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この世は夢か転生か  作者: アルゼン枕子
3/5

回復と検証

しばらく毎日更新

ひどい倦怠感は、一晩眠ったらすっかり消えていた。まるでスマホのバッテリーが満タンになったみたいだ。やっぱり、あの倦怠感はMP的なものの枯渇で、睡眠で回復するらしい。これで安心して魔法を使える…いや、まだN=1(試行回数一回)だから油断は禁物だけど。


次に気になるのは、火魔法の原理だ。あの時、草が燃える前に温かくなった。火魔法は物を燃やすというより、対象の座標に直接熱を発生させる魔法なんじゃないか?電子レンジみたいに、分子を振動させて温める、とか?


確かめるには実験あるのみ!


母上は今日も朝から庭仕事だ。俺は「ママ、だっこー」と母にすり寄り、魔法の実地見学を始める。甘えん坊将軍の二つ名は伊達じゃないぜ。


母上が休憩で腰を下ろした隙に、近くに落ちていた枯れ葉に意識を集中する。「もえろー、もえろー、ふぁいやー!」心の中で念じ、小さな声で唱える。


すると、枯れ葉がじんわりと温かくなり始めた。そして、温度が上がるとともに、端の方からチリチリと焦げ付き、やがて小さな炎が上がった。


やっぱり!火魔法は対象を加熱する魔法だ!温度を上げて発火点に達すると燃える、ということらしい。これは面白い発見だ。物を燃やすだけでなく、温めたり、もしかしたら熱を利用した別の使い方もできるかもしれない。


「デイヴィッド。火は危ないわよ。リリアにも言っておくわね。」


母上がめざとく見つけて、声をかけてくる。慌てて魔法を解除すると、炎はゆっくり消えた。幸い、母上にはただの火遊びに見えたようだ。念のために火打ち石を持っていてよかった。。


この火魔法、使い方次第ではかなり応用が利きそうだ。例えば、冷たい食べ物を温めたり、金属を熱して加工したり…医療に応用することもできるかもしれない!前世の知識とこの世界の魔法を組み合わせれば、とんでもないことができるんじゃないか?


大魔導士への道は、思っていたよりもずっと面白そうだ。そして、チートな成り上がりの可能性も広がってきた!


だが、魔法を使うとやはり疲労が伴う。MPの効率的な使い方や、もっと強力な魔法を覚える方法を知る必要がある。


そこで俺は、MP回復のさらなる検証を始めた。睡眠以外にも、食事や休憩、軽い運動などがMP回復に影響するのかを試してみた。結果、やはり睡眠が最も効果的だが、栄養のある食事や適度な休息も回復を早めることが分かった。特に、母上が作ってくれる温かいスープは、心身ともに癒やされ、MP回復にも一役買っている気がした。


火魔法の応用も試みた。ある日、冷めてしまったスープを温めようと、火魔法を試してみた。最初はスープが焦げ付いてしまったが、魔力の出力と効果範囲を調整することで、適温に温めることができるようになった。これは、将来的に料理の幅を広げることにも繋がるかもしれない。


さらに、俺は異世界の文字を学ぶことにも力を入れた。母上やリリアさんに絵本を読んでもらったり、父上の書斎からこっそり書物を持ち出しては、辞書代わりに読み解く日々が続いた。最初は全く読めなかった文字も、少しずつ意味を理解できるようになり、やがて簡単な文章なら読めるようになった。


ある日、俺は父上の書斎で、古い魔導書を見つけた。埃をかぶったその本には、見慣れない文字で「魔力枯渇の危険性」と書かれているように見えた。恐る恐るページをめくると、そこには魔力枯渇による身体への悪影響が記されていた。重度の疲労、意識混濁、最悪の場合は死に至ることもあると。俺は背筋が凍る思いだった。あの倦怠感は、単なる疲労ではなかったのだ。知らずにやばいことしてたのか。やはり、この世は知識なくして生きて行くには過酷な世界だったのだ。


この魔導書には、魔力枯渇を防ぐための方法も書かれていた。それは、魔力を使いすぎないこと、そして、定期的に魔力回復薬を摂取することだった。魔力回復薬は高価なものだとリリアさんが言っていたが、命には代えられない。俺は然るべき時がきたら、父上に相談し、魔力回復薬を買ってもらうことを心に留めておくことにした。


また、魔導書には、魔法の効率的な使い方についても書かれていた。詠唱を短くする、イメージを簡略化する、魔力を込める量を調整する、といった母上のアドバイスは、この魔導書にも記されていた。母上もきっとこれを読んでいるのだろう。さらに、魔力を込める対象を限定することで、消費MPを抑えることができるという新たな発見もあった。例えば、火魔法でロウソクの火を灯す場合、ロウソク全体ではなく、芯の先端にのみ魔力を集中させることで、より少ないMPで魔法を発動できるのだ。


俺は早速、この新たな知識を実践してみた。ロウソクの芯に意識を集中し、最小限の魔力で火魔法を発動させる。すると、以前よりもはるかに少ないMPで、ロウソクの火を灯すことができた。これは大きな進歩だ。


