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始終なき世界で  作者: 黒
第一章 学園編
7/8

長かった一日

…………。

…………………。

………………………痛い。

頭に激痛が走る。自分の心臓が脈打つ度にズキズキと。

その痛みを抑えるように、右手をゆっくりと動かし、頭を抑える。

どこか頭でも打ったのだろうか。すこし腫れてる部分があるのに気付く。

ここで初めて目を開く。

窓から差し込む鮮やかな赤い光に目を慣らすように、ゆっくりと瞼を持ち上げる。

ベッドが並ぶ、比較的広めの部屋。恐らく、学校の医務室だろう。

ゆっくりと、痛む頭を動かして横を見る。

誰も居ない。

反対側も見てみたが、やはり誰もいなかった。

しかし、椅子は置いてあったので、きっと、誰か居たのだろう。

起き上がろうとするも、体には力が入らず、頭を上げることすら出来ない。


じっとしてるのも暇なため、何故自分がここにいるのかを振り返ることにした。

まず、入学式をして、部屋を決め、武器を決めるために闘技場へ向かった。

それから………。


「…あぁ……ドラゴンか………」


そこで思い出す。ドラゴンに襲われたこと。

生徒が一人犠牲になったこと。

全く、歯が立たなかったこと……。

そこから記憶が途絶えてるということは、その時に気を失ったのだろう。

頭痛や脱力感は、能力によるものだ。

今までにも何回かあったが、ここまで酷いのは初めてかも知れない。

しばらくは、じっとしていよう。

そんなことを考えていると、扉の開く音が聞こえる。

そちらの方へ視線だけやると、人影がこちらに近づいてくるのが見えた。

無意識の内に、身構えつつ、目を凝らす。

後2,3歩で自分の居るベッドに辿り着くというところで、その人は立ち止まり、声を掛けた。


「…目、覚めたか?……」


その声と共に、さっきまで薄暗く、窓の外から差し込む光しか無かった部屋に、明かりが点る。

新たな光に目を細めつつ、身構えてた体から力を抜き、軽く頷く。


「うん…おはよう、瀬琉」

「……あぁ、おはよう……まだ、夕方だけど……」


思ったよりも時間は経ってないのか、そんな感想を抱きつつ、窓の外に視線を移す。

医務室が学園のどこにあるのか分からないが、そこには、鮮やかな夕焼けが広がっていた。


「…具合は?……」


もう一度、視線を戻すと、心配そうに覗き込む瀬琉。

そんな瀬琉に、安心させるように、微笑む。


「うん、平気…ありがと」


頭の痛みは、未だに続いているが、上手く笑えてたのだろうか、少しだけホッとしたような表情をしてから、隣に置いてあった椅子に座る。

考えてみれば、瀬琉とは今日、初めて会ったばかりで、まだ互いの事はよく知らない。

けれど、瀬琉の表情を見ると、不思議と安心できた。


数分の間を開けてから、本題を切り出すかのように、乾いた口を開く。


「……あの後、ドラゴンはどうなったの?…」


その言葉を待っていたかのように、瀬琉は読んでいた本から顔を上げる。


「……ドラゴンは追い払って、部屋に居た生徒は全員部屋から出れた……けど……」

「…けど?……」

「………当然、トラウマになった生徒も居たから……」

「……そりゃ、そうだよな…」


数秒、重い空気が二人を包み込む。

再度、質問を重ねるために、重苦しい雰囲気の中、言葉を発する。


「…亡くなった生徒は?……」


普通、こんなことを聞かれても、返事に困るだろう。

実際、その場に瀬琉は居なかったのだから。

そう思い、先程の言葉を取り消そうと口を開き掛けた時、瀬琉の口から、信じられないような言葉が出てきた。


「……生きてるよ?…」

「……へ?…」

「……え?……」


お互い、驚いたような声を上げる。


「…え、今、生きてるって……いや、だって、血が…確かにこの目で……」


状況を把握できてない頭は、その痛みを忘れたかのようにフル回転し、その時の光景を鮮明に思い出そうとする。

確かに、襲われたところを見たはずだ。なら、生きてるって、どういうことだ…。

そんな困惑を悟ったのか瀬琉は口を開く。


「……ドラゴンと接触する寸前に、扉の外へ強制転移……いや、正確には入れ替えた……」

「……そんなことができるのか…じゃあ、あの血は?」

「ケチャップ……」

「あぁ、ケチャップ……え、マジで?…」


思わず納得してから、ふと我に帰る。

入れ替えということは、きっとその生徒とケチャップを入れ替えたのだろうが…。

まさか、気付かないとは……。


「…まぁ、犠牲者は結局、居ないってことだよな……ならよかったー」


事の顛末を知り、安堵したのか、徐々に眠くなる。

瀬琉を見れば、また本を読み始めている。

頭の痛みは、知らない内に引いており、体はどこも痛まない。

あそこまでやられたのにな、と思いながらも、襲ってくる睡魔に身を委ねるかのように、眠りに着いた。

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