人でありたい少年の話
これは、僕が人間になるまでの話。
「お前、それは違うって」
小学生の頃から、よくそう言われてきた。
例えば、掃除の時間。
僕は掃除の時間は掃除をするための時間だと思っていた、いやそれが正しいのだが、それを守らない人間がいれば許せなかった。
しかし直接的に僕に害はおよばない。
なんでたかが十五分の掃除ができないんだ。
内心ではフラストレーションを貯めながらも、平穏に過ごしていた。
小学三年生のある日のことだった。隣の市から転校生がやってきた。
名前はよく覚えていないが、背の低い男勝りな性格をした女の子だった。
とても活発な子で、休み時間のドッジボールですぐに打ち解けて、人気者になったのをよく覚えている。
面白い、いいやつだな。
素直にそう思っていた。
しかし、件の掃除の時間で印象は一変した。
「『転校生の女の子』、ちりとり持ってくれない?」
「は?なんであたしが持たなきゃなんないの?」
「掃除の時間だから、みんなで掃除するのはふつーじゃない?」
僕はいつも思っていたことを、初めて口に出した。
しかしその反応は思ってもいないものだった。
「いや、それあたしがしなきゃいけない理由になってないって。調子のんないで」
ブチ切れた。
ぷつっ、と何かが弾けたのが自分でもわかった。
「調子にのってんのはどっちだよ。新入りがなめた口聞いてんじゃねーよ」
もちろん僕は普段こんなことをいうやつではなかった。
大人しくて温和で、みんなで遊ぶのが好きなただの子どもだった。
「…は、急にどうしたの?気持ち悪いな」
そういって彼女は、ぷいとどこかへ行ってしまった。
はっと我にかえると、一人のクラスメイトがこっちを見ていた。
「お前、今のは違うんじゃない?」
なにが違うのかわからなかった。
そんな小学三年生の、六月のことだった。
こんな性格をしていた僕も、今では違いがわかる。
もう一度言うが、これはこんな僕が人間らしさを手に入れるまでの物語だ。
この時点では周りと自分が違うことを認められすら出来なかった僕がどう変わっていったのか、お付き合いいただきたい。