知識を得ることで、俺の魔法は着実に進化している。大魔導士への道は、決して平坦ではないが、一歩ずつ確実に進んでいることを実感した。


ある日の午後、俺は庭で火魔法の練習をしていた。小さな砂つぶを熱して、それを加工する練習だ。最初はうまくいかなかったが、何度も試すうちに、小さな石英の砂粒を溶かして小さなガラス玉を作ることに成功した。これは、将来的に魔法具の作成にも繋がるかもしれない。


また、異世界の文字を学ぶ中で、俺は歴史書にも興味を持つようになった。この世界の歴史は、俺の知る地球の歴史とは全く異なっていた。古代には強力な魔法使いが存在し、彼らが世界を創造したという神話や、魔族との壮絶な戦いの記録などが記されていた。特に興味を引かれたのは、遥か昔に存在したという「賢者の石」の伝説だ。それは、無限の魔力を生み出すと言われる秘宝で、多くの魔法使いがその探求に人生を捧げたという。


(賢者の石…無限の魔力って、実にうさんくさいかな)


俺は密かにそう思った。しかし、同時に、可能性も感じていた。もしかしたら、魔力版のモバイルバッテリーみたいなものなのでは?魔力を蓄積できるなんて、なかなかすばらしいかもしれない。


父上や母上、そしてリリアさんとの交流も、俺の異世界での生活を豊かにしてくれた。彼らは俺の成長を喜び、魔法の練習にも積極的に協力してくれた。特にリリアさんは、俺が魔導書を読み解くのを手伝ってくれたり、この世界の常識を教えてくれたり、まるで家庭教師のようだった。彼女の存在は、俺にとって大きな支えとなっていた。


俺は、この異世界で、新たな家族と仲間を得た。そして、大魔導士という目標、賢者のモバイルバッテリーの探求という新たな謎。俺の異世界での人生は、これからさらに面白くなりそうだ。


ある日、俺は父上の書斎で、さらに興味深い書物を見つけた。それは、この世界の地理に関するもので、ドバルコ辺境伯領の周辺には、まだ未開の森や山脈が広がっていることが記されていた。特に、西にそびえる「神聖山脈」は、人外の領域とされ、強力な魔物が棲息しているという。


「神聖山脈か…ラスダンっぽい響き。いつか、あそこにも足を踏み入れてみたいものだ」


俺は冒険心をくすぐられた。しかし、今はまだ、その時ではない。まずは、目の前の魔法の研鑽と、この世界の知識を深めることに集中しよう。


また、貴族の子供としての日常も、少しずつ変化していった。父上は俺に、領地の運営や貴族としての振る舞いについて、少しずつ教え始めた。最初は退屈に感じたが、この世界の社会構造を理解する上で、非常に重要なことだと気づいた。


「デイヴィッド、貴族の務めは、領民を守り、領地を繁栄させることだ。そのためには、知識と力、そして何よりも、人々を導く心が不可欠だ」


父上の言葉は、俺の心に深く響いた。前世では、ただの医師として目の前の患者を救うことしか考えていなかったが、この世界では、もっと大きな責任が伴う。ちなみに父は「地方伯」に仕える貴族として、領地の一部を管理している立場らしい。


俺は、この異世界で、新たな自分を見つけつつある。前世の知識を活かし、この世界の魔法を極め、そして、貴族としての務めを果たす。俺の人生は、今、新たなステージへと進み始めている。


ある日の夕食時、父上が珍しく難しい顔をしていた。

「最近、領地の東の森で、奇妙な現象が報告されている。木々が枯れ、動物たちが姿を消しているそうだ。原因は不明だが、不穏な魔力の気配を感じるという報告もある」

父上の言葉に、俺は思わずスプーンを落としそうになった。とうとうイベント発生か?モンスターのスタンビートとか?

「それは、魔物の仕業でしょうか?」

母上が心配そうに尋ねる。

「わからないが、通常の魔物とは異なるようだ。何らかの呪いか、あるいは、未知の存在が関わっているのかもしれない」

父上はそう言って、遠くの森の方向を見つめた。

俺は、この世界の奥深さと、まだ見ぬ脅威の存在を改めて感じた。大魔導士への道は、単に魔法を極めるだけでなく、この世界の真実を解き明かすことにも繋がっているのかもしれない。


夜、俺は自室で、父上の書斎から持ち出した地理に関する書物を広げていた。東の森の記述を改めて確認する。そこには、古くから「呪われた森」として知られ、近づく者はいないと記されていた。しかし、最近になって異変が起きているということは、何らかの変化があったのだろう。


「呪われた森…異変…」


俺の頭の中で、妄想がめぐる。もし、賢者の石が森の奥深くに隠されており、それが何らかの形で暴走しているとしたら?あるいは、賢者の石を狙う者が、森に異変を起こしているとしたら?


俺の胸には、新たな探求心が芽生えていた。この世界の謎を解き明かし、賢者の石の真実を突き止める。それは、大魔導士への道と並行して、俺がこの異世界で成し遂げるべき新たな目標となった。


俺は、ベッドに横になり、天井を見上げた。前世では、ただ漫然と日々を過ごしていた俺が、この異世界では、明確な目標を持ち、日々成長している。それは、決して楽な道ではないが、充実感に満ちていた。


「この世界で、俺はどこまで行けるだろうか…」


俺は静かに目を閉じた。明日からも、新たな知識と魔法の探求が始まる。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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