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サイコ3par30―エイクラーの黙示録―

作者: 福島 エクス

「あ。」誰が合図もなく、立ち止まる。

森の水たまりのそば。倒れている味方の別の部隊、数名。

「まだ生きていますね、隊長。」戦争は人を機械にする。

「十中八九、罠だが。」

樹の上から土の中から飛び出してくる戦闘用アンドロイド。

「わお。」

一瞬であたりは戦場の弾道と埃と殺気に支配されていく。驚いた声。形式的なもの。反射的に物陰に全員隠れる。

「何体いた?」隊長がフィールに問う。

「5体。」

「・・迎撃せよ。」

実力差は実に明白。彼らは、ただシステムのアルゴリズムに従うしかなかった。弾かれる引き金もどこか軽く聞こえる。

「そんなもの効かない。」

フィールがちゃらけていう。液体のように弾が貫通して効かない。逆にフィールが腕を振ると、アンドロイドは音を立てて破壊される。

トイエンザスが自らの体を無数のコオモリ(?)に変化させて、森の中に姿を消した。

チェザーレは棺桶の中でグーグーと眠る。アンドロイドがそちらに意識を向けた瞬間、音もなく砕け落ちる。

残った一体もエイクラーによって破壊される。静かな勝利、それを人は処理と呼ぶ。

「ここで少し休憩。マンソンとチェザーレは周囲の見回りを。チェザーレ、寝ててもサボるなよ。」

「隊長、やはり、通信ユニットが遮断されていました。野良ですね。」

「これで今のところ、全部隊が野良か。本部とは相変わらずか?」

「はい、全く。不通です。サイコパスも通じません。」

エイクラーがちらっと破壊されたロボットを見て、

「埋葬してやっても?」

隊長は

「・・・休憩時間だ。好きに使え。」

チェザーレの棺が音を立てて閉じ、最防御態勢をとる。

「?どうした、チェザーレ?」何も答えない。

「隊長、あれはなんでしょうね?」

「マンソン!エンプリパンス!」そういって、空をにらむ。

「あれは・・・旧代兵器・・そういうことか。」



こうして戦争は、終わった。超心物理学兵器として、弱点はないとされた特別遊撃歩兵団『par30』隊は旧文明の遺兵器『真夜中の太陽』とともに両惑星の戦争力の放棄によって、停戦が締結した。

そしてこれは『破壊されたこととなっている』3体のその後の物語。



10年後。

異国の空がエメラルド色と琥珀色に色づくころ、砂漠を突き抜けるハイウェイの脇に、古びた建築物モーテル「ジーラジーラ」がある。違法就労者なんかがずっとたむろしている。その一部屋。

「ただいま。」

マーミアはアリーア族の不法入星者だ。

奥の方でキャッキャッとはしゃぐ声。マーミアは訝る。それは今までになかったから。

「どうしたの?」

「あ、おかえり。ママ。」

マリーとモールは戦争孤児だ。マーミアの声に元気よく駆けつけてくる。

ちらりとソファーの男を見る。不思議と悪意はなかった。

「その人は?」

「知らな~い。ママの知り合いじゃないの?」

よくあることだ。この星では情勢不安な国家だ、よく見る。男が軍服であったことが、彼女の中のよからぬ知り合いを思い出させる。

「ここは君の家かい?すまない。もう行くとするよ。」

エイクラー。違法存在者だ。

「―退役軍人?左腕がない。右目もひどく濁っている。―」

ふらつきながら、この元軍人は出て行こうとする。

「行くあてなんてあるのかい?」男は答えない。

「じゃあ、ここにいたらいいじゃない?」

彼女は呼び止めた。理由はわからない。ただ行く場所なんてないと思ったから。子供たちもそうしてほしそうにしていた。珍しい。この子達がここまで、人になつくなんて。

「ねえ、ママ。このおじさんすごいんだよ。私たちの隠したものなんでも見通しなんだよ。」



この男がこの家に来てどれくらい経っただろう。気の優しいこの男の名前はエイクラー。およそ軍人には見えなかった。彼は何も話そうとしなかったし、私も何も聞かなかった。口数の少ない男はこっちのことも何の詮索もしなかった。子供たちがいつもよりも笑顔になったのが、幸いだ。ふさぎ込みがちだったから。そして不思議な術を使った。

