実力検査
目を覚ます。
上半身を起こし、軽く伸びをしてから、窓の外、時計へと順に目を移す。
いつも通りの時間に起きたらしい。
昨夜はなかなか眠りにつけなかった事を考えると、もう少し寝ていたかったが、体に染み付いた習慣のせいで、ハッキリと目が覚めている。
授業開始時刻まで、まだ時間はあることを確認してから、自室をの扉を開け、共用の部屋へ行く。
いつもならば、起きるとコーヒーを飲むが、残念ながらインスタントコーヒーすらない。
それどころか、食材が何一つなく、あるのはやけに立派なキッチンや冷蔵庫、浴室といった、設備だけだ。
基本的に、学食は昼しかやっていないため、朝と夜は自炊するか、外に出るかしかない。
残念ながら、お金にも限りがあるため、なるべく自炊したいが、今夜は仕方がないだろう。
することもないため、椅子に座り、これから数日の予定を考える。
今日は授業、というか、説明会や検査があるため、何処かに出掛ける時間はない。
明日は何もないので、食材を買うとしたら明日だろう。
明後日からは、今日の検査の結果を見て、各々の能力に応じたレベルの授業を受けることになる。
レベルは、X,S,A,B,C,D,Eの7段階。Xに近いほど上位ということになる。
しかし、XやSは滅多に居ないため、一番多いB、Cクラスを2つに分けて7クラスにしているらしい。
何分考え込んでいたのか、ガチャっという音に反応して、反射的に顔を上げる。
視線の先には、金色の目を眠たげに擦りながら、部屋から出てきた相手を見る。
昨日から同じ部屋で暮らすことになった、いわゆるパートナーである。
「……おはよう」
「あぁ、おはよう……起きるの早いな…」
「………習慣だからな…」
時計に目をやれば、ゆっくり準備しても余裕で間に合うくらいの時間だった。
準備といっても、着替えるくらいしかないのだが。
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「欠席者、遅刻者はいないよな?それじゃあ、今から検査の説明をするぞ」
教室に着くなりそう声を掛ける教師。
昨日と同じ教師のため、恐らくこのクラスの担当なのだろうが……。
「…えーと、時間がないから、手短にいくぞ。検査は………」
と、言葉は続いていく、が。
時間がないと言ったのは、ほんとその通りで、本人が遅刻したからだった。
何か事情があるのか分からないが、こんな大事な日に遅れるのは教師としてどうなのだろうか。
まぁ、それはいいとして、話を聞く。
今日の午前は素因検査。お昼を挟んで能力と魔法検査がある。
素因検査と言っても、体内を循環してる素因を少し抜き取るだけなのだが。
素因を体内に持つ者は、持たない者に比べて身体能力が格段に上がる。
そのため、素因を少しでも抜き取ると、気持ち悪くなったり、脱力したりと症状が出ることがある。
だからといって、魔法や能力を使用した後だと、正しい結果が出ないため、素因から調べることになる。
本来は、入学式を終えた後、魔法、能力検査で、次の日が素因検査だったのだが、まぁ、あんな事故が起きたら仕方ないだろう。
ある程度の説明を受けてから、素因検査の会場、医務室に行くことになった。
学食。素因検査を終えて、昼食を食べるために集まる生徒。
その表情には、喜びや落胆、絶望したような生徒まで様々だ。
結果は、その場で伝えられるため、自分の素因属性や規模はすぐに知ることになる。
規模は素術の威力だけではなく、身体能力にも関わってるため、大小は結構重要なのだろう。
また、属性も、魔法の威力に関係するため、自分の得意魔法と同じ属性じゃなかった場合もショックが大きい。
そんなわけで、学食は賑やかだった。
「瀬琉は何属性だったん?」
「……氷だった…」
「まじでかぁ……闇属性って、需要あんのかな…」
「………さぁ?…」
「…うぅ~……」
そんな会話をしつつ、お互いの頼んだものが出来上がるのを待つ。
なんとなく、あらゆる方向からの視線を感じるが、気にしないでいると、1つの足音が近付いてきて、すぐ横で立ち止まる。
「おい」
「……なにか?…」
ぶっきらぼうに掛けられた声に対し、相手に目を合わせるのではなく、声だけで答える。
特に何かした覚えはないし、そもそも、この学園に入学してから関わったのは、目の前に座る白鈴くらいだ。
そのため、用件は特に思い当たらず、思案してると、また声がかかる。
「お前、素因が氷と言ったな?」
「……そうですけど……それが?…」
「丁度いい、人が居なくてな。俺の研究チームに入れ」
「……遠慮しときます…」
「色々な属性の素因の持ち主を集めて、お互いに競い合うと今まで以上の力が手にはいるぞ。まぁ、まずは、お前の素因の規模だな。どのくらいの規模かによって、練習内容が異なるし」
「…いえ……あの……」
「その後は、ただひたすら鍛練だ。面白そうだろ?だから、入れ」
「…………」
「お?何だ?嬉しすぎて言葉も出ないのか?そうかそうか、それならばよかっ……ってぇぇぇ!!何でいきなり殴る!」
「…こうすれば、静かになると思った……」
もちろん、嘘である。
腹に軽く1発打ち込んだくらいでは、静かになるはずがない。
ただ単に少し、ほんの少しだけイラッとしたからだ。
「……あなたが誰なのか知らないけど…」
「ん?あぁ、自己紹介してなかったな。俺のn「あ、結構です」
相手の言葉に被せるように、というか言葉を遮る。
どうやら、喧嘩を売りに来たわけではないようだが、上から目線だししつこいので、その場を後にすることにしよう。
丁度、注文してたものが出来たらしく、白鈴と共に取りに行く。
さすがに追いかけてはこなさそうだが、明らかに目をつけられただろう。
「………はぁ……」
「あはは」
思わず出たため息に、白鈴は苦笑いで答える。
午後は何もないことを願いたい。




