武器と効果
武器を選ぶと言っても、そこまで重要に考える必要はない。
何故なら、後からいくらでも変えることが出来るからだ。
そもそも、こんな数え切れない武器の中から3つを、しかも一時間で決めきれるはずがないのだ。
瀬琉の入った黒色の扉に、続くように入り、中の光景に圧倒されながらそんなことを思った。
広すぎる。一番向こうが見えない。
外から見れば、ただの扉が立ってるだけだが、中は凄く広い。
そして、手前から一直線に並ぶのは、いくつもの、本……。
魔導書、もしくは契約書と呼ばれる物が並んでるのだった。
「……瀬琉は、これにするのか?…」
入った理由は、大きく分けて2つしかないだろう。
興味を示し入った場合と、使いたい武器を決めた場合。
しかし、あの迷いのない足取りを見た限りでは、興味ではないだろう。
数秒後、その考えを肯定するように、ゆっくりと彼は頷く。
「…うん……まぁ、とりあえずって感じ…」
魔導書は武器と言うよりも補助具に近い。
確かに、その分厚い本で殴ったら痛そうだが、違う、そうじゃない。
ページに書いてある文字や数字の羅列は、魔法や能力、素術を発動するときに使うものだ。
契約書という名前もある通り、その本と契約を結ぶことで、初めてその真価を発揮できる。
ただし、やはり補助具であるため、本物並の威力はでず、大抵はそれら3種の能力を使えない者が、日常生活や護身用に使うことが多く、能力者が使うことはあまりない。
瀬琉は、先程貰った鍵を手に持ちながら、魔導書を見て回っている。
鍵は部屋やロッカーの鍵を開ける以外に、3つまで武器を取り込むことができる。
正確には鍵に付着してる3つの小さな球であるため、上級生の中には、その球をバッジにしたりと工夫してる人もいる。
ふと、瀬琉が立ち止まり、此方を振り返る。
「……白鈴は、決めなくていいのか?…」
「あ……」
すっかり忘れてた。
自分のも決めないと…。
「じゃあ、また後でな」
何を選ぼうか、そんなことを考えつつ、先程通った扉を、引き返すのだった。
「さてと………」
扉だらけの空間に戻ってくれば、ざっと見回す。
色々な物に目を奪われそうになるが、それを堪えつつ歩き出す。
目指す先は、青い扉。
シンプルに、剣を武器の1つとして選ぶことにした。
扉に手を掛け、軽く力を入れれば、いとも容易く扉は開く。
そして、先程と同じような剣が並んでいる広すぎる空間に出る。
しかし、先程とは違い、色とりどりの剣が並べられてるなか、何人もの生徒が歩き回ってる。
やはり、使いやすい剣は人気なのだろうか、数え切れない人数が剣と剣の間をゆっくりと歩き回っていた。
それに習うかの様に、歩き出す。
それぞれの剣に軽く触れると現れる説明文。
そこには、重さ、長さなどが細かく書かれている。
ひとつひとつ見ていく時間はないので、見た目で気に入った剣の詳細を見ていく。
重さや長さだけではなく、なにかしらの効果が付与されてる武器もいくつかあった。
武器には効果と呼ばれるものを、武器種にも寄るが、1つ以上は付与することができる。
一番多いのは、魔導書だ。
そもそもあれは、いくつもの効果を付与して、その効果を発動するものだから、付与されてなければそれこそ、殴るだけの物になってしまう。
それと違い、剣には1~3つくらいしか付与ができない。
理由としては、やはり初心者が扱いやすい武器であり、なおかつ振り回すだけでも充分な威力を発揮するからだ。
付与可能数は、その武器単体の威力に反比例する。
何故なのかは分からないが、人工的に増減することは出来ない。
なので武器を選ぶ際、この付与可能数と付与効果を見ることも重要になってくる。
自分で付けることもできるが、下級だと弱い効果しか付けれない。
実戦で使うとしたら、やはり最低でも上級の少し強めの効果が望ましいだろう。
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何分経っただろうか。
集合の合図が聞こえないため、一時間は経っていないだろうが、中々武器が決まらないことに、若干の焦りを覚える。
まだ剣が決まっていない、しかも、まだ2つ、どんな武器にするか決めてない。
確かに後で選べるが、せめて1つは決めたい。
1つ1つを真剣に素早く見ることに集中してたため、気付くのが遅れた。
外、闘技場へ続くたった1つの扉の前には、たくさんの生徒が集まってることに。
「なんで開かねぇんだよ!」
扉に手を掛けてる、男子生徒の一人が、突然、怒気をこめた声で叫ぶ。
その声につられるように、白鈴や他に武器を選んでた生徒が顔を上げ、扉の方を見る。
その様子を見に行こうと一歩、踏み出した時。
遥か後方、上空の方からけたたましい咆哮が聞こえ、その足を止める。
ほぼ反射的に振り向いた先には、割れた空間と宙に舞う欠片、そして、その手前に輝く、ドラゴン。
その姿は、こんな状況でも美しく、誰もが目を奪われる程だった。
しかし、それも、一人目の犠牲者が出るまでのことだった。