「ただいま。」

「!?」

そこには青空一杯の花畑。ここまで美しいものがあるなんて知らなかった。

「こ、ここは?」

「この公園のね。」

「花畑。」モールが元気よく答える。

「エンプリパンス(意識共有)っていうんだって。」マリーが答える。

「?」

「テレパシーの一種。僕がこの子達の記憶を膨らませて、フィードバックしている。」

「そう、そんなこともできるの?」

この子達の遠い記憶なんだろう。故郷の不思議な植物がいる。

「あそこで草を食んでいるは、バックヤグー。この星にはいない。確か・・」

「そうだよ。この子達はサラ人さ。5年ほど前に売られてきた。」

「すまない。そんなつもりはなかった。」

「いいのよ。」

「・・・」

「・・・」

「ねえ、ママ、ママのないの?」

「ママはないの。大丈夫だから気にしないで。」

「あの星は、昔から貧困にあった。君もあの惑星の出身かい?」

「いえ、違うわ。あの子たちと血はつながっていないの。」

それ以上、男はしゃべるのを止めた。

「・・・」

「・・・」

「あなたは?」

「ああ、歩兵団だった。10年前の先の戦で。」

「その怪我も?その時に?」

「うん。」

「当時の仲間は?」

何も答えなかったが、さすった腕はなかった。

「その腕章、猫?」

やっと見せた、笑顔。

「ああ、これは仲間の一人が、描いたものがいつの間にかエンブレムになった。結局、僕だけが生き残ってしまったのかもしれない。」

「・・・」

「・・・」

「ねえ、見て、ママ。見て。この虫お尻が光ってる!」

「まあ、それは、ミズホタル。珍しいわね。繁殖期になると、これが川一面を青く光らせるの。それはまるで光る川になるわ。でも本当にすごいのは・・・」

そこまで言いかけて、マーミアは口を塞いだ。代わりにエイクラーが語りだす。

「本来は幼態のまま、一生を水で過ごすが、11年に一度、大量に羽化し別の水場を求めて飛んでいく。それは美しかった。」

「わー!いいな、見たい!見たい!」

「ねーエイクラー!見せて!」

「僕には無理なんだ。」

「そうなんだ。」

「さあて、晩御飯よ。今日はミートミールよ。」

「えっ!?本当に!?」

「さて、二人とも手伝いなさい。」

「うん。あっ、エイクラーも準備しなさい。」

「じゃあ、僕も何かできることはないかな?」そういって立ち上がろうとした時にぐらついて、また椅子に座りこんでしまった。

「ちょっと大丈夫?」

エイクラーに触ってマーミアは驚愕する。冷たい。それに石のように固い。

「ねえ、早くママ、エイクラーは?」

「今日の彼はゲストだから、やらなくてもいいの!」

「ええ~、ずるいエイクラーだけ。」

「はいはい、早く作りますよ。」

ちらりと彼を見ると、申し訳なさそうに眠りについていた。

今日はたくさん話をした気がした。男はもう長くないのだろう。だからかもしれないが。ゆっくりと硬くなるその体に触れていたくなるのを感じていた。



やっと手に入った。

手にもったリュウマチの薬は異国の強力な奴だ。ほくほく顔で家に向かう途中、見たくない顔がそこで待っている。

「よお、久しぶりだな。」そう声をかけるのははぐれ軍人のスパイで、私のいる組織の男。マーミアは無視を決めて横をすり抜けようとする。腕をつかんで引き留める。

「いよいよ、明日になっちまったな。」

「・・・」

「準備した方がいい。街は俺たちにはもう住めないぜ。」

「・・・」

「わかっているのか?俺たちはすでに夷敵だ。街にいることは不可能だ。」

