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魔法、使えました

しばらくは毎日更新します!

あ、ありのまま、今起こっていることを話すぜ。


おれは、中村大介 33歳、童貞だ。いや、だった。小路を歩いていてちょっと転んだと思ったら、いつのまにか2歳児になっていた。


な、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからねー。


右手を顎の前にもっていって、ゴゴゴゴ、とポーズをとってみる。そう、お約束である。


部屋の奥から、まだ20代前半くらいの、黒髪の若い綺麗な女性が現れた。身に纏うゴージャスな服は、彼女がこの家の主人であることを示している。優しげな笑顔を浮かべ、俺に近づいてくる。


「あらあら、デイヴィッド。かわいいわねー、どうしたの」


エレノアが頭をなでなで、よしよしとあやしてくれる。


お母さま、ここはカッコいい、そこにしびれる、とかいってほしいです。


ここにきて、わかったことが3つある。


1つ、この世界でも感じ方は変わらない。つまりは五感、嗅覚、視覚、触覚、聴覚、味覚は現実世界と変わらない。第六感覚は存在せず。少なくとも今の俺にはね。


2つ、ここはガチなナーロッパ・ファンタジー。父上は剣士で、母上は魔法。夢いっぱいの魔法と剣とモンスターの跋扈する世界だ。


3つ、たとえここが夢だとしても、覚める気配は全くない。なにしろすでに1か月ほど経っている。


もはや夢とは考えないほうがいいかもしれない。夢と現実の証明など、数多の哲学者を持ってして、解決できない難問である。それなら、ここは現実で、ネット小説で有名ないわゆる異世界に来てしまったと考えるようにしよう。そのほうが面白いし。現実は小説より奇なりっていうしね。前世はなんともあっけなく終わってしまった。もはや戻れないのだろうか?結構ブラックな界隈だったけど、特に不幸が多かったわけではない。両親にも別段不満はなかった。父さん母さん、今まで育ててくれてありがとう。俺は新しい世界で2歳児としてこれからの人生を歩みます。


と、そんなことを母上にあやされながら考えていると、なんだか猛烈に眠くなってそのまま寝てしまった。


ここは異世界。魑魅魍魎の跋扈する、命の軽い世界だ。


2歳児がサバイバルしていくために、まずは知識が必要だ。


言葉はだいぶなれてきた。いつのまにかこっちの言葉で考えるようになっている。言語は習うより慣れろとは真理をついている。言語とは、無意識的な文化、宗教、行動特性をも含んだ概念なのだ。一方、日本のことをちょっとずつ忘れてきているようで怖い。たまに強いて日本語で考えるようにしている。


そして、びっくりだが、おれの家(屋敷?)は城壁の外にある。大丈夫か?と思ったが、城壁に囲まれているのは旧市街だけで、新市街には壁はないらしい。父上は新市街の東側の警備を担当している。家も東の端っこらへんにある。何かあったら真っ先に対応できるようにと。なるほど、我が家は新市街の肉壁といったところか。うちは貴族といっても、下位、というより底辺に近い方らしい。


メイドはリリアさん一人だけだし。お父様、若い子、いいと思いますよ。どうか若い子を追加で雇えるように、お仕事がんばってください。まあ、リリアさんもいい人だし不満はないですが。



話は変わるが、最近街の近くでゴブリンが目撃されたらしい。


警備隊員である父上も討伐にむかうことになった。


「では、いってくる」


「あなた、お体に気を付けてね」


「パパ、バイバイ」と、俺も一応発言しておく。


「うむ、日が暮れるまでには戻るよ。デイヴィッドもお利口さんにしてるんだぞ。」


玄関先でメイドのリリアに抱かれながら、父上を見送る。出稼ぎ頑張ってください。


ゴブリンってどのくらい強いんだろう。街の娘を襲ったりするんだろうか。けしからん。


この街の名前はドバルコ。街の名前と、中心にあるお城の名前は一緒らしい。城下町ってわけだ。このあたりでは数世代の間大きな争い事はなく平和が続き、モンスターの被害もほとんどないそうだ。徐々に人が増えてしだいに城壁の内側だけじゃ足りなくなって、新市街ができあがったとのこと。ファンタジーといってもモンスターはそんなにうじゃうじゃいるわけではない。たまにゴブリンが近くにでるくらいで、それもすぐに討伐されるそうだ。


