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青スリッパ 緑スリッパ 赤スリッパ

二〇〇四年の四月、青スリッパを履いた先輩たちと、私たちはこの学校に入学した。

二〇〇五年の四月、緑スリッパを履いた先輩たちと、初めての後輩たちが入学してきた。

二〇〇六年の四月、赤スリッパを履いた先輩たちと、後輩たちが入学してきて、やっと六学年が揃った。

二〇〇七年の三月、青スリッパを履いた先輩たちは卒業していった。

二〇〇七年の四月、青スリッパを履いた後輩たちが入学してきた。



青スリッパで中学校の方を歩いていたら、

「おまえ、一年生の教室はあっちだぞ」

と、赤スリッパの中学二年生に言われた。彼らは中学一年生の教室を指していた。

去年までは、青スリッパは皆、それぞれ先輩だったのに。

「あたし、一応高校生なんだよね」

笑いながらそう言ったけど、ちょっと寂しい、と思った。

きっと、まだ名札が無かったから、スリッパの色で判断したんだろうな。

私の言葉に彼らはものすごく驚いていた。


失礼な。


私が廊下を歩いていると、周りからひそひそと喋る声が聞こえてきた。

「ねえ、あの子、自分の教室がわかんなくなってるのかな」

「ええ?でも、もう三日目だよ?」

「ほら、あたしたちも入学したばっかりの頃は迷ってたじゃん」

見ると、緑スリッパを履いた中学三年生が私の方をちらちらと見ながら話している。


うう、失礼な。


昨年度までは、つまり、先月までは私もこの校舎に君らの先輩として居たんだぞ。

迷うはずが無いだろう。

名札があれば、すぐに私が高校生だとわかるだろうに。

それにしても、私はそんなに後輩に覚えてもらえていなかったのか。少し落ち込む。

スリッパをよく見てよ。

新中学一年生は皆、新品のスリッパで、新しいランドセル並みにピカピカしてる。

でも、私のスリッパは去年のと同じやつを使ってるから、汚れてるでしょう?


なんか、三年間も通っていた廊下なのに、さみしいなぁ。


中学校のほうの廊下には、青スリッパが少なかった。

きっと、まだ教室から出難いんだろうな。

私たちが青スリッパを履いた中学一年生だったころは、中学校には先輩がいなかったから、皆好き勝手に教室から出たり入ったりしてたけどね。

]高校のほうの廊下に帰ると、廊下にはたくさんの青スリッパがいた。


うん、こんな感じ。


高校は先輩たちがいるけど、それでも、私たちは気負うことなく廊下に出る。

むしろ、この学校暦は私たち青スリッパの方が長いんだい。

三分の一程は外部進学生だから、彼らは違うけど。

でも、外進生も内進生も、皆楽しそうに交じり合ってる。

なんか、こういうのって、いいなぁ。

友達に中学校の方で中学一年生に間違えられたことを話すと、大爆笑してくれた。

こういう時って、たのしい。

こんな風に、私たちは時を過ごしていく。



来年の三月、緑スリッパの先輩たちが卒業していくだろう。

来年の四月、緑スリッパの後輩たちが入学してくるだろう。

再来年の三月は赤スリッパの先輩たちが卒業していって、四月には赤スリッパの後輩たちが入学してくるだろう。


その次の年の三月、初めてこの学校で六年間を過ごした、青スリッパを履いた私たちはこの学校を卒業していくのだろう。


そして、四月、青スリッパを履いた新一年生たちが入学してくるのだろう。


(おわり)


作者:清水柳陰

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、ではないです。aiといえば分かっていただけますか?新作を投稿されたようなので評価させていただきます。 内容としては実話をもとにされているようですが大変寂しいですね…。自分はさす…
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