「・・・」

「ガキどものことは忘れろ。早くそこにサインをしろ。大丈夫だ、サラ人だ。それにそこの福祉施設はスピーロ教団が運営している。」

「・・・でも。」

マーミアは言いかけてやめた言葉を男は続ける。

「最近、迷い猫を飼い始めたみたいだが、その正体を知っているのか?当局じゃないだろうな?」

「なんの話?用ってそれだけ?もういってもいい?そんなわけないじゃない!」

「あいつ、多分だが、par30だ。あの軍服と紋章、間違いない。」

マーミアの眼が変わる。

「俺はお前が心配なんだ、あいつがどんな奴かなんてどうでもいい。お前の惑星は・・」

「止めて!」そう耳を塞いで通りに座り込んだ時に、異常は起こる。

通りの景色は一面の砂漠、あたりはカラカラの空気と熱と匂いが起こる。なつかしい、故郷の匂い。そこにいるのは、『サバクオオムラサキトカゲ』最強の生き物だ。ぎろりと目を動かし、獲物として男を見つめる。そして、ぱちりと一回、爬虫類の瞬きと舌がチロリ、ぐっと動き出す。

「ウソだろ・・・」

知っている獰猛さが二人を襲う。精一杯の防衛本能、うずくまる。男は一気に、その身は宙を舞う。そして、その眼がこちらを見ようとするときに、街は元の世界に帰る。白昼夢のように。男は一人、そこで気絶している。我に返ったマーミアはその眼を家のモーテルに向ける。エイクラーは優しく微笑む。



テレビのアナウンサーは政情不安を煽る。この国のことなのにそれは他人事のようにBGMであった。やがて砂嵐に画面が終わる。

時計は8時を示す。日の届かない部屋はテレビの音と意味のないファンがずっと回っている。モールとマリーはそれぞれ、エイクラーとマーミアを枕にうつらうつらとしている。そして二人はノイズを映すテレビを眺めがら、強く手をつないでいた。

「明日、保守党が負ければ、私は街を出るわ。」

「・・そう。」

「さっきの彼ね、同じ星の出身でビザを渡してくれたわ。よく考えてくれって。」

「彼はいい人だ。本気で君を心配している。」頭をエイクラーに傾ける。

「なぜそういえるの?」

「シンパシー。人の心がわかるんだ。」

「じゃあ、私の心配も?」

「うん。でもわかるじゃない。感情を感じるだけなんだ。」

「この子達ね、私の友達の子なの。」

「その人は?」

「病気で亡くなったわ。彼女に託されたの。この子達のこと。」頭をさすりながら。

「この子達は、この星で生まれたの。それが心配。一緒にいけないことが・・」

「きっと大丈夫。僕が保証するよ。」

「ねえ、あなたは本当に・・」

「たくさんの人を殺した。たくさんの人が死んだ。敵も味方も、君の国の人間もいっぱい殺した。憎むかい?」

「・・いいえ、従軍した夫から聞いたわ。あなたたちの死が戦争を終わらせたって。」

「あの時にね、私のいた街は暴動の真っただ中にあって、でも戦える人はみんな戦場に行ってしまって、でもぎりぎりのところで戦争が終わったの。」

「旦那さんは?」

「それから、1年もしないうちに逝ってしまったわ。でも最後を看取ることができたの。これはきっとあなたたちのおかげね。こんなことを言うのはおかしいのかもしれないけど。」

「ねえ、エイクラー、あなたが望むなら・・・」

エイクラーは優しく微笑む。

「ミハルミズホタル」

「え?」

「カン砂漠のオアシスに住むこの蛍は、世代間隔11回で変態をするんだ。繁殖しながら移動する個体はそれぞれ発光色が異なる。数十万、時には数百万の群れが輝くあの風景はそれは本当に美しかった。」

