかけないなぁなんて思いながら出て行こうとする所ですドライアドが“妾も手伝うのじゃぁ〜”と言いながら出て行った。
ドライアドの背中の支えがなくなり、咄嗟に身体強化をかけるがふらつくのは視線のせいだった為意味がなかった。
…暇だな…寝てもなぁご飯持って来てくれるみたいだから寝る訳にはいかないな。
空間に読みかけの本が数冊入ってるけど頭熱いし今読むのは困難だしな…神力消費したいけど…万が一神力を見られると大変だしな…あまり無闇に使わない方が得策だな。
空間魔法とかは神力が外に漏れることがないから安心して使えるだよね。
と言う事で空間魔法の中に入っている
テッテレェ〜 『エドガー選抜変装グッツ』!!
取り出したのは大型犬が二匹は入りそうな大きな黒い袋。
重すぎて待ち上げられずベットの上にボスんと下ろす。中は確認してないけど一体何が入っているんだろう?仰向けになり頭もとに置いた袋に手を突っ込む。
ゴソゴソ漁ると手に毛の様なものが触れ引っこ抜くと、黒髪のカツラが出て来た。暗殺業界では有名らしいが見るのは初めてだ。カツラがあれば自分の髪を切らなくていいので安心だ。
長さは恐らく肩下ほど。これを切って男性用にしよう。他にも色々な色のカツラが出て来た。様々な種類の金髪に茶髪が有る。金髪だと二種類は有る様だ。綺麗なハニーブロンドに一般的な金髪。茶髪だとオリーブブラウンに赤茶、普通の茶髪など。あとは藍色だとか灰色だとか色々な色が有る。どうやら一般的に多めの色から珍しい色まで揃えてくれた様だ。
…さてどれにしよう。
金髪は全くいないわけでは無いけど目立つし私の髪のプラチナブロンドに色素が薄い感じが近いから却下として、最も多い茶髪にしようかな。でも、紫の瞳には合わないかな。
…藍色か、レオンハルトは瞳も髪も藍色だったなぁ切れ長な目に似合っていた。
レオンハルトを知っていると、この藍色は着けこなせないなぁと痛い程思う。
黒色にしようかな、なんか選ぶの面倒になって来てしまったし、一番最初に手に取ったしそれも何かの運命だろう。
黒髪のカツラと鏡を出しそれ以外は空間に直しカツラを被る。中々綺麗に被るのが難しく、髪を括る位置を試行錯誤する。うん。自然に被れた。まだ髪は切っていないけど普段が随分長い髪だった為肩下の髪は違和感だ。髪を切るいのはドライアドにお願いしたらいい感じにしてくれるだろう。
いつもより短い髪を鏡で見ながら待っていると以外と時間が経っていたらしく二人が階段を上ってくる気配がする。
特に気にしていなかったけど、此処は二階の様だ。時間的に、外は暗いし夕ご飯というところか。
あぁ、結構寝てたんだなぁ、朝から夕方までか…
コンコン「入るわよー」
ドライアドがまず入って来てその後ろにおじさんも入って来た。
が、入って来た二人は私を見るなり固まった。…はて、これはかなり驚いている様だ。
「ふふふ、カツラですよ?」
そう言うとエドガーはハッとした様に口元に手を当て頬を染めドライアドは震え出した。
そしてドライアドはフラフラと近寄って来て寝転がっていた体を起こそうとしていた私を抱きしめた。
「きゃぁぁぁああ!!かっわいいいいいいいい!!!何それ何それ⁉︎黒髪も最高じゃぁぁっぁぁあ!」
す、すごいテンションだ…でもせっかく可愛いて言ってくれたところ申し訳ないがこの黒髪を切って欲しいんですよね…
「喜んでくれて嬉しいんだけど、ドライアド、この黒髪を男の子ぐらいにいい感じに切ってくれない?」
そう言うとドライアドは私に顔を近ずけ狼狽え始めた。
「え…こんなに可愛いのに?はっ!そうだった、王子様に…うふふ、そうだったのう!任せろ!」
そう言うとドライアドは指を一振りするとカツラが見る見るうちに男性用になって行った。
切った髪は流れる様にゴミ箱に入っていき周りは綺麗なままだ。
鏡で自分を見ると中性的なと言うか女顔の男の子がいた。髪型は紳士的な王子様を連想させる格好良さ。程よく長く耳にはギリギリかかるけど結べない感じ。成る程ドライアドのタイプの髪型にしてくれた様だ。
「うん。最強にカッコいいぞ!なんて言うか女もてしもうな見た目じゃ!勇ましい系が好きな女は無理かもしれないがな!そしてその可愛すぎる顔で女の子に嫉妬されると思うがのう。まぁ、少なからずモテるぞい!」
「…それは、ありがとう?あ、ご飯持って来てくれたんですよね?ありがとうがざいます。」
ご飯を持ったまま私たちの会話を聞いていたおじさんに声をかけた。
「あ、あぁ。はい昼食を食べていないでしょう?沢山食べて下さいね。足りなかったら追加で作るので。」
そう言うとベットの近くに置いていた机にご飯を置いた。
ドライアドは抱き締めるのをやめ私の背を支え、“妾が食べさせてやろう”と言っている。
ドライアドはベットの上に座っているがおじさんは座らない様だ。椅子もあるし座ったら良いのに。
おじさんはハフハフお粥を食べる私を微笑みながら見ている。
急いでお粥を食べ、かつ優雅さは失わない様に食べさせて貰い食べ終わる。手を合わせて“ごちそうさま”を言いおじさんに話しかけた。
「ご飯美味しかったです。有難うございます。」
「いえいえ、お粗末様でした。」
此処で気になっていたことを聞くことにした。
「…つかぬ事伺いますが…そのお名前を伺ってもよろしいですが?」
そう、私はまだこのおじさんの名前を聞いていないのだ。そんなのじゃ、なんて声をかけたら良いか分からない。
「あぁ、名乗って居ませんでしたね。申し訳ない。私 ザード・ファナデルと申します。」
家名持ちて…この人やっぱり貴族だったのか⁉︎