山田ロランという男②
この俺、山田ロランには一人の妹がいる。駄目な俺とは違い、何でもそつなくこなす、いわゆる天才という人間だ。
成績優秀、容姿端麗、社交性完璧で周りからの人望もあり、おまけに身体能力抜群。
そんな妹を羨み尊敬し、異性的な意味ではないが、人間的に好意を持っていた俺はシスコンなのだろうか。
妹と違い、俺は自分自身を好きになれない。名前からしてそうだ。性が山田と普通な名前で良いが、名がロランは納得できない。両親がつけてくれた名前だが、欲を言うと日本人らしい名前にして欲しかった。
俺の母親はイギリス人。仕方ないことなのだが、俺と妹はハーフとして生まれイギリス人の母親の遺伝を継いで日本人の顔に金髪として生誕した。
金髪が嫌で周り馴染めず、小学時代にいじめられた原因の一つだ。妹のロレンは、金髪が似合うと周りから羨ましがられ、俺は金髪が原因でのイジメのターゲットにされていた。
中学時代には良く喧嘩や揉め事に巻き込まれた。巻き込まれたというより、中二病が原因だった。喧嘩が強いと偉いを頭の中で結びつけ、それに加えて痛々しい言動と行動の数々の黒歴史クリエイターと化していた。
中学最後の一年間に至っては、毎日喧嘩の日々。勉強もろくにせず内申書も散々な物だった。中学を卒業する頃には、クラスの全員が高校へと進学する中、俺は進学しなかった。
いや、しなかったのではなく出来なかった。成績不良、暴行事件、当然の成り行きだ。両親からは完全に見放され、同じ家に居ながらも疎遠になっていった。
中学を卒業し、必死に働けるバイト先を探しアルバイトを始めた。
働きお金を得ることは、大したことはないと錯覚していた。
この世に怖いものは無いと虚勢を張っていた。
毎日喧嘩の日々で培った腕っ節だけには自信があったが、そんなものが世間で役に立つはずもなかった。
仕事が出来ない言い訳を周りのせいにし、周りと馴染もうとせず、職を転々とする日々が経過し、気がつくと五年という長い月日を無駄に浪費していた。
だから俺は一つだけ願った。
「俺は悪くない。 この世界の不条理が悪い。 人生をもう一度やり直したい」
そんなことを考える日々が願っていた。