「詳しいのね。」

「そうさ。世界中を歩いた。どこにいても嫌われ者だったけど、・・・その風景を亡くしたのは僕たちだ。」

「あなたの右目も左手もきっと意味があったんでしょ?じゃあ、謝らないで。」

「そのまま、僕の手を持っていて。目を閉じて。あの花の香りもわらべ歌も。夜の寒さも。」

「ここは・・カン砂漠のオアシス?」あたりには亡くした故郷が映る。そこはその通りでどこまでも続く哀愁の世界。

「ママ、ずるい。独りでえいぱすを楽しんで。」マリーはその見慣れない奇麗なものに目をぱちくりとさせた。

「ママ?泣いているの?」

「ママ?エイクラーはどこに行ったの?」

エイクラーは行ってしまったのだ。でもきらきらと、一部屋のその砂漠のオアシスは輝き続けました。



「ねえ、ママ。バイバイ。」

「うん、バイバイ。」

「じゃあ、お願いね。」

「ああ、まかせろ。」

「同士も新体制陣も殺気だっている。もうすぐにでも衝突しそうだ。なあ、あの男はどこに行った?」

「・・・」

「そうか・・街は戒厳令が出ている。しばらくここに隠れていろ。俺たちの息がかかったボロ屋だ。」

遠くで警報が鳴る。出発の時間だ。マーミアは子供たちを安全な圏外へ逃がす。それが最善であることは知っている。異邦人であるマーミアにはこれ以上の同行はできない。

「さあ、もう行くぞ。」

「気を付けてね。」

列車は走り出す。汽笛を一回鳴らした。二人は静かに絵を描いている。

走り出した列車。

「ねえ、あなた。その絵は何?」前の席の少女がマリーに話しかけてくる。

「これはね、ぐるぐる猫。とっても変な奴。ずっと部屋のソファの上で丸まってゆっくりと笑っているの。」モールはそうかけた乳歯でほほ笑んだ。

「何それ。私の名前はアンジェリカ。よろしく。その腕章がそうなの?」

「うん、これは僕がもらったんだ。かっこいいだろ。」

「ふふっ変な兄弟。ねえ、名前なんていうの?」



テレビでは連日、クーデターのニュースをしている。エイクラーが姿を消して2週間。街はずっとにぎやかに輝いている。夜間に爆音と命を削る音が絶え間なく。しかし今日はずっと胸騒ぎがする。


国境付近に焦げて沈下した教会があった。それはほんのつい先日の出来事であった。どこかの誰かが不審な人が出入りする教会を怪しがり、通報したことで起きた空爆のせいだろう。『スピーロ教会』と書かれた看板がかろうじてここが教会であったころを伝えている。そこに膝をつきせせりなく声が漏れている。幾人かの遺体が黒い袋に包まれて並べられている。そこに故人のゆかりが添えられている。そのうちの手をつないで並べられた二つには猫の絵が一匹いる。