母上は実は火魔法の使い手だ。


このあいだ母がお風呂の窯に魔法で火をつけたのをみたから間違いない。


なんか呪文をとなえて、「いでよ、ファイヤー」といって両手を広げていたら自然と炭に火が付いた。


かっこいい!初めてみた魔法だ。


でも貴族なのに家事してるのね。あ、うちが底辺だからか。


魔法の才能が遺伝するかはわからないが、俺も使える気がしている。


何しろ、前の世界では30歳童貞という厳しい修行(条件)をクリアしたのだ。


使い方は不明だが、物は試しに唱えてみる。


「ファイヤー!」


、、、、、。反応がない。


もう一度、


「アイスストーム!!」


、、、、、。何も起きない。


「ダイアキュート!!!」


、、、。ダメ。うん。わかってたよ。


やはり、魔法を用いるには特殊な呪文か、イベントクリアがいるのだろう。


そんな事を考えながら、ゆらゆらとゆれる、ゆりかごの上で寝ていたら、


遠くのほうから、


どーーん、


っと大きな音がして飛び起きた。


え?まさか時間差で俺の魔法が発動した??


「おおきな魔法だったわねえ。あの人怪我してないといいけれど。」


母上が心配そうに音のする方をみている。


ああ、ゴブリン討伐隊の魔法なのね。はるか遠くに爆炎がみえる。すごい威力だ。かっこいい。


「エレノア様、御館様はそんなヤワな方ではありませんよ。」


リリアさんは洗濯物を干しながら、母上を安心させる。


「そうよね。私ももっと魔法の才能があれば一緒に行けたかしら。」


「点火の魔法が使えるだけで十分ではありませんか。それにお優しいエレノア様は争いごとにはむきませんよ。」


なるほど、お風呂の窯に火をつける魔法は"点火の魔法"というのね。


そして高名な魔法使いだと大砲並みの威力があるわけか。


面白そうだ。俺も大魔導士になれるだろうか。子供の頃、はやりのゲームで魔法使いばかり育てていた記憶がよみがえる。


まずは母上に魔法を教えてもらおう。


今後しばらく母上に密着取材をすることに決めた。



しばらくして、、、


"甘えん坊将軍"の称号を得た!


魔法の情報を集めるべく、ことあるごとに母上の近くにすり寄って、母上が見えなくなったらママ召喚魔法を叫んでを続けていたら、父上から二つ名を授かった。


、、、いや、お恥ずかしい。


父上、2歳児ですからこれくらいは許してくださいよ。え?妻を取られて嫉妬しているんですか?それはごめんなさい。おれの大魔法使いへの尊い犠牲になってください。


多少の犠牲を払ったが、魔法についていろいろ分かった。


まず魔法には属性がある。火、水、氷、風、土の五属性、さらに高位の魔法もあるとのこと。


呪文は補助的なもので、必須ではないらしい。


母曰く、魔法のこつは、燃えろ~って念じて、声を出せばいいんだと。なんとも感覚的な。母の魔法は火属性で、火おこしが楽になるレベルの使い手だ。つまりそれほど強くない。といってもほとんどの魔法使いがそんなものだそうだ。


ともあれまずは実験だ。


お外で適当に草むしり。火のついていないかまどの中に雑草入れて準備完了。


早速魔法を念じてみる。


もえろー、もえろー、ふぁいやー。


、、、なにもおきない。


かまどの草を触ってみる。ほのかに温かい。あれ、もしかして魔法つかえてる?


もう一度だ。


あつくなれ、あつくなれ、もっと、もっと、あつくなれよ!


あつい人の言葉を思い出しながら、草の先端に意識を集中してみる。


ぱちっ


と、わずかに煙がでた。


やった。成功?しょぼいけどこれは成功でしょ!!


これは、いける!このままいけば大魔導士になれるかも!


と思ったと同時にひどい倦怠感に襲われる。


あ、やばいここお外なのに。。


ばたっ。


とそのまま寝てしまった。


気付いたらベッドで寝かされていた。


「デイヴィッド、お外でねてしまうとはなにごとだ。危ないから今度から外に出るときはリリアにいいなさい。」


父上からありがたいお言葉。おっしゃる通りです。


火をつけてすぐに倒れるとか自殺行為だ。幸い草は少量だったしすぐに燃え尽きたみたい。よかった。どうやら魔法が使えることはバレていないみたい。


2歳児が火をつかえるとか危なすぎるからだまっておこう。


それにしてもあの倦怠感はひどかった。おそらくMP的なものが使われたんだろう。まだだるい感じは残っている。魔法は使えた。でも、これは一体どんな原理なんだ…次はじっくり検証してみるか。。。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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