初日の悲劇
「なっ……」
しばらく、その声が自分から出たのだと気付かなかった。
眩い輝きを全身から放つそれは、巨大な翼を広げ、空中でホバリングを続けている。
全体的に青色の光を放っている。属性的には氷だろうか。
ドラゴンは古代より存在する。
人が魔法、能力、素術を見つけることが出来たのは、ドラゴンが居たからと言ってもいいぐらいに、強大な存在だ。
ドラゴンは、ゆっくりと周囲を見回す。
こんな、いきなりの、しかもありえないほどの出来事に唖然とし、すぐさま動ける者など居なかった。
しかし、動くべきだった。
一歩でも良かったから……。
「ギャオォォォォオォォォ」
鋭い咆哮、それと同時に急降下。
狙う先には、一人の生徒。
危ないっ、そう思った時には、もう遅い。
一瞬の出来事で、何が起こったのか、さっぱり分からなかった。
ただ、生徒が居たはずの所には、青く輝くドラゴンと……飛び散った血。
白い光で溢れてた空間は、一瞬にして、絶望に満ちた空間に。
「……嘘…だろ…」
扉の方から、そんな声がした。
それを合図に、皆が騒ぎ出す。
意味のない叫び声、出せと喚く声、ただただ泣きわめく声。
バラバラの反応を見せながらも、絶望の底にいるのは皆同じ。
自分がどうにかしなきゃ、何故そう思ったのかは分からないが、とりあえず、近くの剣に手を掛ける。
そして、重い腕に無理矢理力を込めながら、構える。
剣の詳細を確認していないため、重量が分からない。ただ、今、どの剣を持っても、重く感じるに違いない。
剣先をドラゴンの方に向ける。
その動きを察したのか、ドラゴンと目が合う。
それだけで、身がすくむ、怖い、逃げたい。
そんな負の感情で頭の中が満たされ、動けなくなる。
自分には、出来ない。どうしようもない。
いつの間にか、静かになっていたその空間に……剣が……。
落ちる、乾いた音が響いた。
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合格おめでとう!
成績最優秀者なんて凄いな!
称賛の声が自分を包み込む。
思わず顔を綻ばせ、自分でも分かる少し赤く染まった頬を軽く掻く。
嬉しい。頑張った甲斐があった。
けど、なんだか……。
……違う気がする。
この学園に入学が決まってから、毎日、家でも学校でも、悩み、考え続けた。
成績発表の日、自分の成績の真下にあった。
実技、執筆、その合計点数が2つとも、まるで狙ったかの様に自分より1点、もしくは2点下だった。
気味が悪かった、考えすぎかもしれないが、鳥肌がたった。
直感的にも、理論的にも悟った。いつか抜かれる、じゃなくて、もう抜かれてる。
それは、必死に努力をしても、追い付けないような相手への恐怖心だった。
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走馬灯、だろうか。
こちらに体を向けたドラゴンを見て、過去の出来事が蘇る。
過去と言っても、ここ数週間の出来事だが。
落とした剣の横で、座り込みながら、ドラゴンの方を睨む。
その成績が誰なのかは、さすがに分からなかった。
だからこそ、ここで死ぬわけにはいかない。
けど、そんな意思と裏腹に、体は動かない。
ドラゴンの口元に青い光が収束するのが見えた。
恐らく、氷のブレスだろう。あれを喰らったら、即死だ。
こんなのが、成績最優秀者だなんて、笑える。
そんな自虐的な笑みを浮かべつつドラゴンを見る。
せめて、最後ぐらいは……。
未だに一点に収束してる光を見ながら、死を覚悟した時……。
一筋の光がドラゴンの喉元に、吸い寄せられるように飛んでった。
その光は鈍い音と共にドラゴンの、柔らかい肉質のところに突き刺さる。
白色の、輝くような剣。
飛んできた方向を見ても、そこには壊された空間の欠片が飛び散ってるのみで、誰もいない。
もう一度、ドラゴンの方を見れば、剣の突き刺さったところから、真っ赤な血を流しつつ、痛みでブレスを中断されたのか、周りを飛び回る剣を、必死に目で追っている姿が。
更には、周りを飛び回る剣は、7つに増えている。
7色の光で、軌跡を描きながら。