それを眺めている一人の軍服を着た人型の何か。

「おい、そこの軍服、ここは今立ち入り禁止だ。」

「なあ、あんた、これは誰がやった?」エイクラーは教会を指差す。

「お前、ここは立ち入り禁止だ。なっ、なんだ?!その左手は・・・」黒い影のような手は男をつかみ、持ち上げる。

「なあ、あんた、誰がこれをやった?」

男は黒い塊に縛り上げられ、呼吸をままならないくらいにつぶされそうになってやっとそれが人の形をした何か別のものであると知った。

「誰がやった?」異形は深い何よりも暗い瞳。

「権利促進会という権利党を支持する極左翼の連中だ!」

「・・そうか。」

手を放す。崩れ落ちるように、かがんで咳き込んだ。エイクラーはそのまま歩いていく。その仲間は駆けつけ、エイクラーの背に銃を向ける。

「止めとけ。」

「なぜです。」

「あれは人じゃない。」



私の仮設に一気に入ってくるのは同郷の男。私は今朝の胸騒ぎを思い出す。急いで入ってきたくせに、おかしなことをいう。

「なあ、いいか、落ち着いて聞いてくれ。今朝、いや夜明け前、スピーロ教会が襲われた。」

「・・・そう。」

男はちょっとひるんだが、すぐにマーミアを励ます口調に変わる。まだ二人が死んだかどうかも分からないこと、犯行は権利促進会と名乗る団体であること、をゆっくりと話した。

「なあ、なんだその格好は?どこに行く気だ。」

「スピーロ教会。確かめに。」

「いや、今はだめだ。今が一番やばい。ちょっと待ってくれ俺が必ず段取りをするから。」

「ううん、いいの。私はきっとここにいても死んでしまうと思うの。だから行かせて。」

「隊長!緊急事態です。ボスからです。」一人の若者があわてて入ってくる。

「たく!いいかマーミア、ここから絶対に出ていくな。マルドロ、彼女を見張っていろ!!」

男は部屋を出ていく。


地下部屋の一つ小さな受話器が置いてあり、それは急ぎの連絡だけが一方的にかかってくる。

「はい、どうされました?それは本当ですか!?わかりました。ありがとうございます。」

男は電話を切り、

「マルドロ!いるんだろ?!」

「すいません。止められませんでした。」

「もういい、すぐに彼女の後を追って伝えろ。そのままセントラルホールに向かえ。お前はそのまま護衛するんだ。」

「はい!」



高速道路でエイクラーと向かい合うのは護衛用のガーディアンロボット。戦争時代のキラーマシン。

「あなたは何者ですか?」ロボットは質問をする。目の前に返り討ちにあった同胞が3体横たわっている。

「なあ、ロックジェリーはどこにいる?」

ロボットは考える。異常な左手。攻撃をまるで消してしまう不可思議な術。サイコと呼ばれたかつての戦争兵器と考え至る。

「ならばなおさら通すわけにはいきません。私の命に代えても。」

「命?おかしなことを言う。命ってなんだ?」

「あなたには無縁な事でしょう。」

戦闘はものの数秒で終わる。左手にそのロボットはなすすべなく、破壊される。

エイクラーは感傷も何もわかない。それは駆除に等しいと思えたからだ。そして残る一台の車を見つける。あそこかと復讐心が体を突き動かしたその時にロボットの上半身はエイクラーをつかみあげる。そして怪しく笑う。エイクラーは瞬時に理解できた。ロボットは炸裂した。

巨大な爆発が街に残る。大きなメインストリートに大きな痕を残して、エイクラーはその体の7割を失って道に倒れる。空を見つめながら、残りの時間を考えた。

「―あと2分というところか。体の硬化に助けられた。油断したわけじゃない。奴の覚悟が・・いやそうじゃない最初からこの展開を待っていたのだな。―」

「―ああ、でももういいや、眠い。―」

「―ふふ、意外だ。最後に思い出すものが、彼女なんて。―」

「エイクラー」優しくかけられる声はマーミアのもの。

「やあ、マーミア。元気だったかい?」動くことのない口の代わりにテレパシーで気持ちを伝える。

「ええ、あなたはそうじゃないみたいね。」マーミアはまるでなんでもないことかのようにエイクラーの半身を膝枕において、微笑む。

「ごめん。あの子たちを、」

「ううん。いいの。」

「・・・」

「・・ここは静かね。」

「なあ、マーミア?」

「えっ、何?」エイクラーはのこされた腕で空を指差す。

「?」

一匹のミズホタル。それが空をふらつきながら、飛んでいく。色は赤色。真っ赤な赤色。ただただ空をふらついて飛んでいく。

「きれいね。」

そのあとの言葉はなかった。


エイクラーは優しく微笑む。

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